皆さん、こんばんは
ここ数日、主人のサプライズ計画(爆)に付き合わされており、
を留守にしておりました
まあ、いい事もあったからいいんですが、この年になっても相変わらず私を振り回す男です
ったく、ファンミの前で、そんな気分じゃないってのに
そのため、更新すっかり滞ってしまい、すみません
どんなサプライズだったかは、また書くとして、以前から「IFの部屋」を
開けてほしいというご要望がありましたので、このたび、「IFの部屋」で
書いて下さっていたママナルさんの作品を、こちらでもご紹介する事にしました
私のお話は「愛ため」(
覚えていらっしゃるかしら?
)の時に
物議をかもしましたので、とりあえず封印という事でご了承下さい
では、最近ここにたどり着いたばかりでまだ未読の方も、何度も読まれた事がある方も
久々のママナルさんワールドをお楽しみ下さい
まずはこれ、私が生み出した(笑)二人の子供、サランのお話でーす
【Closer to you vol.1】
「あなた…」
ヨンスは寂しげなミンチョルの背中に声を掛けた。
そして飛び立っていく機影を見つめ続けるミンチョルの腕に優しく手を絡ませた。
「行ってしまいましたね…寂しいですか?」
何も答えずミンチョルはヨンスの手を強く握り締めた。
(あの日…、あのヨンスの誕生日から…
いや、サランが生まれた日からこの日が来ることは分かっていたのだが…)
それは2ヶ月前のヨンスの誕生日が来ようとしていた12月のある朝の事…。
あの日からミンチョルの回りで全てがゆっくりと、けれども確実に動き始めたのだ。
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「パパ、今年のママの誕生日はどうする?」
「うん、そうだな…どこか三人でホテルで食事でもするか?
午後からなら休みが取れるようスケジュールは調整してあるが…。」
「ふーん、そうなんだ。パパの会社、人使い、荒いからね~。」
「サラン、お前の方はどうだ?」
「うん、夜ならなんとか合流出来ると思うよ。」
サランはミンチョルからは時勢を見抜く眼、ヨンスからは豊かな感性を受け継ぎ、
企画室でサブチーフとして頭角を現していた。
12月と言えば会社は一年で一番の繁忙期だ。
特に、ヨンスの誕生日の25日に休みを取ろうなんて、企画室では無理な事だった。
「パパ、25日の企画書を特別に用意するからそのとおりに当日は過ごしてね。
もちろん、その日まではママには内緒よ、絶対に!いい?」
「ああ、分かった。」
「あっ、 そこの角で降ろして。助かったわ、サンキュー パパ。」
そう言うと、ミンチョルの頬に素早くキスをして、サランは颯爽と建物の中に消えて行った。
(いつまでたっても子供だよなぁ)
今朝、打ち合わせに遅れるから車に乗せてと、寝癖のついた頭のままパジャマ姿で
バタバタとしていたのを思い出し、ミンチョルは苦笑した。
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「社長、本日の企画書です。」
そう言いながらサランは今日のヨンスの誕生日の予定をミンチョルに渡した。
サランの作った企画書にざっと目を通しながら、ミンチョルはサランに尋ねた。
「サラン、お前、昨日は帰って来なかったのか?」
「えっ! う、うん、ちょっとね。」
「あまり、ママに心配を掛けるんじゃないぞ。」
「はーい!」
サランは赤い舌をぺろりと出した。
「この封筒のとおりに今日は行動すればいいんだな。」
「うん、そう…。次の指示は行った先に預けてあるからね。」
「サラン、今日は遅れるんじゃないぞ。」
「分かってるって。パパこそ、急に仕事入れたりしないでよね。」
「そんなことするわけないじゃないか。今日はママの…、僕のヨンスの誕生日なんだから。」
「あぁ~、もうストップ!ストップ! ご馳走様! じゃ、今晩ね。」
ウインクしながらサランは社長室を出て行った。
その日の午後、ミンチョルは会社を出る時、1通目の封筒を開けた。
『今日はママを最高に幸せにしてあげてね。
パパが無理やり連れて行ったブティックにドレスを用意しておいたから』
ミンチョルはそれを読むとすぐに、妻に電話をした。
「ああ、ヨンス? 僕だ、出かけるから準備をしておいて。」
「ええ、わかったわ、待ってます。」
電話を切ってヨンスはクスっと笑った。
(あなたったら、全然変わってない…。相変わらず私の都合を聞かないのね。)
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車を走らせ迎えにいくと
あれから待っていたのかエントランスから息を白くさせたヨンスが駆けてきた。
「乗って…。」
助手席へ彼女を誘(いざな)う。
「どこへ行くの?」
「うん…懐かしい場所さ」
(僕が初めて君にときめいた…)
「ヨンス、出来たら目を閉じておいてくれるかい?」
「え?目を?…いいけど…」
ヨンスは言われた通り、目を閉じた。
やがて、ミンチョルは例のブティックの前で車を停めた。
「さあ、着いた!もう目を開けてもいいよ。」
ヨンスはゆっくりと目を開けた。
「まぁ、ここは…!」
ヨンスは驚きの声を上げた。
中に入ると、店員は心得たようにヨンスをフィッティングルームへと案内していった。
ミンチョルはソファに座って雑誌を読みながら、ヨンスの支度を待っていた。
そう、あの日のように…。
「あなた、お待たせしました。」
「…。」
声にならない。
そう言って出てきたヨンスはあの頃以上に彼の胸をときめかせた。
亜麻色のロングドレス。
細かいプリーツが施され、それはヨンスの変わらないボディラインを引き立たせていた。
ラフにアップにされたヘアスタイル、深く開いた背中にいく筋かのほつれ髪。
そんなヨンスをミンチョルは抱き寄せ、そっと頬にキスをした。
ヨンスの頬がほんのり赤くなる。
「あなた、人が見ています。」
「いいよ、気にしないで、僕だけを見つめて。」
二人は見つめ合い、今度は互いの想いを伝えるような深いキスをした。
「あのぉ…、これをお預かりしていますが。」
二人の様子をそっと盗み見ていた店員が、遠慮がちに2つ目の封筒を彼に差し出した。
ミンチョルはそれをヨンスに見えないように開けた。
『パパ、次はママのファーストキスの思い出の地、あの民宿までよ。
でも、今日は海に飛び込んだりしちゃダメよ!』
(あいつ…)
ミンチョルは胸が熱くなるのを感じた。
「さあ、行こう。」
「今度は何処へ?」
「終わりまでさ!」
そう言うと、ミンチョルは少年のように悪戯な目をした。
しばらく無言で車を走らせる。
が、運転席のミンチョルが突然口を開いた。
「今日はソウルに戻るなんて言わないよね?」
「そうね~、あなた次第かしら…」
そう言うと、ヨンスはミンチョルを優しく見つめた。
その視線に応えるようにミンチョルはそっとヨンスの手を握る。
「この道はもしかして…」
ヨンスの声が弾んでいた。
二人はやがて、あの民宿のあった場所へとたどり着いた。
そこにはもう、あの民宿はなかった。
そこは「アクアマリン」というティーラウンジのあるプチホテルになっていた。
中に入ろうとすると、ドアマンが近づいてきた。
「お待ちしておりました。イ・ミンチョル様、キム・ヨンス様…。
どうぞこちらへ…」
二人は窓際の席に案内された。
あの日、二人が飛び込んだ海が間近に見える窓際の席に…。
(2007.8.29 「IFの部屋」掲載)