フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

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清水登之を見つける RENCONTRER TOSHI SHIMIZU

2006-08-09 23:33:32 | 日本の画家

先日、吉祥寺美術館のショップで画集を見ている時に、もう一人の画家が飛び込んできた。画家の心、その野太い心を強く感じたというのだろうか。とにかく印象が強かった。レジェのようでもあり、先日横浜で見たゲオルゲ・グロッスのようでもあり、ホッパーやアンリ・ルソーの雰囲気を感じたりするところがあるが、全てを通してみるとやはり違う。

清水登之(1887年1月1日-1945年12月7日)

画集の中にあった彼の娘 (中野冨美子) さんが語る逸話を読んでいる時、この画家を以前に新日曜美術館で見たことを思い出した。終戦の2ヶ月前に長男育夫の戦死の公報を受け取ってから、毎日のようにお墓 (と言っても出征の前に取っておいた髪の毛と爪が埋めてあるだけの) に行くようになる。ある日彼女が心配して父親の後を追っていくと、彼女の兄の墓の前で 「育夫!育夫!」 と嗚咽する父親の姿を見つけ、その悲しみの深さを感じたという。登之はすべての希望を失い、その半年後に白血病のために亡くなる。享年58。

テレビではこの話だけがなぜか強い印象を残していて、絵の記憶はほとんどなかったが、今回初めて絵の方から近づいてきてくれたという感じである。そう誘う力があるのだろう。彼の絵を見ていると知らないうちにその中の物語に入っていっている自分に気づく。

二十歳に渡米し、いろいろな仕事をした後シアトルで絵を始め、ニューヨークへ。それからパリにも足を伸ばしている。海外で外国人として暮らした経験を持つ人の心にはどこかで共感しているところがあるようだ。

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