Luna's “Comedies In Dystopia”

過剰な競争が人間を孤立させてゆく…。追い詰められた人たちが互いに対してとどめを刺そうとする。もはや社会は体をなさない。

原発維持基準/県民が納得できる議論期待

2008年05月17日 |  Monologues
(5月16日付)




 原子力発電所の設備に損傷があっても健全性が評価されれば継続使用できる原発維持基準について、議論を凍結していた県議会は原発立地町の要望を受けて、議論を再開する方針を固めた。

 国内の原発立地県で維持基準導入の判断をしていないのは本県だけだが、これまでは佐藤栄佐久前知事の意向もあって、議論すらできる状況ではなかった。再開に当たっては、冷静な議論を積み重ね、県民が納得できる導入の是非を示してほしい。

 連続運転している原発は、必ずある程度は劣化する。その劣化が将来的に、原発の安全性に影響を与えるかどうか、設備の健全性を評価することが健全性評価で、その評価に使う判定基準が維持基準だ。

 具体的には亀裂やひび割れなどの劣化が見つかった場合に、その亀裂やひび割れが一定期間後に、どの程度大きくなるかを予測する。その予測された大きさによって、強度が安全水準を上回る場合は、引き続きその機器を使用してもよく、安全水準を下回る場合は、修理や取り換えが必要になる、ということだ。

 これまで、日本では原子炉の安全基準としては新品を対象にした設計・製造基準しかなく、運転中の原発にもこの設計・製造基準を適用してきた。

 原発はもともと劣化を見込み設計されたものだが、これまでの基準ではひび割れや亀裂のような劣化は判定できず、いつでも新品の状態を保ち運転しなければならない矛盾を抱えている。このため、ひび割れや亀裂が発見されるたびに原子炉は停止し部品を交換し、稼働率は大きく下落している。

 維持基準導入の議論は東電のトラブル隠し発覚後の2002年10月、県議会が「維持基準の具体化は見合わせること」と、議論の凍結を盛り込んだ意見書を国に提出して以来、一切なされていない。

 原発立地町のシナリオはこうだ。本県には10基の原発があり、維持基準が導入されれば想定外の停止は減り、常時2基が定期検査のサイクルが確立する。そうなれば雇用の機会が安定し、地元民が仕事にあぶれる機会はなくなる。結果的にはプルサーマル導入、福島第一原発増設の機運も盛り上がる-。

 県議会は19日に各派代表者会議を開き、地元要請への対応を協議するが、議論凍結の意見書提出から6年が経過し、国の検査態勢や東電の安全確保・信頼回復への取り組みなど当時と状況が変わったことから、県議会は議論を再開する方向だ。県もこの議論を容認する考えだ。

 地球温暖化、原油高騰で、原発の存在意義も以前より増してきた。維持基準の導入も含め、封印されてきた原発をめぐるさまざまな課題について議論を再開することは歓迎だ。
 


福島民友新聞 

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