前回の集団体操の記事には載せていなかった、実際の効果がどうであったか、ということを書いてみます。
今の病院ではまだ集団体操が定着していないので、以前別の場所で見学させてもらった大先生の集団体操についてです。
集団体操の進め方
人数は6~8人程度で行います。リーダーに作業療法士、サブリーダーに別の作業療法士、もしくは介護士などのスタッフが入ります。 最初は、行くのがめんどくさい人、楽しそうにする人など、みなさんいろいろです。拒否する人に関しては、とりあえず見学だけ、とか、最後のお茶とおやつだけみんなで食べる、とかしていただきます。
できるだけ毎日、もしくは何曜日と何曜日、と曜日と時間をきっちり決めて、メンバーも固定で行います。
最初はボールを取るのも、投げるのもうまくいかなかった人たちも、回を重ねるごとにだんだんと上手になってきます。○○さん、いくよ、とみんなが声を掛け合うことで、他の人への意識、自分と相手の距離感などが分かってきます。
この人はこれが得意、あ、今表情が変わった、そろそろ飽きてきたかな…など、みなさんの反応をよく見て、その時に応じた対応をしていきます。
何回も何回も、同じような体操を続けることで、みなさん集団体操の内容にも、他のメンバーにも慣れてきます。顔見知りが増えて、世間話をするようになって。
体操が終わったら、みんなでお茶タイム。自分で動ける人は、みんなの湯のみを用意して、他の人がお茶を淹れて…。机に椅子を用意する人、飲んだ湯飲みを洗う人。動きにくい人の分をしてあげる。自分のできることは自分でする。
世話焼きの人、茶々を入れる人などなど、最初は遠慮してお客さんのようにそこにいるだけだった人たちが、それぞれの個性がでてきて役割ができてきます。
自分らしく生きるということ
こんなふうにして、身体機能面だけではなくて、精神機能面、社会的交流技能もだんだんとアップしていきます。人間、ひとりきりでは生きていけないこともないかもしれないけれど、誰かと接することで自分を表現することができると思うんです。自分が自分であることを確認できる。
最後には、リーダーの作業療法士が進めていかなくても、メンバーが集団体操を引っ張っていってくれます。お茶会を含めて、集団体操で小さなひとつの社会ができるわけです。
これが、作業療法の醍醐味だと思います。自分ひとりではない。誰かと関わりあいながら生きていくということ。その人らしく、生きていくということ。
人にはそれぞれ、今まで生きてきた生き様があります。高齢になった、体が悪くなった、知的にダウンしてきた。家族と相容れないから病院や施設を、悪く言えばたらいまわし。そんな人も現実におられます。では家族とともに家で暮らし、デイサービスを利用して…それがその人が本当に望んでいる生き方なのか。もちろん、本人が楽しく過ごされているのであればそれはOKです。
その人にとって本当に良い人生の送り方とは…。とても難しいところで、これを実現できるために作業療法があるのだと思っています。
この集団体操も、そのきっかけの一つにすぎないわけで、小さな集団での社会交流だけではなくて、もっと大きな、地域社会との交流をするべきなのではないかと。
足が悪いから旅行はもう行かない、海外なんてとんでもない。好きな映画や演劇も観に行く気になれない…。そうではなくて、もっと好きなことをしやすい状況が作れたらと思います。
それには日本のシステムから、というところに上がってきてしまうのですがね。本場カナダの作業療法を日本でどう応用するか、頭を悩ませる毎日です。
うちのじいちゃんはこんなんだ、家族はここが大変なんだよ、ということがあればひよっこの私に是非ともご意見ください。そんなに甘いものじゃないんだっていうことを。お願い致します。
26日まではよかったんですけどね…。プロフィールが男から女に代わったんがマズかったんでしょうか。自己紹介の内容も変えたし。というよりは、そもそもおもしろくないのかも。
26日の新着記事、タイトルの「男から女に」で、なに、なに、と思って開いてみたら、なんやおもろな、とすぐ閉じられてそれ以来…とか!?
そもそもこのブログは主に一般の方に広く知ってもらいたいなぁと思って始めたものだったのですが、一般の方がここに辿りついているんだろうか…。
どこにどうリンクさせていただいたり、とか、一般の方に見ていただく方法がよく分からんのです。
そこでお願いです!このブログを見てくださっている方々!もっとこうしたら?とか、見てるよ~とか、言ってることがよく分からんとか、なんでもいいのでコメントください!
疑問・質問ももちろんOKです。ダメ出しも大歓迎!指以外のリハビリのことも受け付けます。専門外のことはお答えできるか分かりませんが…。一般の方の感想も聞いてみたいのです。
当方、「生活を良くする」のが本当のお仕事の作業療法です。
どうぞよろしくお願いいたします。
まずは二つリンクさせていただきました。
とうとういか飛行機がサイボーグになってしまいました。天使だったときもあったのに…。
バネの力に負けないように、ストラップをつけてガッチリと固定するようにしたようです。指の先が曲がってしまわないように、指先支えのおまけもつきました。
これで固定力もバッチリ!「きつくないし、よく引っ張ってる」って。いかの頭も浮いていません。(「いか飛行機」の写真と見比べてみてください)
今回でようやく完成です!でも 「これ外ではつけられへんわ。恥ずかしいし」 だって…。ごーん。
そんなわけで、こんなふうに試行錯誤しながらスプリントを作っています。その人の指に合わせながら作っていくので、最初に考えていたものからどんどん形が変わっていく場合もあります。もう、普通のいかには戻れない。
今回のは大先生が作った数々のスプリントの中でも最高潮に難しいものでしたね。
また変なもの作ったらお知らせしますね!
みんなで輪になってビーチボール投げや風船バレーで集団体操、と聞くと、どうもただのレクリエーションのようにイメージする方が多いのではないでしょうか。
実は、集団体操にはみんなで楽しむ、以外の効果があるのです!
みんなで!のパワー
個人一人のリハビリももちろん必要ですが、集団での力はとっても大きい!阪神タイガースの応援も(すみません関西なもので…)、テレビの前で一人で応援するのもいいけれど、甲子園球場でみんなで応援する方がよりパワーがみなぎりますよね。ストライキにしても、一人でわーわー言うよりもみんなでガーッと突っ込んだ方がより力が結集される、ということです。
個々にするよりも、集団の力の方が大きい。その力によって一人一人の参加者はエネルギーを得ることができるんです。
もちろん一人の方が好きな人もいるけれど、一人でピクニックに行くよりもみんなで行く方が楽しい。そういう楽しさ倍増効果もあります。
人は病院や施設に入ったとき、まず孤独を感じます。家族と離れて、もしくは一人暮らしの人でも、住み慣れた家から離れて知らない場所に一人きり。
病気やケガをしているし、とっても心細い。だけど、集団の中に入ることで自分は一人ではないと知ることができるんです。
集団体操以外にも、「おっちゃんと調理訓練」の記事の感想にあったように、切断なんてひどいケガをしたのは自分だけではない、みんながんばっているんだ、と知ることで前向きな気持ちになることができます。
これが集団での訓練の良さです。一応、作業療法士なので、いろんな理論に基づいてプログラムを考えているんですよ。
というのは冗談ですが(つまらん)、このブログは二人でやっておりまして、と言ってもほとんど私が書いているのですが、私がもう一人の人のフリをして書いていたんです。
でもそれもめんどくさいので、もうやめました。
基本的には私もこの人の考え方に基づいていますので、今後もたいした変化はありません。この大先生の意見も聞いて書いたりもしますしね。
大先生は性転換手術には興味があるようです。
かなりどうでもいい記事でしたね。。
最近リハビリを始めた御年92歳のYさん。以前は警察の人事をされていたそうで、頭はしっかりしているし、車椅子から椅子に移るときもシャキッと立ち上がります。でも病室では寝てばかり。歩きたい、とは思っているようです。
もう92歳だし、リハビリなにから始めようか、と考えたとき、私たちは作業療法士ですから、歩く訓練は理学療法士さんにまかせよう。こちらではビーチボール投げなどの簡単な集団体操を通してまず日中起きていること、基礎体力をつけることから始めようということになりました。
何日か続いた後、だんだん「行きたくない。お願いだから寝かせてくれ」と拒否するようになってきました。
ここ数日、毎日のように断られてしまいます。そこで何かあるのか、おうちのこととか、よかったら僕に教えて欲しい、僕はYさんが体力をつけて、家で生活できるようになってもらいたい、と尋ねてみました。
Yさんはぽつりぽつりと話し出しました。
自分には4歳年下の妻がいて、息子家族と私たちとで住んでいた。妻は癌を患っている。本当は妻の傍にいたいし、自分の家で死にたい。でも自分も体が悪く、妻の病気で大変な状況だから帰るに帰れない。何もしないでくれ。死にたいんだ。
Yさんのお話を聞いて、なんとも言えない気持ちになりました。
本当のYさんの希望は、「自宅で生活する」です。でもYさんの退院後の予定は「特別養護老人ホームへの入居」と書いてありました。
頭はしっかりしているけど体が少し悪いこと、家族の中での環境が要因で、自宅での生活は困難です。こういう現状が、あります。
みなさんはどう思われますか?このような現状があることは問題ないのか、問題なのか。仕方がないのか。
みなさんの意見をお聞かせください。医療関係以外の方のコメントも、じゃんじゃん!お待ちしております。
指の人、脳卒中の人、足を骨折した人。いろんな患者さんがごちゃまぜに3グループを作って、月に1,2回12人程度(多すぎですが)で調理訓練をしています。
今は指の患者さんがほとんどで、今週はおっちゃん達のリクエストでお好み焼きでした。
「おっちゃんが調理訓練?」そう思う人もいるかもしれませんね。そう、おっちゃんにも調理訓練は必要なのです!
何故おっちゃんに調理訓練が必要なのか?
調理訓練、というと、主婦や女性がするイメージがあるかもしれません。でも、これは料理を作る練習、という目的ではないんです。
指のケガに伴う危険性
指の完全・不全切断では神経の損傷を伴うことが多々あります。神経を損傷する、ということは、ケガした指で何かに触れても分からない、ということです。
回復過程で神経が徐々に伸びてきたとしても、なんなのか分かる、とまで回復するには半年以上かかります。
しかも神経には触れたものが分かる触覚、圧迫感が分かる圧覚、痛みが分かる痛覚、温度が分かる温度覚…と何種類もあるんです。
ですので、たとえ「触ってるのが分かるようになった!」と喜んでいても、意外と熱いことが分からずにコーヒー淹れててヤケド、ラーメン食べててヤケド、もあるんです。
自分では気付きにくいヤケドの危険性を知る、という意味でも調理は重要です。どんな場面で危ないのか、一人では分からないこともありますから。
手の使い方、道具の使い方を学ぶ
骨折後の固定中の方以外にも、再接着できず、指がなくなったり短くなった方。動きにくい手でも、いかにしてその手で生活するか?気持ちを切り替えて前へ進んでいかないといけません。
調理訓練では、そうした手でどうやっていろいろな動作をするかの予行練習ができます。
①野菜を洗う
②野菜や肉を切る
③フライパンで焼く、鍋で煮る
④お皿を出す
⑤料理を盛り付ける
⑥お箸やスプーンを使って、反対の手でお茶碗を持つ
⑦醤油さしを取ってかける
⑧洗い物をする
⑨布巾で拭く
⑩食器棚に片付ける
料理だけでもこれだけの工程があります。
その中で、まだ水に浸けてはいけないときの水の扱い方、包丁などを通しての道具の使い方、野菜を押さえるなどの手の使い方、平らなお皿や厚みのあるコップなど、様々な形の食器、割れ物の扱い方などを練習するんです。
ね?おっちゃんでも調理訓練は必要でしょう?いろんな練習ができて、しかもみんなとおいしく食べられる。他の人たちはどうやって手を使っているのかな、と参考にもなります。指をイチ、ニ、サンと曲げるだけでは身につかない複合的な指の訓練ができるんですよ。
調理訓練場面です。上の写真の方は左前腕切断です。切断した腕で、フライ返しを使って豚肉を押さえています。
下の写真の方は右人差し指切断、中指切断、薬指不全切断 再接着術後です。指の先に骨折部を固定するスプリントをつけて、コテでお好み焼きをひっくり返しています。
調理訓練後の患者さんの感想
・この指でもできるんだな、と思った(20代 女性)
・同じようなケガの人に包丁の使い方を教えてもらって、退院してから近所の母にごはんを作ってきてもらっていたけど、また自分で炊事するようになった(30代 男性)
・今まで怖くて手を使っていなかったけど、やってみたら意外と使えてびっくり
・他の人ががんばっているのを見て、私もがんばろう、と前向きになれた(20代 女性)
・この前のハヤシライスで勉強したからな、最近家で料理するようになってん。カレーわしが作る言うてな、お母ちゃんにうまい!って褒められたわ。前は怖かったけど、包丁の使い方うまくなったやろ?(50代 男性)
・これはもう、みんなでこうやってわいわい言いもって作って、食べるからまた一段とおいしいんやと思うよ?(60代 男性)
なかなかの好評ぶりです。本当はメニューを考えて、買い物しに行くところも患者さんにしていただきたいんですけどね。野菜をかごに入れたり、財布から紙幣や小銭を出したりね。そのうち少人数で細かにしていきたいとは思っています。