フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

マリオ・バルガス・リョサ VARGAS LLOSA - ECRIVAIN VOYAGEUR

2005-10-20 23:57:18 | 海外の作家

今週の Le Point に興味深いインタビューが出ていた。今回も初めての人で、ペルー生まれの行動する作家、マリオ・バルガス・リョサ。最近、ラテンアメリカについての本を出したのを機にインタビューを試みたらしい。彼の話を読んでみて、その生き方には大いに魅かれるものを感じた。

Mario Vargas Llosa (1936 Arquipa, Péru -)
Dictionnaire amoureux de l'Amérique latine (Plon, le 17 octobre 2005)

ほぼ70年に及ぶこれまでの人生を外から簡単に見てみると、1936年南米はペルーの生まれだが、法学と文学をマドリッドの大学で修める。20代前半に小説を発表し、パリに移り住む。20代後半には小説 「都会と犬ども」 (La ville et les chiens) を発表。イギリスで数年過ごした後、ガブリエル・ガルシア・マルケス Gabriel Garcia Marquez (1928 Aracataca, Colombia -) についての仕事で30代前半に哲学と文学の博士号をスペインで得る。1990年 (50代半ば) にはペルーの大統領選に出て、アルベルト・フジモリに敗れる。その後、次のような本を出す。
1993年 Le poisson dans l'eau
2002年 La fête au bouc 
2003年 Le paradis - un peu plus loin

彼は一箇所に留まることなく、リマからマドリッド、ロンドン、パリと生活の場を変えている。どこが住まいなのかの問いに、「ポイントは、今いるところに住んでいるということ」 と答えている。「リマは若き日の思い出のため、パリとマドリッドはヨーロッパの鼓動を感じるため、そしてロンドンは仕事をするため」 とのこと。

Pour l'essentiel, j'habite où je suis.....Lima, c'est pour les souvenirs de ma jeunesse. Paris ou Madrid, c'est pour sentir le pouls de l'Europe qui bouge. Mais Londres, c'est l'idéal pour travailler.

非常に規則正しい日常のようで、朝起きて、散歩してから新聞を読んでシャワーを浴び、執筆後は図書館かカフェ、それからまた執筆。毎日がこの繰り返し。ただ時として閉所恐怖症になるので、そんな時には特派員として飛ぶようだ。長い間自分に閉じこもるのは不健康と考えている。

Je suis très organisé : réveil, promenade, lecture des journaux, douche, écriture, bibliothèque publique ou café, puis encore écriture. Toujours la même chose, le même rythme....De temps à autre, je deviens claustrophobe, et, alors, je me transforme en envoyé spécial ici ou là....Un écrivain ne doit pas s'enfermer trop longtemps avec ses fantômes. Ce serait malsain....

彼はフローベールの賛美者であるが、フローベールのように修道者、引きこもり、文学的なばか騒ぎの信奉者として生活する (空想の世界に閉じこもる) ことは好きになれないらしい。精神の健康を維持するためにはフローベール的な要素とジャーナリストの (現実を見る) 側面を持つ必要があるのではないかと考えている。

そういう生き方をしているので、世界中のすべてのことに興味があるという。イスラエルがガザから撤退した直後に様子を見に行っている。ラテンアメリカのスラムよりもひどかったらしい。イラクについても、独裁者がいなくなるのはよいが、それが戦争に値するものだったのかと考えている。フランスについてもなかなか厳しい。伝統的な反アメリカ主義 antiaméricanisme が今でも根強く残っていて、さらに反自由主義 antilibéralisme (と anti-globalisation の感情) が加わり、それだけが今日のフランス人の唯一のコンセンサスになっていないか。フランスの反アメリカ主義はラテンアメリカよりも強いのでは。フランスはいつまでこの状態を続けるのだろうか。ナショナリズムに対してフランスをこれまで偉大にしてきたユニバーサリズムを蘇らせるようにしなければならないのでは、、。

左の知識人として生きているように見えるが、との問いには、次のように答えている。
「インテリは一般的に理想的な世界を求める。それは現実よりはユートピアで出会うもの。民主主義はより悪くならないようなシステムなので本来的に不完全なもの、理想的なものではない。私は今でも utopiste。政治の世界以外では。」

フランスでは、フローベール/マラルメの系統 (lignage Flaubert-Mallarmé) とシャトーブリアン/バレス/マルローの系統 (lignage Chateaubriand-Barrès-Malraux) があるそうだ。前者は 「象牙の塔の中で書き、人生を忘れる (j'écris dans ma tour d'ivoire et j'oublie ma vie) 」 というもので、後者は 「作品を書くために冒険に満ちた人生を送る (la vie aventureuse comme prétexte de l'œuvre) 」 と考える。日本でも 「小説を書くことが人生」 に対して 「人生の中で小説を書く」 という分け方で小説家を見る話を聞いたことがあるが、人間の生き方にも通じるだろう。その中で彼はどこにいるかというと、片足をフローベールに、もう一方をマルローに置いているという。ジャーナリストが本を書くというのではなく、あくまでも作家が旅をしているという感じなのだろうが、。

精神のダイナミズムを適度にバランスをとりながら、あらゆるものに興味を示し、動き、観察し、そして発する。素晴らしい人生を送ってきたように思えるのだが。作品にも近いうちに触れてみたい。

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