安室奈美恵氏が、1年後に引退するという。彼女が結婚する前あたりまでは、いつも笑っていて明るく、好きな歌手だった。曲もよく聞いていた。しかし、離婚し、彼女の母親の事件があって以来、彼女はテレビに出てもほとんど笑わないようにしていた。つまらなそうにインタビューに答えたり歌ったりし、反抗心をも感じさせるふてくされた姿勢に、こちらも嫌気がさすようになった。彼女がテレビに出てくると、チャンネルを変えるようになっていた。面倒なことや嫌なこともあるだろうが、テレビに出る芸能人とは、それを見ている人を,たのしい気持ち、いい気持にさせるのが仕事である。たいへんだからやらない、というのではプロではない。
二十年近くたった今でも、その表情は投げやりの暗いままだ。コンサートをやっても歌のみで、彼女による話はほとんどなかったという。コンサートで、彼女の話も少しは聞きたいなあと本心から思わない人は、たとえファンであろうとゼロであろう。サービス精神やファンへの感謝の気持ちも無くなっていた。私的な事情、スタンスや考え方などは、我々に関係がないことだ。彼女の口癖である「自分らしく」(いやなことはしない、面倒なことはいやというスタンス)は、すべてが許されるかっこいい理由とはならない。彼女流の「自分らしく」と、視聴者や元ファンとの間で彼女は行き詰り、悩んでいたのだろう。今回の引退表明は、彼女自身にとっても、多くのファンだった人達にとっても、賢明な判断であったと思う。
しかし、引退を1年後にするというのは、とても残念である。「引退」を餌に、今後1年間、コンサートでお客さんをたくさん集めたりCDをたくさん売ったりして、稼げるだけ金を稼いでからやめるという商法には、個人的には醜さが感じられる。これをしておいて、5、6年後に「復帰」ということだけは、ないことを祈る。