パクパクさんが、フジリンゴを使って素敵なケーキを作ってくれた。
「タルト・タタン」の一番の魅力は、カルメライズされたリンゴの、あの美味しそうな色ではないかと思う。 リンゴがバターとシュガーで程よく照りをもった赤みをおびるように煮て焼いて創り上げた秋の収穫と味覚の色だ。
我が家の前庭にあるリンゴの木は、カリフォルニアでも人気のフジ・アップルだ。
「実は先より元」と教えてくれたのは誰だったか覚えていない、その程度の知識しかないのでろくに剪定もしていない。 今年は途中で伸び放題になったリンゴの木を一定の高さでバッサリやった、それでも結構たくさん実がなった。 豊作は嬉しいが、収穫物の料理や保存に追われてしまう事になる。
一応ネットを掛けていたので鳥の被害は少なかったが、殆ど全部のリンゴが虫食いだった。
有機肥料で殺虫剤や除草剤等の薬は一切使わないので虫食いは避けられないし、別にたいしたことではない。
「タルト・タタン」と名前を聞いただけで、タンとワクワクしそうなケーキである。
一説では、1898年(明治31年)フランスの二人の姉妹が経営する「ホテル・タタン」で, ホテルと言ってもベッド・アンド・ブレックファーストのようなものだろうが、姉妹の一人がホテルのお客に出すデザートのアップル・パイを作るためリンゴをバターとシュガーで煮ていた。
忙しくて平ナベ(Pan)から目を離したのでリンゴが焦げそうになり、焦げ付くと失敗すると思った彼女は用意していたパイ生地をすぐに上から平ナベに入れてそのままオーブンに入れた。 オーブンから出して上下を逆にして、暖かいまま出すとホテル客にたいへん喜ばれたのが始まりと言われる。
こういう話はどこまで本当か分からないが、焦げたリンゴとバターとシュガーのニオイを嗅ぎながら待っていてディナーの最後に暖かいケーキが出てくると、どの時代でもうけない訳がないだろう。
その後、この地方でポピュラーなデザートになり、パリのマキシム(Maxim's)の固定メニューにも加えられる、そして「タルト・タタン」は、アクシデントから生まれたケーキとして広く知られるようになった。 しかし逆さのタルト(Upside down Tarte)は、1841年の"Patissier Royal Parisien"に既に記されていると言う説もある。
私がオハイオ州デイトンでまだ画学生の頃、下宿のおばさんが得意のパイナップル・アップサイド・ダウン・ケーキ(Pineapple Upside down Cake)をよく作ってくれていた事を思い出した。 上にある黄色いパイナップルの甘さと酸っぱさが、パイ生地の食感のバランスと丁度よく美味しかった。
ブラジルには、Bolo de Bananaと呼ばれる、バナナのアップサイド・ダウン・ケーキがあるらしい。
タルトは、フランスで"Tarte"、オランダでは"Taart"で、意味も少し違うようだ。
タルト・タターンのレシピーは、ネットで探せばいくらでもあると、拒むパクパクさんに何とかお願いしてレセピーを書いてもらった。 パクパクさんはダイエット中なので、バターの多いパイ生地ではなくケーキ生地を使用、オーブンが壊れているので電気炊飯器で作ったとのこと。
電気釜で作る「パクパク風」タルト・タターン:
A: りんご 700g~800g (皮を剥いて八等分にしておく)
バター 60g
砂糖 60g
レモン汁 大さじ 2杯
B: 小麦粉 120g
ベーキング・パウダー 小さじ 1杯
砂糖 大さじ 2杯
卵 1個
ミルク 大さじ 2杯
バター 5g
1: 電気釜の内釜にAのバター5gを塗る。
りんごにレモン汁をかけ、内釜に並べ、上にバターと砂糖を振り炊飯する。
2: りんごを炊いている間に生地を用意する。
Bの小麦粉とベーキング・パウダーをふるっておく。
バター、卵、砂糖、ミルクを混ぜておく。
3: りんごが炊けたら一度スイッチを切る。
Bを全部合わせてりんごの上にかぶせる。
再びスイッチを入れて、炊飯する。
4: 炊飯が出来たら内釜を取り出し、熱いうちにお皿をかぶせ、ひっくり返して
出来上がり。
(艶が足りない場合:りんごの皮と芯を鍋にいれ、ひたひたの水で柔らかくなるまで煮る。
煮上がったら濾して汁だけを鍋に戻し、汁の量の半分くらいの砂糖と大さじ2杯のレモン汁を加え煮詰める。 柿色になったら火を止めてタルトに塗る。)