フィランソロピー・CSRリンクアップフォーラム

企業市民活動担当者の自主研究会

関西CSRフォーラム「第3回定例フォーラム」

2005年12月07日 | └ 2005年度

「NPOからの企業のCSRの-
視点2~共生社会とCSR~」



日時:2005年12月7日(水曜日)14時~17時
会場:大阪NPOプラザ(大阪市福島区)
参加者数:計15人

人の多様性への配慮はCSRの重要な視点ですが、在住外国人への対応は欧米と比べると日本では遅れている感は否めません。今回は、「多文化共生社会の形成とCSR」をテーマに、現在の課題や今後への展望などをお話いただき、議論を行いました。

■共生社会とCSR[田村太郎氏からの基調発題]

1.「人の多様性」とCSR

従業員の多様性とは、管理職の女性比率、障害者雇用率、民族的・文化的少数者への配慮などをいい、また取引先、顧客の多様性とは、納入業者の人権状況への責任、多様な顧客への配慮などをいう。

2.在住外国人の増加とCSR

現在、日本の景気回復に伴い、外国人受け入れの議論が再燃している。90年の入管法改正で日系人の入国と就労が認められたことで、事実上の単純労働者が増えており、しかもほとんどが派遣労働などの間接雇用の形態をとっている。また、来日した外国人は、一時的な滞在者としてではなく、永住資格を取るなど長期滞在の傾向にあり、2世代目への対応(雇用・貧困問題)が課題となっている。

3.日本の外国人登録者数の推移

従来多くを占めてきた在日韓国・朝鮮人は年々減少しているが、ニューカマー(中国、ブラジル、フィリピン、ペルーから新たな移民・労働者)が増加している。外国人人口は右肩上がりの傾向がずっと続いており、04年末現在の外国人人口は200万人を超えている。

4.「研修」の外国人数の推移

日系人労働者にくわえ、経済のグローバル化が激しさを増すことで、いっそうのコスト削減を要請される中小企業のために、「研修・技能実習生」制度が拡充され、中国・ベトナム等からの来日者も新たに加わった。制度上は研修であるが、実態は単純労働の製造現場を支えている。まともな研修を実施していない現場も少なからずある。

5.外国人雇用の現状

政府や財界の思惑に反して、単純就労者は増え続け、高度技術者があまり増えていない。しかも、政府の統計では、高度人材にダンサーなど「エンターテイナー」も含まれている。
日本で労働力として必要とされているのはいわゆる単純就労であり、高度技術者は来日しなくても、本国で起業して、日本企業から仕事を受注できる実際、地方の製造業の現場は、外国人がいなければ機能しない。自治体としては地元の工場が中国に移転してほしくないため、在住外国人支援の様々な施策を出し、生き残らなければならない。
はじめは「出稼ぎ」でも、日本での生活が長引けば家族を呼び寄せる。子ども世代は親の祖国へは帰らない。外国人移民2世が下級階層化していき、社会から隔離された状況・社会構造のなかで問題は発生する。日本には永住を支援する政策がないことも問題を悪化させている。ドイツでは、国籍を理由にと待遇を差別してはならない規定があるが、日本では研修生制度などを悪用し、給与水準の格差が合法的に認められている。こうした状況は、SRIに指摘される前に改善しなければ、日本の企業の株は市場で価値を失うだろう。

6.サプライヤーの多様性

海外企業では多様性(ダイバーシティ)に関して様々な取り組みを行い、CSR報告書に記載している。(例:Procter&Gamble、United Percel Services) 例えばBP(British Petrol)では、「Diversity and inclusion」の中で、「2003年には、全グループ計609のトップ・マネジメントのうち、49%が、女性、英国・米国以外の出身、または英国・米国内のマイノリティーによって占められている」、「同年の新卒入社社員の41%が女性、40%は英国・米国以外の出身」と表記している。

7.共生社会とCSR

CSRのISO化と外国人雇用に関して、「人の多様性」の視点でガイドライン化が進んでいる。人の多様性に配慮しない企業活動は、海外から「日本国籍以外の者を不当な扱いをするのか」とSRIで評価され、搾取型雇用(スウィートショップ・レイバー)と捉えられるおそれがある。
また、永住を前提とした雇用と家族の支援に関して、企業は、移民の階層化を防ぐ工夫を自治体・NPOとともに構築していかなければならない。とりわけ、移民2世の教育・就労支援は急務であろう。
さらに、外国人政策に関して、「出入国管理」から「定住生活支援」への政策転換が必要になる。例えば、日本経団連「外国人受け入れ問題に関する提言」や、総務省「多文化共生推進プラン」(策定中)など定住支援への取り組みが徐々に出てきている。

○まとめ

現在の外国人雇用の現状では、SRIの基準に耐えられない。
・ 2008年までに、「内国人待遇」と「異文化対応」を急ぐ必要がある。日本は人種差別撤廃条約や国際人権条約を批准しており、在住外国人への正しい対応は、諸外国からも求められている。
・ 人の多様性への対応は企業の競争力の源泉になる。
・ 現在の研修生制度や、形式だけの派遣業者を通じた外国人雇用は、国内的にはコンプライアンスで対応できても、国際的には評価に耐えられない。企業努力の幅を広げていく必要がある。

■参加者アンケートの声(公開を前提にご記入いただいたものです)。

○ 多文化共生についてのセミナーはまだあまり多くないので、新鮮に聞くことができた。
○ 田村氏のファシリテーターとしての役割が上手いと思う。
○ 適当な参加者数で、ブレインストーミングは良かった。
○ 厳しい指摘をとても柔らかくして頂けた。自戒したいと思う。また、企業として活動を見つめ直したい。
○ ダイバーシティについて今後の参考になった。
○ 後半のディスカッションが大変良かった。企業側からすると、「痛いところをつかれた」問題の投げかけだったと思う。

 (以上、文責:大阪ボランティア協会 梶 英樹)