杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・国が控訴を取り下げないのは「国務が総理」できていない内閣総理大臣の政治責任

2013-05-28 12:02:07 | 憲法問題
日本国憲法は, 65条で行政権は,内閣に属すると端的に定め、
73条1号で「内閣は国務を総理する」と規定されています。
総理するとは「全体を統一して管理すること」であり、その長が総理大臣です。

昨日、「被後見人に選挙権を認めない」公職選挙法の規定は、
違憲判決から74日という短期間で国会で法改正され削除されました。
これが民意であり、国会の全会一致での判断でした。

ところが、この法改正(公職選挙法で成年被後見人の選挙権剥奪を削除した改正)を受けて、
自民党菅官房長官は「1審の違憲判決が確定するから取り下げない」と法改正の当日に会見で語ったとのことです。

議院内閣制の下で、内閣は国会にその存立の基礎をおいています。
にもかかわらず、この国会が全会一致で選挙権は回復すべきと即座に削除した法内容について、
なお「違憲ではなかった」と言い張るわけです。
もしかしたら橋下流に「当時は違憲ではなかった」とでもいいたいのでしょうか。
当然、現時点での、国民・国会の声によるべきです。

取り下げ反対には、総務相、法務省といった省庁の言い分があるのかも知れませんが、
まさに、これは内閣が総理すべきことです。

また、このような、国の姿勢は、国内での意地の張り合いだけではなく、
国際的には障害者問題に対して日本が積極的な取組を見せているのに、
国内でのちぐはぐ、省庁の面子というみっともなさを世界に示すことになる。
それどころか、結局日本は、障害者の選挙権はやっぱり制限してもいいと思っているんだ、と見られてしまいます。

ちなみに、この日本の違憲判決から74日での法改正の快挙は
既に海外に発信されており、ドイツからは下記のような報告を受けている
と立命館大学の長瀬修教授から連絡を受けました。


もう少し、大きな視野でものを考えるべきです。
また、この事態を「総理」できてないとすれば内閣、
ひいては内閣総理大臣の政治責任をも追求すべきことになると思います。





・・・・・・・・記・・・・・・・

国際的な反響の中で、一つ具体的なものがあります。
ドイツ議会ではまさに障害者の権利条約29条について、6月3日に公聴会があるので、
国際育成会連盟の会長(ドイツ人)がそこに日本のこの動きを伝えるということ です。
日本のこの動きが影響を与える可能性があるそうです。
以下、そのメッセージです。
長瀬修)

I just came back from Athens and found your message: It`s absolutely great what you have reached with your initiative! All self advocates and their families, you and your friends and colleagues, who supported this important legal action at first towards the district court of Tokyo and afterwards towards the parliament in Japan can be very proud as this new law will have a big impact on the general discussion on the implementation of Art. 12 CRPD and will be of great influence not only in Japan, but globally. In Germany, for instance, our House of Parliament will organize a public hearing on the right to vote on the basis of Art. 29 CRPD next week (June 3) and I will inform the parliamentary committee which will organize the hearing about the outcome of your campaign in Japan. I am sure that this will impress a lot of our members of parliament and will cause very positive reactions!

Thank you for your enthusiasm!

Kind regards

Klaus








最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
理解困難な官房長官談話 (林 俊成)
2013-05-30 02:27:24
杉浦先生
お疲れ様です。先日、近くの商店主と話していたら、この東京地裁判決と国会決議について「良かったね」と彼の方から話されました。そして、「足等が不自由で投票に行けない人達が沢山いる。こうした人達のことも考えて欲しい。」とお話しされていました。地域の色々な人と話してみようと思っています。
それにしても、管官房長官は自分の言っていることの自己矛盾に気が付かないのでしょうか。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。