沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

中城村北中城村清掃事務組合の「悲劇」を考える

2015-11-02 22:00:56 | ごみ処理計画

このブログの管理者は日本に溶融炉が登場したときから反溶融炉の立場をとっているので、溶融炉については国や地方公共団体の職員の皆様よりも知識が豊富であると自負しています。そして、国内において中城村北中城村清掃事務組合ほど国が整備を推進してきた溶融炉の被害に遭っている自治体はないと考えています。

そこで、今日は中城村北中城村清掃事務組合の「悲劇」について書いてみることにします。

(1)国の特例の悲劇

ごみ処理施設の整備に対する国の補助金は原則として人口5万人以上の自治体を対象にしています。しかし、沖縄や離島等については特例として5万人以下の自治体に対しても補助金を交付する措置を講じています。したがって、組合が沖縄県の自治体でなければ溶融炉は整備していなかったと思われます。そして、他の自治体との広域処理を積極的に検討していたと思われます。このブログの管理者は組合が沖縄県の自治体であったことがこれから続く悲劇の幕開けになっていると考えます。

(2)機種選定の悲劇

国内にある溶融炉のうち90%以上はストーカ炉の焼却灰を対象にしていますが、組合の溶融炉は流動床炉の焼却灰(塩分濃度の高いばいじん)を対象にしています。しかも、温室効果ガスの排出量の少ない電気式ではなく燃料式の溶融炉を選定しています。組合がなぜそのような機種を選定したのかは分かりませんが、組合と同じ方式の溶融炉を選定した自治体は国内に2ヶ所しかありません。そのうち1ヶ所(佐渡島市)は故障が原因で既に廃止しています。そして、もう1ヶ所(徳之島町)も故障が原因で休止しています。

(3)国の方針変更の悲劇

組合が溶融炉の供用を開始したのは平成15年ですが、環境省はこの年に旧厚生省が進めてきた溶融炉の整備計画を突然変更してしまいました。つまり、組合は国の計画に従って溶融炉を整備したにもかかわらず、完成とほぼ同時に国から梯子を外されてしまった形になります。ちなみに、メーカーはこの年から溶融炉(ガス化溶融炉を除く)に対する受注活動はほとんど行っていません。したがって、新たな技術開発も行っていません。

(4)JIS規格制定の悲劇

組合が溶融炉の供用を開始してから3年後の平成18年に、溶融スラグの利用を促進するためのJIS規格が制定されました。しかし、組合が選定した溶融炉は溶融スラグの安定した品質管理が難しい機種であるため、JIS規格の基準に適合させるために運転経費が増加することになってしまいました。

(5)沖縄県廃棄物処理計画の悲劇

平成23年に沖縄県は第三期廃棄物処理計画を策定しています。しかし、その計画は溶融炉の整備を推進して最終処分場の延命化を図る計画であるため、県としては組合に対して溶融炉を休止又は廃止するための技術的援助を行うことができない状況になってしまいました。なぜなら、県の職員が県の計画に従わずに組合に対して指導や助言等を与えると地方公務員法違反になるからです。

(6)インフラ長寿命化基本計画の悲劇

組合が溶融炉を整備した頃は、供用開始から15年程度で更新を行うことができる時代でした。ところが、平成25年に国はインフラ長寿命化基本計画を決定したため、更新を行う前に長寿命化を行わなければならないことになりました。このため、組合は運転経費が高くても焼却灰の溶融処理を止めるに止められない状況になってしまいました。

(7)会計検査院の意見表示の悲劇

そのような状況の中で組合は平成26年度から溶融炉を休止することを決めました。その理由は他の自治体においても運転経費が高いという理由で休止しているところがたくさんあったからだと思われます。しかし、組合が溶融炉を休止した半年後に会計検査院が休止を不適切とする意見表示を行いました。これにより、溶融炉を1年以上休止することはできなくなってまいました。また、溶融炉を再稼動した場合であっても溶融スラグの利用を行わない場合は国から補助金の返還を求められることになってしまいました。

以上が、組合の「悲劇」の概要ですが、一言で言えば組合は溶融炉の整備を決定したときから「踏んだり蹴ったり」の状況が続いていることになります。

このブログの管理者は沖縄県において組合の人口1人当りのごみ処理費が突出して高いのは、整備した溶融炉を我慢をしながら使い続けてきたからだと考えています。その証拠に、組合のごみ処理費は溶融炉を整備した年から異常に高くなっています。

ごみ処理費は人口が少ない自治体ほど高くなる傾向がありますが、溶融炉を整備した場合はその特徴が顕著に現れるようです。

昨年の9月に会計検査院の意見表示があったことから、組合は休止している溶融炉を再稼動する予定でいるようですが、このブログの管理者は組合の人口と溶融炉の機種を考えた場合、再稼動は新たな悲劇を生むことになると考えています。したがって、再稼動に当っては専門家や有識者等を交えて議会と一体となって慎重に議論を重ねる必要があると考えます。

組合が溶融炉を再稼動すれば国内では前例のない長寿命化を行うことになります。しかし、組合が溶融炉を整備したときから溶融炉の時代は終わっています。このブログの管理者は諸々の状況から判断して再稼動はギャンブルになると考えています。

※組合のごみ処理施設は既に長寿命化の時期を迎えているので、組合が溶融炉を再稼動する場合は、再稼動の前に長寿命化計画を策定して中長期的なコストの見通しを住民に明示する必要があると考えます。なぜなら、再稼動した場合はこれまでよりも更にごみ処理費が高くなる可能性があるからです。

沖縄(本島)におけるごみ処理費のランキング

中城村北中城村清掃事務組合のごみ処理費の比較(溶融炉の有無の違い)



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