エンリコ・マシアスの初期のシャンソンを聞く。アルジェリア出身のユダヤ人。国を捨ててきた時の歌 "Adieu, Mon Pays" 「さらば、我が祖国」。印象的なギターの前奏で始まる哀愁を感じる節回し (イントロの雰囲気をこちらで味わうことができます)。La chanson arabo-andaluse と言われるように、まさにアラブかアンダルシアの音楽を想起させる。
彼の後期の歌をその昔少しだけ聞いたことがあるだけなので、このような歌を歌っていたことに驚くと同時に、彼の新たな一面を発見した喜びを感じる。その詩の意味を掴んでみた (以下拙訳)。
ADIEU, MON PAYS 「さらば、我が祖国」
G. Ghenassiat 1962 (作詞・作曲:ゲナシア)
J'ai quitté mon pays 我が祖国を捨てた
J'ai quitté ma maison 家を捨てた
Ma vie ma triste vie 私の人生 悲しい人生
Se traîne sans raison 訳もなく地を這う
J'ai quitté mon soleil 私の太陽を捨てた
J'ai quitté ma mer bleue 私の青い海を捨てた
Leurs souvenirs se réveillent その思い出が呼び覚まされる
Bien après mon adieu 別れた後も
Soleil ! soleil de mon pays perdu 太陽よ!私の失われた祖国の太陽よ
Des villes blanches que j'aimais 私の愛した白い街
Des filles que j'ai jadis connues 昔愛した娘たち
J'ai quitté une amie ひとりの女を捨てた
Je vois encore ses yeux いまでも彼女の目を
Ses yeux mouillés de pluie 雨に濡れた目を思い出す
De la pluie de l'adieu 別れの雨に濡れたその目を
さらに痛みを伴う回想が続く。この主人公に感情移入したのか、その節回しとむせび泣くようなビブラートのせいなのか、聞いているうちに心が震えてきた。彼の arabo-andaluse のシャンソンには心に響くものが沢山ある。しばらく付き合ってみたい。