Raison d' etre ici

(人の)生きる理由,生きがい;(物の)存在理由.

斬新な愛のメッセージ

2005年10月21日 | 
ラブレターを省みている
感慨にしか思えない気持ちで
君の字に 単語に 言葉に
ラインを引く

蛍光ブルーのマーカーで

手紙が感慨になるには
どれだけの時間が必要なんだろう
何度か目で追った文面から
言葉以外のものが浮かんでくるまで
何を積み重ねて
何を下に押しやったのだろう

引っ張らないと取り出せないくらい

ラインマーカーのブルーが
言葉以外のものを引っ張り出して
それはもう僕にはなくて
輪郭だけをなぞることができる
中身はどこかへするりと抜けて

僕はそれを確かめるために
ラインマーカーで線を引く
輪郭だけで確かめるように

20才のピノキオ

2005年10月17日 | 
20才のピノキオの鼻が伸びる
タバコを吸う時に面倒だ
来年の免許の更新は問題があるかもしれない

1人暮らしを始めた1ルームは
鯨の腹の中よりもずっと狭くて
小さなあの頃が懐かしい

ボタンのシャツしか着れない
今年の冬流行の黒のタートルネックは
伸びがよいものを探している
同じくらいの背の彼女とは
キスをするのにも骨が折れる
取っ組み合いのケンカは
遠慮しておこうかと思っている

今彼女とはクリスマスイブのことで平行線
キスをするのにちょうどいい彼女を作ったことを
まだなんとか隠している

嘘をつくから鼻が伸びる
実は20才じゃないから鼻が伸びる

駅を降りる

2005年10月11日 | 
地下鉄B15番出口は
あなたの部屋へと続いている
それは恋のような何かで
私にもあなたにも終わりは見えない
終わりなどありはしないといい
道の途中で私は
手にしようとしているのか
失おうとしているのかわからなくなる
混乱して時々涙ぐんでしまう

例えるならあの部屋のコーヒーカップ
硬い枕 冷蔵庫のマグネット
細長く切り取られた小さなタワー
執着はモノ相手でなければ
よいのか ならないのか
あなたの視線 誠実 優しさ
私を居心地よくさせるものに
段々とらわれていって
地下鉄B15番出口を出た後の景色を
私は手にしている
と同時に歩いていけば通り過ぎていくのだ

恋は私の中の様々なものを駆り立てて
ただそこにある
幸せも不幸せも
もろもろ取り混ぜて
あなたと一緒の時間
あなたと過ごさない時間
今までとこれからと現実についての
私の打算

私はあなたの部屋に向かう
勇気が必要だ
手にしながら
一方で失いながら

Say hello to Margoe(Ⅱ)

2005年10月03日 | 
さよならマルゴー
独りで飛び降りて
その柵の向こうに僕の興味はない
遠ざかっても目立つように
赤いドレスを着ていてね

水平台を渡るみたいに
いつか柵の上を歩いたね
あの時吹き上げた風は
君をさらっていったのさ

いとしのマルゴー
滑稽な君にはいつも苦笑いだ
実際の距離よりも遠くで
いつも君と向かい合っている
離れて離れて見えなくなればいい
なんて ねえ

君が人一倍臆病だって
知っているよ 僕だけは
かわいいマルゴー
紅いルージュをつけていて
声が届かなくなっても
唇が読めるように

君は口にしなかったけれど
君の気持ちは知っていたんだ
必要なかっただけさ
僕はこんなだからさ
子守唄は
お気に入りを吹いてあげよう

空を仰げば消えていくほどのものを
感傷とは呼べないのさ