杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・憲法改正について~「公共の福祉」→「公益及び公の秩序」

2013-02-08 09:30:06 | 憲法問題
憲法改正が大きな問題になってきています。

まず、気になった点から。
憲法のとても基本的で重要な条文のなかで

「公共の福祉に反しない限り」が「公益及び公の秩序に反しない限り」
に変えられています。

大して変わりがないような言葉に見えるのですが,とても重要な変更です。
現在の憲法において「公共の福祉」といわれることの内容は
おおざっぱに言うと、ある権利が制限されるのは他人の権利とぶつかり合いの時だけ,
と解釈されます。
たとえば、ある人の表現の自由を保障すると,他人のプライバシーを侵害するようなときには
両者を調整する必要が出るので、どちらかが制約されることになります。

でも、ある人の発言がなされると国が進めようとする政策に支障が出て不都合だ
というときには制限することはできません。
これがなされたら,正当な政府批判もできないことになります。


これに対して、「公益」とか「公共の秩序」というもののために人権が制限されるとすると
制限する理由が「公益」とか「公共の秩序」という実態の不明瞭なものになります。
そうすると、どんなときにどんな理由で制限するかが不明瞭になり
結果、人権が政府の恣意的な判断で制限することが可能になってしまうことになります。


このような不明瞭な理由での制限を認める規定が、
下記のような重要な規定の中で認められることになります。

このように「公共の福祉」と「公益および公共の秩序」は違うものです。
もし、違わないのだと自民党が説明するなら、変えないでいいわけです。


・・・・・・・・・・・・ 記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


A改正草案

B現行憲法



A 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用しては   ならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない

B 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを   濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。



(人としての尊重等)
A 第13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限   り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

B 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、  立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。



A 第29条 財産権は、保障する。
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向  上に資するように配慮しなければならない。

B 第29条 財産権は、これを侵してはならない。
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。













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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
自民党の改正草案は国家主義 (ルビイ)
2013-02-16 00:13:26
ご指摘のとおり「公益及び公の秩序」というのは実態が不明瞭。
政府の恣意的な判断でいくらでも人権の制限が可能になります。
結局のところ政府を批判する行為が制限の対象にされるでしょう。
自民党の改正草案は、民主主義の憲法ではなく、国家主義の憲法です。
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