沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

浦添市と中北組合の広域処理を考える(予告編4)

2015-12-29 11:03:10 | ごみ処理計画

浦添市と中北組合の広域処理に関する予告編の1~3をフローにしてみました。

広域処理を行うための基本的な条件は次のようになります。

(1)広域施設の整備に当って国の補助金を利用する。

(2)国の補助金を利用するためには1市2村が共同で廃棄物処理法の基本方針に適合する地域計画を策定する必要がある。

(3)1市2村が共同で策定する地域計画と1市2村のごみ処理計画は整合性を確保しなければならない。

(4)中北組合は平成26年3月に改正したごみ処理計画を見直す必要がある。

(5)中北組合は溶融炉を再稼動して焼却炉と一緒に長寿命化を行い10年以上稼動しなければならない。

(6)中北組合のために広域処理のスケジュールが遅れることになるので浦添市は既存の施設の老朽化対策を行わなければならない。

 

原寸大の資料(画像をクリック)

 

このように、浦添市は中北組合が廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理を行っているために、広域処理を行う場合はスケジュールが大幅に遅れることになります。また、老朽化対策に余分な費用がかかることになります。

しかも、中北組合には次のような課題が残っています。

(7)国内では稼動している事例のない(長寿命化が行われた事例もない)溶融炉を再稼動して長寿命化を行う必要がある。

(8)溶融炉の長寿命化が困難な場合は国の補助金を利用することができなくなるので広域処理が「白紙撤回」になる。

(9)溶融炉を長寿命化する場合は前例がない事業になるので事業費がメーカー側の「言い値」になる。

(10)スケジュールのロスをなくすために長寿命化した溶融炉を休止せずに継続して10年以上稼動しなければならない。

(11)事故や故障等で溶融炉が長期間停止した場合はスケジュールが大幅に遅れることになり浦添市の老朽化対策費が増加する。

(12)ごみ処理計画を見直す時期や溶融炉の長寿命化を行う時期が遅れるとスケジュールは更に遅れることになる。

(13)万が一、事故や故障等で溶融炉の稼動が困難になった場合は自主財源により新たな溶融炉を整備しなければならない。

(14)塩分濃度の高い流動床炉の焼却灰(飛灰)を単独で処理する溶融炉は水蒸気爆発のリスクが高い。

このように、浦添市と中北組合の広域処理については、1市2村においてかなりリスクの高いごみ処理計画になります。

ちなみに、広域処理が「白紙撤回」になっても浦添市の場合は既に焼却炉と溶融炉の長寿命化を行っているので国の補助金を利用して予定通りごみ処理施設を更新(単独更新)することができます。しかし、中北組合の場合は次のような事態になります。

(15)溶融炉の長寿命化が困難な場合は再稼動する意味がなくなる。

(16)溶融炉の長寿命化が困難な場合は廃止することになるので溶融炉のために増築した建物部分の補助金を返還しなければならない。

(17)溶融炉の長寿命化が困難な場合は自主財源により焼却炉の老朽化対策を行うことになる。

(18)溶融炉の長寿命化が困難な場合は自主財源により焼却炉の更新(単独更新)を行うことになる。

なお、このブログの管理者は中北組合の溶融炉は再稼動した場合であっても長寿命化を行うことは困難であると考えています。また、長寿命化を行うことができたとしても10年以上安定して稼動して行くことは困難であると考えています。

※中北組合の溶融炉の長寿命化が困難な場合であっても、廃棄物処理法の基本方針に従って「代替措置」を講じれば再稼動を回避することができます。そして、国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことができます。そうなれば1市2村のリスクはかなり低くなりますが、その「代替措置」については年が明けてから書くことにします。


浦添市と中北組合の広域処理を考える(予告編3)

2015-12-26 11:15:12 | ごみ処理計画

浦添市の公式サイトに12月定例議会の録画がアップされていました。中北組合との広域処理に関する当局の答弁(1:37頃)は平成29年度に中城村と北中城村と協議会を設立する「予定」という答弁でした。

そこで、今日は広域処理に対する浦添市のリスクを考えてみることにします。なお、広域施設は現在の浦添市の施設の隣に整備する予定(中北組合の施設は広域施設が完成したときに廃止する予定)になっています。

浦添市12月定例議会録画(又吉健太郎議員一般質問)

<参考資料>

廃棄物処理基本方針

廃棄物処理施設は、今後、維持管理や更新に係るコストが増大することが見込まれ、かつ、機能面で社会の要請に応えられなくなっていることが懸念される。厳しい財政状況の中で、コスト縮減を図りつつ、必要な廃棄物処理施設を徹底的に活用していくため、いわゆるストックマネジメントの手法を導入し、廃棄物処理施設の計画的かつ効率的な維持管理や更新を推進し、施設の長寿命化・延命化を図る。

循環型社会形成推進交付金Q&A集(環境省)

No1Q:地域計画とはどのようなものか。

No1A:地域計画とは、市町村が循環型社会形成の推進を図るため、廃棄物処理法第5条の2に規定する基本方針に沿って作成するものであり、この計画に基づく施設整備事業に対して循環型社会形成推進交付金が交付される。

No4Q:計画対象地域内の一部の市町村が施設整備を行う予定がない場合、当該市町村は、地域計画の作成者に含まれないのか。

No4A:施設整備を行わない市町村であっても、計画作成者として目標設定に関わり、これを達成するための発生抑制、再生利用等のための各種施策を行うこととなる。

廃棄物処理施設長寿命化Q&A集(環境省)

4頁Q:交付要件において、施設竣工後の経過年数による制限はあるのか。 また、改良後において、何年以上延命化を図らなければならないといった条件はあるのか。

4頁A: 築25年未満の施設については、基幹的設備改良事業後10年以上施設を稼働する こと。

<浦添市のリスク>

(1)中北組合が休止している溶融炉を再稼動して長寿命化を行わない場合は、自主財源により広域施設を整備することになる。

解説:広域処理を行う1市2村が国の補助金を利用して広域施設の整備を行う場合は、事前に国の基本方針に適合する「地域計画」を策定しなければなりません。しかし、中北組合が休止している溶融炉を再稼動して長寿命化を行っていない場合は、国の基本方針に適合しないごみ処理を行っていることになり、国が補助金の交付の要件としている「地域計画」を策定することができないことになります。

(2)中北組合が溶融炉を再稼動して長寿命化を行った場合であっても、そこから10年以上は既存の施設を利用しなければならない。

解説:市町村が国の基本方針に従って焼却施設の長寿命化を行った場合は、そこから10年以上は稼動しなければならない(新しい施設は整備できない)ことになっています。したがって、浦添市としては長寿命化した中北組合の焼却施設が10年を経過するまで待たなければならないことになるので、これから広域施設が完成するまでの15年間くらい(平成29年度に協議会を設立して平成30年度に「地域計画」を策定して平成31年度に長寿命化を行った場合)は老朽化対策を行いながら既存の施設を利用して行くことになります。ちなみに、浦添市の焼却施設は平成24年頃に長寿命化を行っているので、15年後には長寿命化から約18年を経過していることになります。

(3)中北組合の溶融炉が事故や故障等により停止した場合は広域計画が遅れることになる。

解説:溶融炉の経過年数は稼働率100%を前提にしているので、事故や故障等によって一時的に停止するとその分だけ経過年数をクリアする期間が長くなります。 仮に稼働率が70%程度であった場合は経過年数(実際に溶融炉を稼動していた年数)の10年をクリアするまで約15年を要することになるので、広域計画は更に5年遅れることになります。ちなみに、中北組合の溶融炉は他の溶融炉に比べると事故や故障等のリスクが高い特殊な溶融炉(塩分濃度の高い流動床炉の飛灰を単独で処理する燃料式の溶融炉)なので、稼働率100%で10年間無事に利用して行くためには、極めて高度な管理体制を確保する必要があります。

以上により、中北組合が溶融炉を再稼動して焼却炉と一緒に長寿命化を行わない場合は、広域施設の整備に当って浦添市も国の補助金を利用することができなくなるので、広域計画は「白紙撤回」になると考えます。また、中北組合が長寿命化を行った場合であっても浦添市において既存のごみ処理施設の老朽化対策に多大な予算が必要になる場合も「白紙撤回」になると考えます。もちろん、中北組合が溶融炉を再稼動したのに長寿命化ができなかった場合も「白紙撤回」になると考えます。

休止(廃止)している溶融炉の再稼動と長寿命化を考える(2)


浦添市と中北組合の広域処理を考える(予告編2)

2015-12-22 12:54:51 | ごみ処理計画

注:国の基本方針においては、「市町村は地域ごとに必要となる最終処分場を整備すること」そして「国の財政が逼迫していることから設備については長寿命化を行うこと」としていますが、中北組合は最終処分場の整備を行わずに平成26年度から溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っています。また、焼却炉の長寿命化も行っていません。このため、中北組合のごみ処理計画は国の基本方針に適合しない(国の補助金を利用できない)ごみ処理計画になっています。

<参考資料>

地域計画作成マニュアル(環境省)

2頁:地域計画は廃棄物処理法に基づく基本方針に適合している必要がある。

18頁:地域計画で記述した今後の処理体制等と、廃棄物処理法に基づき市町村が作成する一般廃棄物処理計画に記載されたごみ及び生活排水の処理に関する処理体制等の基本的事項とは整合性が図られている必要があるため、必要に応じて一般廃棄物処理計画の修正を行うこととする。

昨日の記事に書いた浦添市と中北組合の広域処理に関するスケジュールをグラフにしました。

下の画像をご覧下さい。 

原寸大の原稿(画像をクリック)

沖縄タイムスの記事には、広域処理のスケジュールは浦添市が考えているスケジュールとして書かれていましたが、グラフにすると画像の上のようになります。

ただし、これは中北組合が浦添市と同じように国の基本方針に従って焼却炉と溶融炉の長寿命化を行っている場合のグラフになります。しかし、中北組合は長寿命化を行う前に溶融炉を休止しています。そして焼却炉の長寿命化も行っていません。

そうなると、広域処理を行う場合に1市2村で「地域計画」を策定するときに、中北組合は浦添市と同様のごみ処理計画を策定して実施していなければならないことになります。なぜなら、「地域計画」は国の基本方針に適合していなければならないからです。

したがって、中北組合が考えているスケジュールは、画像の下のグラフのようになります。

ちなみに、浦添市の溶融炉は平成14年、中北組合の溶融炉は平成15年に整備しています。

ごみ処理施設の長寿命化を行った場合は10年間は更新することができないことになっていますが、浦添市は平成24年頃に長寿命化を行っているので広域施設を整備するときは10年を経過していることになります。

しかし、国の基本方針に適合した「地域計画」を策定するために中北組合が溶融炉を再稼動して長寿命化を行うと、浦添市が考えているスケジュールが大幅に遅れることになり、その間、浦添市は長寿命化した焼却炉と溶融炉の老朽化対策を行うことになります。しかも、浦添市のごみ処理施設の建物は昭和時代に建設したものなので、広域処理のスケジュールが遅れると建物の老朽化対策も必要になります。

一方、中北組合の建物は平成15年に建設したものなので多少スケジュールが遅れてもまったく問題はありません。

このように、浦添市と中北組合の広域処理については、中北組合が国の基本方針に適合しないごみ処理を行っていることで、浦添市の思い通りには進まない状況になっています。

ところで、もしも国が浦添市が考えているスケジュールに従って補助金を交付した場合はどうなるか?

その場合は、国が国の基本方針に適合しない「ごみ処理計画」や「地域計画」を策定している市町村に対して国の補助金を交付したことになるので、国の基本方針に従う市町村がいなくなってしまいます。

※中北組合が国の補助金を利用して広域処理を行う場合は、組合がごみ処理のために国の補助金を利用して建設した建物を処分制限期間(50年)を経過する前に新しい建物に建て替えることになるので、先に建物部分の建設に利用した補助金の半分くらいを返還することになります。なぜなら、中北組合が補助金を返還しないと国は中北組合に対して過大に補助金を交付することになるからです。


浦添市と中北組合の広域処理を考える(予告編1)

2015-12-22 10:15:00 | ごみ処理計画

時間ができたので、沖縄タイムスの記事に書いてあった浦添市の計画に基づいて浦添市と中城村北中城村清掃事務組合(以下「中北組合」という)の広域処理について考えてみます。

浦添市は3年後くらいに1市2村で「地域計画」を策定して、10年後くらいに広域処理をスタートする定でいるようです。

「地域計画」というのは、広域施設の整備に当って国の補助金を利用するために策定する計画で、この計画は1市2村の「ごみ処理計画」に基づいて国や県と協議を行いながら策定することになっています。

ただし、「地域計画」や「ごみ処理計画」は国の基本方針に適合していなければなりません。

ところが、中北組合の「ごみ処理計画」はこのブログで何度も書いているように、国の基本方針に適合していません。

そうなる、どうなるか?・・・ここからが「予告編」になります。

中北組合は、まず「地域計画」を策定する前に「ごみ処理計画」を国の基本方針に適合するように見直すことになります。その場合、中北組合は休止している溶融炉を再稼動することになります。そして、国の基本方針に従って長寿命化を行うことになります。

しかし、長寿命化を行うと国の規定によって10年は廃止できないことになります。

ということは、浦添市は中北組合が溶融炉を廃止できるようになるまで待たされることになります。

「地域計画」を策定するのは3年後ですから、それから長寿命化を行って10年待つとなると、広域計画は少なくとも5年は遅れることになります。

しかも、中北組合の溶融炉は国内では稼動している事例のない(長寿命化が行われた事例もない)極めて特殊な溶融炉ですから、長寿命化ができない可能性もあります。また、強引に長寿命化した場合は事故や故障等により度々停止することになり、10年を経過しても廃止できない可能性があります。なぜなら、停止している期間は経過年数には含まれないからです。

したがって、浦添市が考えている広域計画の予定は最低でも5年は遅れることになります。

なお、中北組合が浦添市の計画に合わせるために、溶融炉を休止したまま焼却炉の長寿命化も行わなかった場合はどうなるか?

国の基本方針に適合する「地域計画」を策定することができないので、浦添市も国の補助金を利用することができなくなります。

以上が、「予告編」です。

※浦添市は焼却炉と溶融炉を既に長寿命化しているので、広域計画によってかなりのスケールメリットが得られなければ待つ理由はないことになりますが、中北組合と広域処理を行っても処理人口はあまり増えないので、待つほどのメリットはない(逆に既存のごみ処理施設の老朽化対策が必要になるので財政負担が大きくなる)と考えます。

<参考資料>

地域計画作成マニュアル(環境省)

2頁:地域計画は廃棄物処理法に基づく基本方針に適合している必要がある。

18頁:地域計画で記述した今後の処理体制等と、廃棄物処理法に基づき市町村が作成する一般廃棄物処理計画に記載されたごみ及び生活排水の処理に関する処理体制等の基本的事項とは整合性が図られている必要があるため、必要に応じて一般廃棄物処理計画の修正を行うこととする。


読者の皆様へ

2015-12-20 13:27:59 | ごみ処理計画

このブログの管理者の今の最大の関心事である中城村北中城村清掃事務組合と浦添市との広域処理について、北中城村の12月定例議会において村のA議員から当局に対して一般質問が行われています。

質問を行ったA議員はブログを開設しているので、近日中に一般質問に対する当局の答弁について報告があると思います。

それまでは、ブログの更新を休止することにしました。ちなみに、北中城村の12月定例議会は22日までの予定です。