今年の2月にフランス語学習を中心に書き始めたこのブログだが、今日はその100回目に当たることが判明。今ではフランスに関連のある事がらやそこから喚起されることまで幅広く書くようになった。ほんの数ヶ月に起こった変化である。今年が終わる頃に何を書いているのか、想像もつかない。
その記念すべき日に、ジャック・ル・ゴフという凄い歴史家とお付き合いしているというのも何かの縁だろう。凄いと言うのは、エネルギーの塊のような、枯れることのなさそうな、精神・思想を鍛えに鍛えてきた、ということが紙面から感じられるというような意味合いである。彼の学問的な評価は私には無理だが、インタビューを読んでいて感心させられることが次から次に出てくる。
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「中世が長い間暗黒の時代と考えられていたのはどうしてですか?」
(Pourquoi le Moyen Age a-t-il si longtemps été considéré comme un âge de ténèbres ?)
→ ルネッサンスからそう考えられ始め、18世紀の哲学者は中世の信仰や風習の中に「粗野、野蛮さ」を見ていたようだ。中世の主要な様式に « gothique » と名づけたことを考えればわかるだろう (ゴチックとは、ゴート族のように洗練されない、野蛮な « barbare » という意味を持つ)。彼らは中世の真の思想や文明についての理解を欠いていたのだ。しかし、20世紀に入って、マルク・ブロック (Marc Bloch : 1886 - 1944)、フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel : 1902 - 85)、それと不肖 (plus modestement) 私のような歴史家によって、中世は比類ない創造性に満ちた時代のひとつ (une période d'une exceptionnelle créativité) であることが発見されたのです。
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「どのような方法で l'imaginaire médiéval の歴史を理解すべきなのか?」
(Comment faut-il comprendre l'histoire de l'imaginaire médiéval ?)
→ l'imaginaire というのは、経済的、社会的、法的な現実と隣り合わせの社会 (une société à côté des réalités économiques, sociales et juridiques) を意味する。中世で重要な役割を担っていた宗教を例に取れば、神、キリスト、聖母、聖人、天国などに対する人々の vision (イメージ、見方) のすべてが l'imaginaire に属する。ひとつの時代を理解しようとしたら、人々がどう考え、感じ、夢見ていたのかを考えなければならない。そのために重要になるのが文学だ。経済的な側面を無視するわけではないが、l'imaginaire が時代の全体像を捉えさせてくれる (L'imaginaire est ce qui permet de saisir la totalité d'une époque.)。経済的・社会的側面が時代の骨格であるとすれば、l'imaginaire が肉に当たる。
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「どのような方法で仕事をしているのですか?」
(Quelle est votre méthode de travail ?)
→ 読んで、観察して、そして疑問を出すのです (Je lis, je regarde, je questionne.)。その疑問とは、その作品が何を言いたいのか?どんな価値を伝えようとしているのか?どのような感情について書いているのか?という点です。
« Qu’est-ce que cette œuvre veut dire ? Quelles valeurs véhicule-t-elle ? A quels sentiments s’address-t-elle ? »
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中世とは - ジャック・ル・ゴフ(I)
中世とは - ジャック・ル・ゴフ(III)
中世とは - ジャック・ル・ゴフ(IV)