フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

春宵感懐 EMOTION D'UN SOIR DE PRINTEMPS

2006-03-31 20:30:25 | 俳句、詩

「春宵感懐」

雨が、あがつて、風が吹く。   
 雲が、流れる、月かくす。    
みなさん、今夜は、春の宵。   
 なまあつたかい、風が吹く。   

なんだか、深い、溜息が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴めない。
 誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
 ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
 けれども、それは、示(あ)かせない・・・・・

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合わせれば
につこり笑ふといふほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがつて、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。

(中原中也 「在りし日の歌」 より)


« EMOTION D'UN SOIR DE PRINTEMPS »

Cesse la pluie, souffle le vent.
  Les nuages passent, cachent la lune.
Messieurs dames, ce soir est un soir de printemps.
  Très tiède, souffle le vent.

Je ne sais quel profond soupir,
  Je ne sais quelle lointaine vision,
S'éveille, et pourtant, insaisissable,
  A quiconque, indicible.

C'est une chose à quiconque
  Indicible, et pourtant, justement,
N'est-ce pas ce qu'on dit être la vie ?
  Et pourtant, inexplicable...

Ainsi, les hommes, seul à seul,
  Sentent avec leur cœur, et s'ils se regardent,
Se sourient gentiment, mais c'est tout,
  Et ainsi donc, s'en va leur vie !

Cesse la pluie, souffle le vent,
   Les nuages passent, cachent la lune.
Messieurs dames, ce soir, est un soir de printemps.
  Très tiède, souffle le vent.

(Traduit par Yves-Marie Allioux)

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2 コメント

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中原中也 (さなえ)
2006-04-02 11:18:47
湯野浜温泉の海岸で、「汚れちまった悲しみに今日も小雪が降りかかる」となぜか中原中也の詩の一節が繰り返し頭の中でこだましたのですが、その後はどうやっても思い出せませんでした。覚えていたはずなのに…年をとった悲しみに代わったのでした。
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Unknown (paul-ailleurs)
2006-04-02 22:56:32
仏語訳の本を買ったことで、新たに日本語の方も読み直してみましたが、その世界もさることながら「汚れちまつた悲しみに・・」のように言葉の躍動感が素晴らしいことに気付き、改めてじっくり付き合ってみようかという気になっています。

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