7月になってしまったが、とにかくお約束したので、日本フラメンコ協会主催の新人公演(6月17〜19日)で気になった出演者(バイレソロ)へのコメントをつらつらと綴ってみる。
まずお断りせねばならぬのは、今回、私は奨励賞の選考委員ではなく、また、アクースティカの新人公演応援團も終了したということがあって、ステージをかなり気楽に見ていたということ。
選考・評価という枷がないぶん、純粋に自分の楽しみのために見ようと思っていた。それが成功したかどうかはともかく、選考委員席に座っている時とはまた別の、というか、昔に戻ったような、新鮮な気持ちで見ることができた。ただ、そもそも評価しようと思って座っていたわけではないので、詳細なメモなどない。
正直、原稿にするにはかなり気が引けるのだが、とりあえず暗闇で書いた、ミミズが這ったような字の短いメモを頼りに、記憶に刻まれた出演者についてだけ、少しだけ書いておきたい。
<バイレソロ>
バイレに関しては、今回、様々な面白さを再発見した。乱暴だけど、フラメンコを志す人には、①好きなフラメンコに突き進む人、②フラメンコ的な雰囲気に包まれた舞台を目指す人、③フラメンコっぽいことに携わっていたい人、といった3つのタイプがあるような気がしていた。もちろん、複合的な人も稀にいるけれども、私自身は、年々、①のタイプに目がいくようになっていた。
ところが今年、「新人公演を楽しむ」というコンセプトで臨んだせいか、どのタイプも面白かったのが意外だった。「フラメンコが面白い」というよりも、「フラメンコをやろうという人々が面白い」みたいな。新人公演は、やはりそういう場なのだと、あらためて思ったりして。それぞれの思いを尊重したいという気になった。不思議だなあ。選考とか評価ということになると、もっと心が狭くなるんだけど(笑)。
あ、それとは別に、いただいたプログラムに「唄振り!」とのメモが多い。これは多くの方が唄振りになるとテンションが落ちたり、まったく唄と無関係に踊っているケースが多いという印象があったからだと思う。常日頃の稽古はギタリストとだけやっていることが多いからだろうとは思うけれども、唄振りの貧相さをどうにかするには、やっぱり基本的にカンテを聴くしかないのだろうと思います。ええ。それしかないですよ本当に。
そんなわけで、私の記憶とメモに残った方々について、出演順に書きます。奨励賞やラス・ミナスの選考については触れませんので、悪しからずご了承のほど。
<6月17日>
1.長嶺晴香「ソレア・ポル・ブレリア」
トップバッターの緊張を感じさせない、堂々とした踊り。体の使い方が上手いが、時々コンパスが乱れるのが惜しい。踊りがダンス的なのが気になる。あと、力配分が平板になりがち。頑張れ!
2.屋良有子「ソレア」
誰のようでもない、オリジナリティの凄さを感じる踊り。胸がすくキレの良さ。私は大好きだけど、問題は、自らパターン化してしまうこと。自分で自分を超えていく頃合いか。しかし素晴らしい逸材!
8.久保田晴菜「アレグリアス」
年々、力をつけてきていることを感じさせる。今回が一番良かった。体の使い方も素晴らしい。リズムも心地よい。あとは、あなたが感じる「フラメンコ的」なことを深めていってほしい。
9.本田恵美「アレグリアス」
フラメンコにこんな色んな面白さが!というぐらい楽しい演目。これでもかというぐらい沢山のフラメンコならではの“技巧”があって、この人のチャレンジ精神は本当に凄い。堪能しました!
13.大塚歩「アレグリアス」
全体的にとても好い雰囲気。けれども、小粒な印象を受ける。恐がり屋さん? もう少しはっちゃけると、ずっと魅力的な踊りになると思う。色んなアレグリアスを沢山聴いてみて。
16.加藤誠子「シギリージャ」
厳しさがあって、私は好きだった。でも盛り上がりが今ひとつ。惜しいけど、そういう人は沢山いるのだよ。うんと勉強して、うんと踊って。稽古も勉強も鍛錬も、絶対にあなたに応えてくれるから!
20.松本千晶「ソレア・ポル・ブレリア」
とてもキレがあって、足のメリハリがgood! 期待して見ていたが、後半、やや息切れの感。力配分がうまくいかなかったかな? 年々成長していると思います。伸びしろに期待!
21.牛田裕衣「ソレア」
力の使い方がフラメンコ。ブラソ。としかメモがない。けれども、これは私がバイレに対する時に使う、最大級の褒めメモ言葉です。どうぞ自分の感覚を信じて、精進してください。
<6月18日>
10.小西みと「グアヒーラ」
踊り手として非常にバランスが取れていて美しい。マリリン・モンローがバタ・デ・コーラにアバニコ持ってるような色気があるが、少し安っぽさを感じる。好みが分かれるところかな。私としては、ギリギリな危機感を持ってほしいのだけど。
11.古迫うらら「ソレア」
大変にフラメンカ。小柄だけどエネルギー大。でも、決めの時にそのエネルギーが逃げていくのがもったいない。大きく見せようとして全部開放してはだめ。もっと深く、もっと重く。期待してます!
12.長本真由「ソレア・ポル・ブレリア」
力強く、緩急のある踊り。この曲種としてはかなり好い線だった。けれども、惜しいかな、一杯いっぱいの感じになった。もう少し余裕がほしい。ほんと、あともう一歩!
14.黒須信江「ソレア・ポル・ブレリア」
この方は本当に実力のある踊り手だと思う。メモがぐじゃぐじゃに重なってて読めないけど(汗)、読めるとこだけでも「すばらしい」「コンパス感」「すごい」とある。もう本当にそういうことです。Ole!
19.蜂須夕子「ソレア」
今回、モイ・デ・モロンの唄で踊った人が沢山いたが、彼女はその唄に負けない踊りをした数少ないうちの一人。だが、まだ足りない。強さが。菊地的には、こんなにバイレに理想的な体型はないと思っている。もっとガスガスやって!我が儘と黒さと温かさと優しさは十分に共存できるのです。
21.漆畑志乃ぶ「アレグリアス」
メモに「バタが美しい!」と。その言葉だけで思い出すほど、バタ・デ・コーラの美しさに感動した。バタの美しさは扱いの美しさだけでなく、その所作がコンパスに入っているかどうか。いや、彼女は本当に素晴らしかった!
22.藤本ゆかり「シギリージャ」
非常に厳しさを感じる踊り。コンパス感が素敵。私、大好きなんだけど、惜しむらくは大舞台での見せ方が今ひとつ。もっと見せ方の工夫がほしい。
※そんなこと、フラメンコと何の関係が…と思われる向きもありましょうが、新人公演が大舞台で行われる以上、観客は大舞台でのものごととして見るので、やっぱりそれは舞台に立つ者として意識しなくてはならぬと思うのです。フラメンコであることと、舞台人であることは、決して一緒にはならない、個々人のなかで消化していかねばならぬ問題であろうと、菊地は思っています。かつて、アントニオ・カナーレスやサラ・バラスにも質問したことがあります。「あなたのフラメンコは自由だけど、オブラ(劇場作品)の場合は自由ではないですね?それはフラメンコと言えますか?」。答えがどうだったかは、ここには書きません。あなたが大きな舞台を目指すのであれば、ここは自ら考えるべきところだと思うから。でも、そうでなければ、もっと違うアプローチの仕方がある。あなたがいずれを選択するにせよ、それがあなた自身のうちから出た答えであれば、私はそれで良いと思います。
25.池田理恵「ソレア・ポル・ブレリア」
コンパス感のある踊り。フラメンコらしさが感じられる。しかし、こういう曲種でこういう振付だと、かなり緩急をつかないと平板になる恐れが。シェネにキレがもう少し欲しかった。
26.黒木珠美「ソレア」
成熟したフラメンコ舞踊の魅力。踊り巧者だけど、パンチがない。あなた自身を吐露するような瞬間が欲しい。ぐっと心に迫って来る瞬間が。だって、ソレアじゃないですか。怖がらないで。
30.津田可奈「ソレア」
非常にコントロールの効いた踊り。色々、申し分なし。後は個性を磨くことでしょう。自分の得意なこと、やりたいこと、訴えたいこと、突き詰めたいこと……etc. ともあれ素敵でした!
31.阿部和子「アレグリアス」
花丸をつけた。待ってました!素晴らしい「おばちゃんフラメンカ」!田舎くさい、でも味のある、好きなことを頑張ってやり続けたら、こんな風に純粋なフラメンコが踊れるという…ばんざーい!!阿部さんは私にとって日本のフラメンコの希望の星です!!
32.永田健「マルティネーテ」
おお、進化してますね!かなり作り込んでいたけど、今回のマルティネーテはあなたに合っていた感じがしました。地道で非常に好感が持てます。佳き踊り手なり。
34.斎藤克己「タンゴ・デ・マラガ」
とんでもないベテランが出てきた。こういうチャレンジ魂が見られるから協会の“新人公演”って面白い!私が克己さんの踊りを見たのは20年ぶりぐらいかな?今回はその頃よりもフラメンコ性を感じたけど、驚いたのは身体で作るラインの美しさ。最近の若い男子の踊りにはなかなかない、フラメンコのこだわり。見とれてしまう。大きな舞台での見せ方を心得た、お手本のような踊りでした。
<6月19日>
17.李成喜「ソレア」
バランスが取れていて、とても良い感じ。ただ、足音がパルマで聞えないので、聞かせたくないのかと思ってしまう。パルマが悪いんじゃない。エスコビージャの時に集音マイクのところまで来れば、普通に足音は聞えるのです。お願いします。
20.末松三和「ソレア」
大変抑制の効いた身体、その動き。よりフラメンカになって、ああ、とても良かった!成長しましたねえ。こういう、成長していく踊り手に出会うと、本当に新人公演って素晴らしいなと思うんだな。
23.西山依里「タラント」
なんとユニークな!どなたの振付だろう、ご自分だとしたら、かなりのオリジナリティがあった。いやあ、こんな面白いタラント初めてでした。コンパスも悪くなかったし、やり過ぎの感はありましたが、私は好きでしたよ。ガンガン、自分の方向を突き詰めるといいと思います。
27.大野環「シギリージャ」
もう小物は使うなと言ったのに、今年はパリージョかいっ!と心の中で突っ込んだ。ところがなんと、このパリージョが素敵すぎた。生きていた。踊りとのバランスも非常に良くて、ちょっと鳥肌が立ちました。もう小物使うなとは言いません。ごめん。
29.松彩果「タラント」
あはははは!なんと見どころ満載なんじゃ!もう、彼女はサービス精神があり過ぎる!この、やりたいことは全部やります、見せたいものは全部見せますっていう芸風(?)は、踊り手としては損な面があると思うけど、とても愛らしいので放っておきます。あと10年したら、きっと変わると思うし。
30.渡辺なおみ「アレグリアス」
身体がよく動いて、上手い踊り手の印象。だが、全体にたったひとつの色合いしか感じられない。感情が動いている感じがしないのです。アレグリアスはひとつの感情だけで踊るものと決めないで、もっとよく探ってみて。
31.柴崎沙里「ソレア」
よく鍛えられた身体で、とても抑制が効いている。なんといっても、全体の流れが良かった。これだけ自分で支えて表現できるのは、質の高い踊り手だと思う。今後が楽しみ。
34.重盛薫子「タラント」
おそらく相当、踊り込んでいるのだろう、手慣れた感じの踊りに見えた。そうなると驚きがない。舞台とはいえ、そこは生き物なのだから、ギリギリの挑戦を持ち込んで自分を追い込まないと、見ている人にライブの感動は与えられないと思います。踊り手としてはかなりの高得点なので、心の向きを変えてみて。
35.近藤綾香「タラント」
ストリート系?みたいな?オリジナルな振付のフラメンコ。ひんしゅくものだったかもしれないが、私は面白かった。「めっちゃかっこええ!」とメモにある(笑)。わくらばのような衣装も新鮮でした。おそらく若い方だと思うが、どんどん挑戦を続けてください。Ole!
まずお断りせねばならぬのは、今回、私は奨励賞の選考委員ではなく、また、アクースティカの新人公演応援團も終了したということがあって、ステージをかなり気楽に見ていたということ。
選考・評価という枷がないぶん、純粋に自分の楽しみのために見ようと思っていた。それが成功したかどうかはともかく、選考委員席に座っている時とはまた別の、というか、昔に戻ったような、新鮮な気持ちで見ることができた。ただ、そもそも評価しようと思って座っていたわけではないので、詳細なメモなどない。
正直、原稿にするにはかなり気が引けるのだが、とりあえず暗闇で書いた、ミミズが這ったような字の短いメモを頼りに、記憶に刻まれた出演者についてだけ、少しだけ書いておきたい。
<バイレソロ>
バイレに関しては、今回、様々な面白さを再発見した。乱暴だけど、フラメンコを志す人には、①好きなフラメンコに突き進む人、②フラメンコ的な雰囲気に包まれた舞台を目指す人、③フラメンコっぽいことに携わっていたい人、といった3つのタイプがあるような気がしていた。もちろん、複合的な人も稀にいるけれども、私自身は、年々、①のタイプに目がいくようになっていた。
ところが今年、「新人公演を楽しむ」というコンセプトで臨んだせいか、どのタイプも面白かったのが意外だった。「フラメンコが面白い」というよりも、「フラメンコをやろうという人々が面白い」みたいな。新人公演は、やはりそういう場なのだと、あらためて思ったりして。それぞれの思いを尊重したいという気になった。不思議だなあ。選考とか評価ということになると、もっと心が狭くなるんだけど(笑)。
あ、それとは別に、いただいたプログラムに「唄振り!」とのメモが多い。これは多くの方が唄振りになるとテンションが落ちたり、まったく唄と無関係に踊っているケースが多いという印象があったからだと思う。常日頃の稽古はギタリストとだけやっていることが多いからだろうとは思うけれども、唄振りの貧相さをどうにかするには、やっぱり基本的にカンテを聴くしかないのだろうと思います。ええ。それしかないですよ本当に。
そんなわけで、私の記憶とメモに残った方々について、出演順に書きます。奨励賞やラス・ミナスの選考については触れませんので、悪しからずご了承のほど。
<6月17日>
1.長嶺晴香「ソレア・ポル・ブレリア」
トップバッターの緊張を感じさせない、堂々とした踊り。体の使い方が上手いが、時々コンパスが乱れるのが惜しい。踊りがダンス的なのが気になる。あと、力配分が平板になりがち。頑張れ!
2.屋良有子「ソレア」
誰のようでもない、オリジナリティの凄さを感じる踊り。胸がすくキレの良さ。私は大好きだけど、問題は、自らパターン化してしまうこと。自分で自分を超えていく頃合いか。しかし素晴らしい逸材!
8.久保田晴菜「アレグリアス」
年々、力をつけてきていることを感じさせる。今回が一番良かった。体の使い方も素晴らしい。リズムも心地よい。あとは、あなたが感じる「フラメンコ的」なことを深めていってほしい。
9.本田恵美「アレグリアス」
フラメンコにこんな色んな面白さが!というぐらい楽しい演目。これでもかというぐらい沢山のフラメンコならではの“技巧”があって、この人のチャレンジ精神は本当に凄い。堪能しました!
13.大塚歩「アレグリアス」
全体的にとても好い雰囲気。けれども、小粒な印象を受ける。恐がり屋さん? もう少しはっちゃけると、ずっと魅力的な踊りになると思う。色んなアレグリアスを沢山聴いてみて。
16.加藤誠子「シギリージャ」
厳しさがあって、私は好きだった。でも盛り上がりが今ひとつ。惜しいけど、そういう人は沢山いるのだよ。うんと勉強して、うんと踊って。稽古も勉強も鍛錬も、絶対にあなたに応えてくれるから!
20.松本千晶「ソレア・ポル・ブレリア」
とてもキレがあって、足のメリハリがgood! 期待して見ていたが、後半、やや息切れの感。力配分がうまくいかなかったかな? 年々成長していると思います。伸びしろに期待!
21.牛田裕衣「ソレア」
力の使い方がフラメンコ。ブラソ。としかメモがない。けれども、これは私がバイレに対する時に使う、最大級の褒めメモ言葉です。どうぞ自分の感覚を信じて、精進してください。
<6月18日>
10.小西みと「グアヒーラ」
踊り手として非常にバランスが取れていて美しい。マリリン・モンローがバタ・デ・コーラにアバニコ持ってるような色気があるが、少し安っぽさを感じる。好みが分かれるところかな。私としては、ギリギリな危機感を持ってほしいのだけど。
11.古迫うらら「ソレア」
大変にフラメンカ。小柄だけどエネルギー大。でも、決めの時にそのエネルギーが逃げていくのがもったいない。大きく見せようとして全部開放してはだめ。もっと深く、もっと重く。期待してます!
12.長本真由「ソレア・ポル・ブレリア」
力強く、緩急のある踊り。この曲種としてはかなり好い線だった。けれども、惜しいかな、一杯いっぱいの感じになった。もう少し余裕がほしい。ほんと、あともう一歩!
14.黒須信江「ソレア・ポル・ブレリア」
この方は本当に実力のある踊り手だと思う。メモがぐじゃぐじゃに重なってて読めないけど(汗)、読めるとこだけでも「すばらしい」「コンパス感」「すごい」とある。もう本当にそういうことです。Ole!
19.蜂須夕子「ソレア」
今回、モイ・デ・モロンの唄で踊った人が沢山いたが、彼女はその唄に負けない踊りをした数少ないうちの一人。だが、まだ足りない。強さが。菊地的には、こんなにバイレに理想的な体型はないと思っている。もっとガスガスやって!我が儘と黒さと温かさと優しさは十分に共存できるのです。
21.漆畑志乃ぶ「アレグリアス」
メモに「バタが美しい!」と。その言葉だけで思い出すほど、バタ・デ・コーラの美しさに感動した。バタの美しさは扱いの美しさだけでなく、その所作がコンパスに入っているかどうか。いや、彼女は本当に素晴らしかった!
22.藤本ゆかり「シギリージャ」
非常に厳しさを感じる踊り。コンパス感が素敵。私、大好きなんだけど、惜しむらくは大舞台での見せ方が今ひとつ。もっと見せ方の工夫がほしい。
※そんなこと、フラメンコと何の関係が…と思われる向きもありましょうが、新人公演が大舞台で行われる以上、観客は大舞台でのものごととして見るので、やっぱりそれは舞台に立つ者として意識しなくてはならぬと思うのです。フラメンコであることと、舞台人であることは、決して一緒にはならない、個々人のなかで消化していかねばならぬ問題であろうと、菊地は思っています。かつて、アントニオ・カナーレスやサラ・バラスにも質問したことがあります。「あなたのフラメンコは自由だけど、オブラ(劇場作品)の場合は自由ではないですね?それはフラメンコと言えますか?」。答えがどうだったかは、ここには書きません。あなたが大きな舞台を目指すのであれば、ここは自ら考えるべきところだと思うから。でも、そうでなければ、もっと違うアプローチの仕方がある。あなたがいずれを選択するにせよ、それがあなた自身のうちから出た答えであれば、私はそれで良いと思います。
25.池田理恵「ソレア・ポル・ブレリア」
コンパス感のある踊り。フラメンコらしさが感じられる。しかし、こういう曲種でこういう振付だと、かなり緩急をつかないと平板になる恐れが。シェネにキレがもう少し欲しかった。
26.黒木珠美「ソレア」
成熟したフラメンコ舞踊の魅力。踊り巧者だけど、パンチがない。あなた自身を吐露するような瞬間が欲しい。ぐっと心に迫って来る瞬間が。だって、ソレアじゃないですか。怖がらないで。
30.津田可奈「ソレア」
非常にコントロールの効いた踊り。色々、申し分なし。後は個性を磨くことでしょう。自分の得意なこと、やりたいこと、訴えたいこと、突き詰めたいこと……etc. ともあれ素敵でした!
31.阿部和子「アレグリアス」
花丸をつけた。待ってました!素晴らしい「おばちゃんフラメンカ」!田舎くさい、でも味のある、好きなことを頑張ってやり続けたら、こんな風に純粋なフラメンコが踊れるという…ばんざーい!!阿部さんは私にとって日本のフラメンコの希望の星です!!
32.永田健「マルティネーテ」
おお、進化してますね!かなり作り込んでいたけど、今回のマルティネーテはあなたに合っていた感じがしました。地道で非常に好感が持てます。佳き踊り手なり。
34.斎藤克己「タンゴ・デ・マラガ」
とんでもないベテランが出てきた。こういうチャレンジ魂が見られるから協会の“新人公演”って面白い!私が克己さんの踊りを見たのは20年ぶりぐらいかな?今回はその頃よりもフラメンコ性を感じたけど、驚いたのは身体で作るラインの美しさ。最近の若い男子の踊りにはなかなかない、フラメンコのこだわり。見とれてしまう。大きな舞台での見せ方を心得た、お手本のような踊りでした。
<6月19日>
17.李成喜「ソレア」
バランスが取れていて、とても良い感じ。ただ、足音がパルマで聞えないので、聞かせたくないのかと思ってしまう。パルマが悪いんじゃない。エスコビージャの時に集音マイクのところまで来れば、普通に足音は聞えるのです。お願いします。
20.末松三和「ソレア」
大変抑制の効いた身体、その動き。よりフラメンカになって、ああ、とても良かった!成長しましたねえ。こういう、成長していく踊り手に出会うと、本当に新人公演って素晴らしいなと思うんだな。
23.西山依里「タラント」
なんとユニークな!どなたの振付だろう、ご自分だとしたら、かなりのオリジナリティがあった。いやあ、こんな面白いタラント初めてでした。コンパスも悪くなかったし、やり過ぎの感はありましたが、私は好きでしたよ。ガンガン、自分の方向を突き詰めるといいと思います。
27.大野環「シギリージャ」
もう小物は使うなと言ったのに、今年はパリージョかいっ!と心の中で突っ込んだ。ところがなんと、このパリージョが素敵すぎた。生きていた。踊りとのバランスも非常に良くて、ちょっと鳥肌が立ちました。もう小物使うなとは言いません。ごめん。
29.松彩果「タラント」
あはははは!なんと見どころ満載なんじゃ!もう、彼女はサービス精神があり過ぎる!この、やりたいことは全部やります、見せたいものは全部見せますっていう芸風(?)は、踊り手としては損な面があると思うけど、とても愛らしいので放っておきます。あと10年したら、きっと変わると思うし。
30.渡辺なおみ「アレグリアス」
身体がよく動いて、上手い踊り手の印象。だが、全体にたったひとつの色合いしか感じられない。感情が動いている感じがしないのです。アレグリアスはひとつの感情だけで踊るものと決めないで、もっとよく探ってみて。
31.柴崎沙里「ソレア」
よく鍛えられた身体で、とても抑制が効いている。なんといっても、全体の流れが良かった。これだけ自分で支えて表現できるのは、質の高い踊り手だと思う。今後が楽しみ。
34.重盛薫子「タラント」
おそらく相当、踊り込んでいるのだろう、手慣れた感じの踊りに見えた。そうなると驚きがない。舞台とはいえ、そこは生き物なのだから、ギリギリの挑戦を持ち込んで自分を追い込まないと、見ている人にライブの感動は与えられないと思います。踊り手としてはかなりの高得点なので、心の向きを変えてみて。
35.近藤綾香「タラント」
ストリート系?みたいな?オリジナルな振付のフラメンコ。ひんしゅくものだったかもしれないが、私は面白かった。「めっちゃかっこええ!」とメモにある(笑)。わくらばのような衣装も新鮮でした。おそらく若い方だと思うが、どんどん挑戦を続けてください。Ole!