蔵王の山の中
400年以上前に開かれた湯元がある
伊達藩の御殿湯だったという
伊達政宗なしにはありえなかった仙台の町から車で案内される
山の斜面につくられた宿 その急な階段を上り部屋に入る
デカルトの言葉に耳を澄ます
彼の声が何と素直に入ってくることか
解説書ではそれが雑音の中に掻き消されてしまう
彼らと直接言葉を交わし そして考えることによってのみ
何かが自分の中に沈殿していくようだ
雨が本降りになってきた
屋根にあたる激しい雨を聞きながら夕食をとる
ゆったりしに来たはずが ゆったりした給仕に僅かに苛立つ
時々雷光が障子越しに見える
マンション生活では終ぞ味わったことのない その雨音の中にいると
我が身が自然の中に置かれていることを実感する
部屋に戻って窓を開け放つ
眼下に光を受けた竹林を見ながら 久しぶりに葉巻を燻らす
安井曽太郎夫妻が流れている
それらすべてを傍らに 雨音の中に入ろうとしていた