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日曜討論「成長戦略・予算編成 菅政権は何を目指すのか」一部テキスト化 Part.2

2010-07-31 17:29:58 | 政治

http://www.nhk.or.jp/touron/

25日放送、NHK「日曜討論」をテキスト化しました。

出演:内閣府副大臣・大塚耕平、政府税制調査会専門家委員会委員長・神野直彦、経済評論家・内橋克人、慶應義塾大学教授・土居丈朗、ニッセイ基礎研究所主任研究員・伊藤さゆり


・「強い経済・強い財政・強い社会保障」

(神野)

この言葉は私が生みの親で、私に全部責任があります。15年くらい前からこの主張をしておりまして、財政再建と経済成長の二兎を追わないと虻蜂とらずになるという主張を繰り返しております。

ポイントは、産業構造を変えるということなんですね。強い社会保障というのは、単にお金を配って生活を保障するということだけでなく、サービス給付、育児サービスや介護、養老サービスや医療サービスとセットでやる。

それからもう一つ重要な点は、活動保障です。新しい産業構造に向かう為の再訓練、再教育、あるいはリカーレント。やり直しが利く教育制度が必要です。こういう社会保障を形成していく為には、財政が強くならなければならない。借り入れに依存しなくても公共サービスが提供できる状況を作っておく必要があります。

強い社会保障と強い財政が出来ますと、人々が安心して新しい仕事作りや産業構造に冒険し始めるので、経済構造が大きく変わって、更に強い経済が出来るという発想です。

(内橋)

その3つがきちんと整合性を持って強くなっていけばよろしいんですけど、それは現実問題として難しいところがあるだろうと思います。私たちは失われた10年の3度目を経験しようとしている、その戸間口に立っているという認識が大事ではないでしょうか。

ポイントは大手企業の雇用力、賃金を払う力が徹底的に衰弱している。国内の工場は研究センターにするというような状況になりつつある。そういう状況の中ではどうしても家計が強くならない。そこをどうするかということですね。

(大塚)

失われた10年の3度目のプロセスに入っていかない為には、近代化、戦後経済復興に変わる新しいコンセプトを打ち出す事が必要で、今の時点でこれだ!と申し上げられないんですが、まず産業構造の転換と、雇用力を吸収する産業を育てるということを戦略的に着実にやることが大事だと思っております。

(司会)

民主党政権の経済政策に関するメッセージ発信が少し弱いんじゃないかという気がしてしょうがないんですけど。

(大塚)

成長戦略という形で全体像をお示ししたので、今後は製造業を中心に適正なサイズにしていき、適正化した企業には国際競争力を維持する為に法人税などの様々な枠組みをご提供して、そこからスピルオーバーした勤労者を吸収できる産業を育てる。その為に先ほど医療の例でお示ししましたが、規制改革をやっていきます。これは予算を使わずに出来る成長戦略です。ほぼ全体的な見取り図は出来ておりますので、あとはどれだけスピーディーに実行できるかにかかっていると思います。

・どうする消費税

(神野)

政府税制調査会専門委員会の目的は、抜本的な税制改革案を2年間に渡って作ることです。シャウプ勧告以来の抜本的な税制改革案を作ってくれと言われております。第2次世界大戦直後に成立したものをほとんど変えていないんですよね。今までは10年ごとに変えておりました。

そういう大きな事業をやる際に、私たちはどういう税金を税制の中心に置くのかと考えた場合に、どうしても今の状況を鑑みると、所得税と付加価値税、つまり消費税を軸にした税制を作らざるを得ないだろうと思っておりまして、今までの作業の中間報告を提出しております。従って、既存の制度のもとで増税をするかしないかということよりも、この不況下において税制を抜本的に見直したうえで、消費税をどう位置付けるかということが重要だと思っております。

消費税に関して、民主党政権は2つの方向性を検討しておりまして、1つは複数税率という考え方ですが、これはどうしてもインヴォイスという考え方が前提にならざるを得ません。もう一つは、カナダでやっている還付つき税額控除。どちらかというと、還付つき税額控除のほうに力点を置いているようなんですが、これをやろうとすると番号制度を作って、所得を確実に把握するということが必要になりますから、その為の議論は着実にやっていかなければいけません。

(内橋)

国民の所得というのが絶えず絶えず移転されているわけです。例えば、90年代始まってから極めて低い低金利政策を続けてきました。ある計算によると、90年初頭から大体15年の間に280兆円が所得から奪われて企業サイド、あるいはその先、企業から企業へ国民所得が移転されていくという状況があります。

それから、消費税というのは物を買う際に消費者が払うものではなくて、自営業者が払っております。これは大変大きな負担です。そして、消費税は正社員に払わなければなりせんが、派遣は仕入税額控除の対象になるのでで、派遣が更に増えるんじゃないかと深く心配しております。

(神野)

私どもの専門家委員会の案では、所得再分配の強化をまず言っていて、所得税の抜け穴を防いで実質的に所得の多い人にも負担を御願いする。同時に水平的再分配、同じ所得なんだけれども病に陥ったり、子どもが生まれたり、お年寄りを抱えているような人については、公共サービスとしてお互いに提供しあいましょうということで、その為に消費税が重要じゃないかということを提案していますので

(内橋)

法人税減税とセットになってますよね

(神野)

私どもの案では、法人税を下げる事が国際競争力に繋がるかどうかは議論が分かれているとしていますが、民主党は大綱に法人税減税を入れていますので、やるとしたらベースを広げて調整するようにと書いております。

(司会)

大塚さん、国民の消費税に対する不安に対してどういうメッセージを出していくのでしょう?

(大塚)

先が見えないという姿を無くすこと、それから納税者番号制度というのが大きいですね。所得の補足をきっちりしておくとそれだけで税収は増えます。なのでインフラについて早く議論をして作るということが、国民の不安にお答えすることになると思います。