杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・成年後見選挙権裁判 ~ 国会での質問と答弁

2011-07-24 02:30:15 | 憲法問題
2011年2月1日に、成年後見人を付けたことで選挙権を剥奪された知的障がいのある女性の選挙権回復裁判を提訴しました。

今回の訴訟を提起した影響もあり、成年被後見人の選挙権が法律によって剥奪されることの合理性・見直しの必要性について、今年に入り、3回、国会で答弁が行われました。
そこでの、片山総務大臣、枝野内閣府特命担当大臣(当時) 江田法務大臣らの答弁が
かなり具体的に憲法問題に触れていることがわかります。


まず、国側の主たる主張は
「成年被後見人は事理弁職能力を欠く状況にある人だから、法律による選挙権剥奪は一定の合理性がある」
 というものです。
 しかし、一方で、各大臣が、「訴訟の提起を重く受け止めている」、「法の検討に入る」と、法律の見直しについて積極的とも評価できる発言をしています。
 司法が人権意識を先に示すのか、国会がその前に法律を変えるのか、
以下がその要約抜粋です。

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平成23年2月9日 衆議院らは、課なり具体的に踏み込んだ発言をしています。 予算委員会 
質問者:中根 康浩(民主党)


Q.権利擁護のための成年後見制度によって成年被後見人が選挙権を剥奪されていることをどう考えているのか。

A.総務大臣(片山善博):この問題をめぐりまして訴訟が提起され、
私も非常にこの訴訟の提起については重く受けとめております。
「精神上の障害により事理を弁別する能力を欠く常況」という要件のもとに
被後見人になるわけでありまして、事理を弁別する能力を欠く常の状況にあるということですから、
通常は政治参画を期待できないということで、
公職選挙法の規定も一定の合理性があると私は思います。

 ただ、同じような状況にある方で、成年後見制度の利用の有無により、
一方は選挙権を失う、一方は選挙権を保有する、ということが憲法に規定する法のもとの平等に
反するのではないかという問題はあると思います。

 もう一つは、この成年後見制度というのは、本人を保護する、
特に経済活動に一定の制約を加えることで本人の権利を保全するという意味がありまして、
本人を保護することの結果、
本来であれば広く享有されなければいけない政治参画の機会を奪う結果になる
ことに対する違和感というのは、やはりあるんだろうと思います。

 いささか個人的な見解も含めて申し上げましたけれども、
制度には合理性はあると思いますけれども、訴訟になりましたので、
その成り行きをよく注視してまいりたいと思っております。

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平成23年4月21日 参議院 内閣委員会 
質問者:谷合まさあき議員(公明党)

Q.確かに、選挙権の行使を期待できないような人もいるが、
それと選挙権を剥奪すると言う問題は別問題。
不条理を正すと言った総理の国会冒頭演説からすれば、やはり変えるべきではないか。


A.内閣府特命担当大臣(枝野幸男議員):
実際には、「事理弁職能力を欠く常況」でない方でも成年後見が付かれた方が
財産の管理、安全という意味ではいいということで、広く制度を適用している。

そうすると、実際に投票権を持っていただいていいじゃないかと思われる方が、
事実上成年被後見人に入っているという実態があると思われます。 
歴史的な経緯の中である話でありますので、私の一存で間違いなくすぐ変えますとは
申し上げられませんが、御指摘を踏まえた検討には
私の責任で入ることを約束させていただきます。

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平成23年4月19日 参議院法務委員会
質問者:井上哲士議員(共産党)

Q.成年後見制度の理念・目的

A.法務大臣(江田五月議員) :成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの
理由で判断能力が不十分な方々の、自己決定の尊重あるいはノーマライゼーションといった
現代的な理念を十分考慮して、これらの理念と本人保護の理念との調和を図りながら
柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度にしようと、こういう目的で現在の成年後見制度が導入されました。


Q.成年後見の理念・目的に照らせば、選挙権剥奪と言う制度は見直すべきではなかったか。

A.総務副大臣(鈴木克昌議員):以前は、禁治産者については
その要件が心神喪失の常況にある者であるから、行政上の行為をほとんど期待できないため、
選挙権及び被選挙権を有しないことされていた。
 この改正によって禁治産者が成年被後見人と呼称が変わったが、その対象は一致しており、
選挙をする能力について選挙時個別に審査するということも事実上困難であるということから、
従前の禁治産者同様、選挙権及び被選挙権を認めないとされている。


Q.民法におけるこの被成年後見人の規定というものは、選挙での判断能力がないということが問われている規定なのか

A.法務大臣(江田五月議員):民法の規定は、選挙権行使の能力についてとは関係ないと思います。

Q.財産管理能力の判断を選挙の能力とリンクさせた結果、財産管理の能力はないけれども
十分に選挙の判断能力がある人からも、結果としては選挙権を奪うということになっている点をどう考えるか。


A.総務副大臣(鈴木克昌議員):本人からの申立てや鑑定やそして陳述聴取など、家庭裁判所で手続を経てこういう決定がなされている。成年被後見人に行政上の行為を期待できない以上、選挙権の剥奪にも一応の合理性があると考えている。


Q.同じ能力の人が、成年後見の申立をしていなければ選挙権を行使でき、申立をしたら選挙権を奪われるのは平等に反しないか。

A.総務副大臣(鈴木克昌議員):個別審査は困難であり、今の状況では、一応の合理性がある。

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