仕事が終わってこの暑さの中、冷房のない部屋に帰っても大変である。今日はこの界隈の散策に出た。8時少し前、モンパルナス駅の近くの小さい librairie-papetrie を見つけて、中に入ってみる。先日、Le Point で読んだプルーストの幼馴染が書いた本(« Une saison avec Marcel Proust » par René Peter)があるかどうか、店の人に聞いてみた。女主人はウインドウに展示してあった本を取ってくれた。その時、店の中央に置かれた、本が載ったテーブルの前に座っていた男が、プルーストの専門家ですか、と聞いてきた。全くの趣味でいろいろ読んでいるんですと答え、それから話が始まった。彼は、ブノワ・デュトゥールトゥル (Benoît Duteurtre; 1960-) という作家で、自著にサインをして売っているところだったのだ。本のタイトルは、La petite fille et la cigarette という小説である。すぐに買おうとしたが、荷物の重量オーバーのことを思い出し、私の問題は荷物が重いことで恐らく買えないだろうと言うと、100キロもあるんですか、と返してきた。彼は結構本を出していて、その店で目に付いただけでも次のものがある。
Tout doit disparaître
Le voyage en France (この作品で 2001年の Médicis 賞を受賞している)
Gaieté parisienne
Service clientèle
La Rebelle
彼の作品を読んだことがないので何とも言えないが、タイトルを見るだけだと結構面白そうである。日本に帰ってからネット注文で読んでみたい。彼は、非常に気さくで芸術家を気取るところもなく、笑顔を絶やさず親しみやすい。どこから来たのかと聞くので日本と答えると、自分の作品はすでに10カ国ぐらいで訳されているのだが、まだ日本との取引はないと言っていた。一瞬、自分にそれだけの力があれば訳してみるのも面白いかも、との不遜な思いも過ぎった。もし翻訳関係の方がこのブログを読まれていたら、今がチャンスかもしれない。(上の写真はその時に撮ったもの)
帰りにあたりを歩いていて、モンパルナスに劇場がいくつかあるのを見つける。その中のひとつ、Théâtre de la gaîté Monparnasse (何と訳すのだろうか)で私にとっては見覚えのある作曲家エリク・サティー Erik Satie (1866-1925)の眼鏡が描かれているポスターを見つける。受付の人に聞くと、サティーの手記などをもとに語りやピアノ演奏などがある面白い出し物だ、と言って親指を上に上げた。つられて入ろうとしたが、私のカードがここではうまく機能せず、明日以降の楽しみに取って置くことになった。
ちょっと歩くと、何かに当たるというパリの夜であった。
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この2日後、サティーの芝居を観る機会が巡ってきた。
エリク・サティー ERIK SATIE (2005-6-25)