今回のオーロラ紀行に際しては、まず「オーロラとは何か」について知識を身につける必要があった。「地球の歩き方」では赤祖父俊一先生という方が解説を書かれている。同じ赤祖父先生の著書で新書レベルの本として以下の書籍が見つかった。ただし現時点では古本でしか入手できない。
赤祖父先生は1930年生まれ、1953年に東北大学を卒業し、61年からアラスカ大学に進まれた。そのまま同大学地球物理研究所の教授、そして所長となり、この本が執筆された2002年当時はアラスカ大学国際北極圏研究センター所長であった。
赤祖父先生が東北大学の学生の頃、地球の磁場と太陽から吹き付けるプラズマガス(太陽風)との相互作用により、地球の磁場の形が非常に変わった形になるということを、理論的に解明した先生がいた。チャップマン-フェラーロ理論といい、この理論を理解できないようではオーロラや磁気嵐の研究をする資格はないと言われていた。しかし、赤祖父先生にはこの論文が難解だったので、思い切ってアラスカ大学のチャップマン先生に手紙で質問を出した。すると思いがけなく、そのチャップマン先生から10日ほどですぐ返事が来た。「貴君の質問のいくつかは私自身も答えられない。アラスカに来て、大学院の学生として私の指導で研究を続けてはどうか」とあった。赤祖父先生が「申しわけないことだが、貧乏学生なので渡航費などない」と書いたところ、航空運賃のチェックが送られてきた、というのである。
おもしろい話である。日本の大学の権威たちは、「チャップマン-フェラーロ理論が理解できなければ研究者ではない」と言い合い、自分は理解しているつもりだった。しかし実は、「難解でよくわからない」と感じかつ質問を出した赤祖父氏が、「何がわかっていて何が分かっていないのか」を一番理解していたし、当のチャップマン先生もそのことに直ちに気付いたのであろう。
赤祖父先生の上記図書では、オーロラについての科学がどのように進歩してきたのか、時代を追って解説している。
さきほどのチャップマン-フェラーロ理論が導き出したように、地球自体が磁石になっていることによって形成される地球の周りの地磁気の形は、決して地磁気軸の回りに軸対称になっていない。例えば、オーロラと磁気嵐の科学(5)に掲載されている図4を見ていただくとわかるように、太陽に向かう側は磁力線が閉じているのに対し、太陽の反対側は長い尾を引いているのである。
そしてこの磁力線のうちの特定部位の磁力線に沿って、太陽から地球に吹き付ける太陽風(プラズマ=荷電粒子)が地表に向かって降り注いでくる。この荷電粒子が高度500~100kmにおいて地球を取り巻くガス(分子や原子)と衝突し、そのときに蛍光を発するのである。これがオーロラである。
オーロラが発生する地球の特定部位とは、磁北極と磁南極を中心としてリング状(オーバル状)に形成される。オーロラ・オーバルとも呼ばれる。例えば、オーロラへの招待の中のオーロラ・オーバルを見てほしい。この中の図7は、人工衛星から観察した北極周辺のオーロラ・オーバルである。
赤祖父先生はアラスカ大学で、オーロラ科学に関するいくつもの貢献をしている。
フェアバンクスはオーロラ・オーバルの位置にある。そしてフェアバンクスで観察していると、オーロラは午後9時頃に北方から現れ、次第に近づき、12時頃にフェアバンクスの真上に来る。その後またオーロラは北に移動し、午前3時頃に北の空に去っていく。地球上の1箇所で見ているとこのように見えるオーロラが、地球全体から見るとどのようなメカニズムになっているのか、という点について明らかにしたのは赤祖父先生である。
赤祖父先生はまた、先生が「オーロラ・サブストーム」と名付けたオーロラ活動が、地球規模のオーロラ・オーバルにおいてどのように挙動しているのかについて、明らかにした。北極圏を囲む各地に設置された全天カメラのフィルムを3年がかりで詳細に検討した結果である。
最近の赤祖父先生は、地球温暖化に関し、「小氷期が1800年頃に終わった後から0.5℃/100年の温暖化が現在まで200年間持続している。この温暖化は大気中CO2濃度上昇のはるか以前から始まっており自然現象とみなすべきである。したがって20世紀に認められた0.6℃の気温上昇のうち少なくとも6分の5は自然現象である」と主張されているらしい(正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために)。
戻る
オーロラ―その謎と魅力 (岩波新書 新赤版 (799))赤祖父 俊一岩波書店このアイテムの詳細を見る |
赤祖父先生は1930年生まれ、1953年に東北大学を卒業し、61年からアラスカ大学に進まれた。そのまま同大学地球物理研究所の教授、そして所長となり、この本が執筆された2002年当時はアラスカ大学国際北極圏研究センター所長であった。
赤祖父先生が東北大学の学生の頃、地球の磁場と太陽から吹き付けるプラズマガス(太陽風)との相互作用により、地球の磁場の形が非常に変わった形になるということを、理論的に解明した先生がいた。チャップマン-フェラーロ理論といい、この理論を理解できないようではオーロラや磁気嵐の研究をする資格はないと言われていた。しかし、赤祖父先生にはこの論文が難解だったので、思い切ってアラスカ大学のチャップマン先生に手紙で質問を出した。すると思いがけなく、そのチャップマン先生から10日ほどですぐ返事が来た。「貴君の質問のいくつかは私自身も答えられない。アラスカに来て、大学院の学生として私の指導で研究を続けてはどうか」とあった。赤祖父先生が「申しわけないことだが、貧乏学生なので渡航費などない」と書いたところ、航空運賃のチェックが送られてきた、というのである。
おもしろい話である。日本の大学の権威たちは、「チャップマン-フェラーロ理論が理解できなければ研究者ではない」と言い合い、自分は理解しているつもりだった。しかし実は、「難解でよくわからない」と感じかつ質問を出した赤祖父氏が、「何がわかっていて何が分かっていないのか」を一番理解していたし、当のチャップマン先生もそのことに直ちに気付いたのであろう。
赤祖父先生の上記図書では、オーロラについての科学がどのように進歩してきたのか、時代を追って解説している。
さきほどのチャップマン-フェラーロ理論が導き出したように、地球自体が磁石になっていることによって形成される地球の周りの地磁気の形は、決して地磁気軸の回りに軸対称になっていない。例えば、オーロラと磁気嵐の科学(5)に掲載されている図4を見ていただくとわかるように、太陽に向かう側は磁力線が閉じているのに対し、太陽の反対側は長い尾を引いているのである。
そしてこの磁力線のうちの特定部位の磁力線に沿って、太陽から地球に吹き付ける太陽風(プラズマ=荷電粒子)が地表に向かって降り注いでくる。この荷電粒子が高度500~100kmにおいて地球を取り巻くガス(分子や原子)と衝突し、そのときに蛍光を発するのである。これがオーロラである。
オーロラが発生する地球の特定部位とは、磁北極と磁南極を中心としてリング状(オーバル状)に形成される。オーロラ・オーバルとも呼ばれる。例えば、オーロラへの招待の中のオーロラ・オーバルを見てほしい。この中の図7は、人工衛星から観察した北極周辺のオーロラ・オーバルである。
赤祖父先生はアラスカ大学で、オーロラ科学に関するいくつもの貢献をしている。
フェアバンクスはオーロラ・オーバルの位置にある。そしてフェアバンクスで観察していると、オーロラは午後9時頃に北方から現れ、次第に近づき、12時頃にフェアバンクスの真上に来る。その後またオーロラは北に移動し、午前3時頃に北の空に去っていく。地球上の1箇所で見ているとこのように見えるオーロラが、地球全体から見るとどのようなメカニズムになっているのか、という点について明らかにしたのは赤祖父先生である。
赤祖父先生はまた、先生が「オーロラ・サブストーム」と名付けたオーロラ活動が、地球規模のオーロラ・オーバルにおいてどのように挙動しているのかについて、明らかにした。北極圏を囲む各地に設置された全天カメラのフィルムを3年がかりで詳細に検討した結果である。
最近の赤祖父先生は、地球温暖化に関し、「小氷期が1800年頃に終わった後から0.5℃/100年の温暖化が現在まで200年間持続している。この温暖化は大気中CO2濃度上昇のはるか以前から始まっており自然現象とみなすべきである。したがって20世紀に認められた0.6℃の気温上昇のうち少なくとも6分の5は自然現象である」と主張されているらしい(正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために)。
戻る
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます