和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

大和の伝統野菜 その一 大和真菜

2010年04月12日 | 野菜大全
 奈良検定にも度々登場した「大和の伝統野菜」。これは戦前から奈良県内で栽培が確認されている品目で、地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法により「味、香り、形態、来歴」などに特徴を持つもの(奈良県公式ホームページより)だそうで、現在17種類が認定されています。
 それに加えて「大和のこだわり野菜」という新ブランド野菜が4種類の計21種類を「大和野菜」として売り出そうとアピールしています。 流石にもう出題は無いのかも知れませんが、ここでは「大和の伝統野菜」を幾つか紹介できればと思います。

 大和真菜は大和の名を冠すように伝統野菜の筆頭に挙げても恥ずかしくないものです。こういう菜っ葉類は「漬け菜類」と普通言いますが、数ある漬け菜類の中でもかなり美味しい部類に入ると思います。葉物野菜は大体そうですが、これも霜にあたると一層甘みが増して美味しくなります。油揚げで煮浸しや豚肉と炒めたりというのが定番料理でしょう。そんな大和真菜がどこまでこの名で歴史を遡れるのかは分かりませんが、江戸時代には栽培されていた事は確認できます。

  

 栽培してみて感じる事はその作り辛さでしょうか。種を蒔けば適当に発芽して成長するのでそういう難しさは皆無ですが、生育が揃わない、葉の黄化が激しい、霜に当たりすぎるととろける。などなど一般に言われているそのままの問題点が商品作物としてはある訳です。

 ところで、在来の大和真菜には丸葉(広葉)系と剣葉(大根葉)系の二系統があり、丸葉系のほうが大和真菜の欠点が如実に表れてしまいます。だからなのか現在の主流は大根葉のほうになっています。剣葉(大根葉)のほうが葉色の退色が遅く、霜枯れに強いのは間違いありませんからこうして品種は選抜されていく訳でしょうか。
 この様な欠点を補うために大和真菜のF1種を開発したというニュースがありました。公式ホームページにもありますが、これは何なのでしょうか?看板に掲げた伝統野菜云々の理念と相反することになりやしませんか?作り易くなるのは良いことなのですが、F1種になれば自家採取は基本的に出来なくなります。自家採取を実際するかしないかと問われればやらないのですが、出来ないのとやらないの違いは一応有る訳です。

 在来の固定種がこのF1種の大和真菜の登場で直ぐに消えてなくなる訳ではありませんが、F1種がもたらした歴史的経緯をこともあろうか伝統野菜の大和真菜でなぞるという、自己矛盾を孕んでいる事態になってしまいます。作り易く揃いの良いF1種の登場で既存の在来種が駆逐されたというのが現状な訳で、それに一石を投じるように在来野菜の復権を掲げ、各地の伝統野菜を見直す動きの一つに大和の伝統野菜の認定もあるのです。その大和の伝統野菜をF1種化してしまうとはどういうことでしょう、本末転倒とはこのことかと思うのですが、どう思われますか?まあ、種に罪はなく一度種を入手して栽培してみるつもりではあります。

  

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