デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

■□入賞句/10月30日~11月5日

2006-10-31 10:32:56 | Weblog
■□週間最優秀
★次々と白鳥渡る金環へ/丸山草子
金環は、太陽のことだが、白鳥と金環とが、非常に美しい光景をなしている。

■優秀/高橋正子選
●11月5日(日)
★山道を上れば強き月明かり/池田多津子
山道を上ってゆけば、不思議にも月の光は強く鋭く、明るくなる。山はそれだけ空気が澄み、冷ややかであるせいかもしれない。「強き月明かり」に、曇りなくかがやく満月が想像できる。

★花八手小さき虫の生き生きと/阿部 昭
★干し堀の濃き流木や秋深し/國武光雄

●11月4日(土)
★次々と白鳥渡る金環へ/丸山草子
金環は、太陽のことだが、白鳥と金環とが、非常に美しい光景をなしている。

★柿一樹むくどり遊ばせて静か/あみもとひろこ
★秋惜しむインパチェンスの白き庭/安丸てつじ

●11月3日(金)
★真っ直ぐな杉に真っ直ぐ蔦紅葉/黒谷光子
杉の幹は、真っ直ぐで、幹を覆う皮も縦に割れ目があって、蔦紅葉は、それを伝うように真っ直ぐ伸びる。当たり前のようで、面白い。杉を上る蔦紅葉が日本画のよう。

★落葉降る此の道尽きて美術館/大山凉
★鴨の来て水脈のひかりの中にいる/志賀たいじ

●11月2日(木)
★日を受けて太陽の搭秋惜しむ/堀佐夜子
岡本太郎作の太陽の塔ですが、夏の天真爛漫な印象から、今は、秋を惜しむかのように、まろやかな日を吸い込んでいます。「秋惜しむ」のは作者自身でもあるのです。

★冬近き深耕の土くろぐろと/志賀たいじ
★実南天たわわに窓の日のほてり/野田ゆたか

●11月1日(水)
★軒先に鳴く鳥ふえて冬支度/甲斐ひさこ
秋も終りころになると、木の実を求めて庭などによく来るようになります。そんな小鳥の声を聞きながら、一つ一つ冬支度が進んでゆく楽しさがある句ですね。

★絹雲をさりげなく過ぎ鳥渡る/かわなますみ
★行く秋の空の高さへ坂上る/あみもとひろこ(添削)

●10月31日(火)
★くきやかに朝露ころがるキャベツ苗/あみもとひろこ
しっかりと結んだ露の透明感、冷涼さが出た句。「くきやか」は文語で、鮮明であり、はっきりしている様子。

★鶏頭の赤を真中に仏花なる/臼井虹玉
★笹の葉を選びて漬けり鮭の寿し/志賀たいじ

●10月30日(月)
★露けしや種待つ畝の長四角/今村七栄
耕され、清潔な畝が作られ、秋種を蒔く準備がすっかり調っている。 露けさをいっそう感じるとき。

★構内を夜ひそやかに銀杏降る/池田加代子
★今はただ落つるに徹す秋の滝/志賀たいじ

■□入賞句/10月23日~10月29日

2006-10-25 00:55:37 | Weblog
■□週間最優秀/高橋正子選
★色の見ゆほどに近づき鴨来る/祝恵子
鴨の色は遠くでは、ただ黒っぽい色としか見えないが、近くに来ると、鴨のいちいちの羽の色がわかる。秋には秋深む色合いを見せてくれる。

■優秀/高橋正子選
●10月29日(日)
★黄落の空気を肺に思い切り/小西 宏
句にあるのは、黄落の季節の空気だけで、それを思い切り肺に吸い込んだということ。その単純さに、凛とした空気、土地の広さ、そこに立つ背筋を伸ばした人の姿などが、集約されている。

●10月28日(土)
★色の見ゆほどに近づき鴨来る/祝恵子
鴨の色は遠くでは、ただ黒っぽい色としか見えないが、近くに来ると、鴨のいちいちの羽の色がわかる。秋には秋深む色合いを見せてくれる。

★木々の実の落ちる日ころの空の色/大給圭泉
★敷き詰めし黄葉(もみじ)あかるき雨の森/小西宏

●10月27日(金)
★団栗の落ちて細きやまんまるや/池田加代子
団栗はくぬぎの実のことだが、こまかくは、それぞれの木にそれぞれの形の実がなる。細いものやまんまるなのがあって、楽しいものである。それを見つけた作者のたのしい驚きがある。

★草叢の露凛々と薄みどり/大山凉(添削)
★プラタナス日ごと色褪せ冬近し/飯島治蝶

●10月26日(木)
★秋冷を久しくふれぬ鍵盤に/かわなますみ
長く触れなかった鍵盤に秋冷はあった。秋冷が現実深く感じ取られている。触れられた鍵盤は今踊りだそうとしているようにも受け止められる。

★それぞれの音囁きて木の実降る/大山凉
★日は雲に影無き秋の道白し/あみもとひろこ

●10月25日(水)
★層々の蒼き高さに鳥来る/中村光声
それぞれの小鳥が飛ぶ高さは違っている。いろんな小鳥が来てくれた晴れやかな喜びが「層々の蒼き高さ」に感じ取れる。

★せせらぎの清きに鴨の来て群れし/小川美和
★花野刈って地の凹凸の露わなり/おおにしひろし

●10月24日(火)
★声たてて夜雨の川に鴨来る/甲斐ひさこ
鴨が川に来たことが、声によって知れる。夜雨の川が、渡ってきた野生の鴨を迎えるのにふさわしい。

★外に出れば菊鮮やかに雨の朝/丸山草子(添削)
★車椅子鋪道の冷気吸い込みし/堀佐夜子

●10月23日(月)
★軒影に吊る赤い赤い唐辛子/おおにしひろし(添削)
唐辛子の赤い色は、暗くなりがちな晩秋の軒を明るくしてくれる。色といい形といい魅力がある。「赤い」の繰り返しによるリズムの楽しさは、作者の心の楽しさ。

★どの軒も大根干しあり路地の風/志賀たいじ
★木炭の素描に更ける秋夜かな/小河原銑二

■□入賞句/10月16日~10月22日

2006-10-16 22:59:27 | Weblog
■□週間最優秀
 
★散る葉あり岩をひびかす秋の風/大給圭泉
秋風が吹き、木々の葉が岩へと散ってゆく。そういう景色のなかに、耳に聞こえる岩をひびかす秋風の音。「岩をひびかす」が効いて、真に迫る句となった。
 
■優秀/高橋正子選

●10月22日(日)
★晩秋の海匂いつつ暮れにけり/吉田 晃
核心を衝いた句。岸壁にでも佇んでいるのだろう。晩い秋の海が
暮れるとき、海の匂いが濃く漂う。
★宵寒の予報に雪初む朝かも/志賀たいじ
★落日の翳り濃くして花野冷ゆ/おおにしひろし

●10月21日(土)
★残る虫時を追い越すすべ知らず/多田有花
つづれ鳴く残る虫の声に、「時を追い越すすべ知らず」と感じ取
ったことの素晴らしさ。時のながれの通りに生きて鳴く虫をあわれとも、したたかとも思う。

★朝顔の蔓引き寄せて種を採る/堀佐夜子
★釣瓶落としにかくれんぼうの声響き/小河原銑二

●10月20日(金)
★海鳥の波のままなる秋の海/丸山草子(添削)
秋の海は晴れれば、ほどほどの波がある。海鳥も波に身を任せて
揺れる。身を任せられるほどの波はやはり秋の海のもの。

★上潮の川溯る夜霧かな/篠木睦
★黄落は草田男の句碑あたりまで/おおにしひろし

●10月19日(木)
★散る葉あり岩をひびかす秋の風/大給圭泉(添削)
秋風が吹き、木々の葉が岩へと散ってゆく。そういう景色のなか
に、耳に聞こえる岩をひびかす秋風の音。「岩をひびかす」が効いて、真に迫る句となった。

★椎の実を拾い手にする少年記/飯島治蝶 
★この街の釣瓶落しに電光板/堀佐夜子

●10月18日(水)
★赤い羽根紺の背広を華やがす/高橋秀之
紺の背広に赤い羽根をつけると、ぱっと華やぐ。募金をした後の心
もさわやかで、そんな様子が知れる句。

★街裏の刈田一枚見て帰る/甲斐ひさこ
★竹を伐り光斜めに流れける/大山 凉(添削)
 
●10月17日(火)
★刈り稲の残れる青の枯れゆけり/吉田 晃
刈り取った稲には、まだ青さが残っている。刈り取られてから、ゆっくりと青が消えてゆく。青が枯れていくに鋭い目がある。

★銀漢の斜めに傾ぐ拉薩の街/中村光声
★能笛の秋夜の杜へ風と消ゆ/黒谷光子

●10月16日(月)
★朝の鵙軒端掠めてバス往けり/かつらたろう
昔からの道筋には、みんなが生活をしている。狭い道を軒端すれすれにバスが通る。晴れた日、鵙が鳴いて、バスはお客を連れてどこへゆ
くのだろう。小津作品の映画にあるような温かみがある。
 
★うっすらと煙れるところ薄野は/臼井虹玉
★爽やかや句も浮かばずに風の中/小西宏

■□入賞句/10月9日~10月15日

2006-10-10 09:34:24 | Weblog

■□週間最優秀
★稲架高し天に向かって稲干せば/吉田 晃
澄んだ青空に、稲架が高々とある農村地帯の豊作のよろこびが伝わる、晴れ晴れとした句だ。
 
■優秀/高橋正子選
●10月15日(日)
★画用紙に向きさまざまの秋桜/池田多津子
子どもたちは画用紙に、思い思いにコスモスを描いている。コスモ
スに触れて、子どもたちはのびのびとしている。

★爽やかな薩摩切子のグラス買う/大山凉
★ひつじ田を渡りし祭囃子かな/多田有花
 
●10月14日(土)
★松手入れ庭師只管松葉零す/小川美和 (添削)
松を手入れする庭師は、淡々と作業をすすめていく。眺めていると
、ひたすら松葉をちらちらと落としているだけのようにみえる。着目がいい。
 
★青空に軽やかにあり秋桜/國武 光雄
★触れるもの風のほかなく花芒/志賀たいじ

●10月13日(金)
★揖保川はなみなみ流れ赤蜻蛉/あみもとひろこ
揖保川は兵庫県龍野市を流れる川。龍野市は「赤とんぼ」の作詞で
有名な三木露風の生地ということである。なみなみと流れる川に赤とんぼが飛び交い、いい風景を見せてくれ、内面に伝わってくるものがある。赤とんぼの歌と重ねるとまた、味わいが広がる。因みに「赤とんぼ」は北海道のトラピストで、少年時代を思い起こして作詞したと言われている。
 
★草刈ってオンブバッタの行く先は/おおにしひろし
★暮れはじむ野の遠近に泡立草/小川美和

●10月12日(木)
★玲瓏の朝たまわりぬ新松子/安丸てつじ
新松子は「しんちぢり」と読み、青松かさのこと。青く晴れた珠のような空の広がる朝は、「玲瓏の朝」と呼びたい。そこに青い松かさが目に留まり、すがすがしく澄明な気持になった。
 
★吾が窓に富士近づきぬ秋の朝/かわなますみ
★酔芙蓉今朝純白に咲きにけり/國武光雄
 
●10月11日(水)
★陽の乏しき薮に色濃き通草あり/甲斐ひさこ(添削)
「陽の乏しき」は、通草(あけび)に相応しいところといえる。薮な
どでは、人目にはつきにくいが、一旦目に留まると、はっきりと通草の濃い色が印象付けられる。それぞれの対象が微妙な関係をもって詠まれている。
 
★オカリナを吹く月光の外階段/池田加代子
★稲乾く一日山の陽の下に/吉田 晃(添削)
 
●10月10日(火)
★月光に蕾綻ぶ杜鵑草/渋谷洋介
杜鵑草の紫の斑点のある花は、お茶事の花としても使われる趣のあ
る花である。月光を浴びた杜鵑草は、いっそう露けく、情趣を深めている。
 
★ひとときの万朶に露の輝ける/志賀たいじ
★ほっこりとすすきの原の日溜まりに/丸山草子

●10月9日(月)
★稲架高し天に向かって稲干せば/吉田 晃
澄んだ青空に稲架が高々とある農村地帯の豊作のよろこびが伝わる。
 
★秋蝶の小さき黄なるは日向中/かつらたろう
★ずっしりと南瓜に引力生れけり/志賀たいじ

■□入賞句/10月2日~10月8日

2006-10-03 00:28:29 | Weblog
■□週間最優秀
★白と聞き青き蕾の小菊買う/甲斐ひさこ

まだ、色を覗かせていない蕾の菊。青といっていいほど固い蕾だが、白い菊と聞いて買われた菊は清楚である。もとの句は「訊く」が使われているが、その字を使うなら、「白かと訊き」とすべきだろう。これでは、俳句の基本の写生から離れることになる。尋ねた結果「白と聞いて」の部分を表せば、十分で、経緯も十分表せる。


■優秀/高橋正子選
●10月8日(日)
★灯台へ満月の波届きたり/澤井渥
満月の波は、たゆたって、灯台の足元へと届いた。満月の波と灯台の取り合わせのみだが、状景がゆたかである。

★草すべて向きを揃えて秋の風/野仁志水音
★秋茄子の漬け色蒼し朝の卓/丸山草子

●10月7日(土)
★白と聞き青き蕾の小菊買う/甲斐ひさこ
まだ、色を覗かせていない蕾の菊。青といっていいほど固い蕾だが、白い菊と聞いて買われた菊は清楚である。もとの句は「訊く」が使われているが、その字を使うなら、「白かと訊き」とすべきだろう。これでは、俳句の基本の写生から離れることになる。尋ねた結果「白と聞いて」の部分を表せば、十分で、経緯も十分表せる。

★撫子の臥して咲きおり雨上がり/丸山草子
★教室の壁に児童の秋の詩(うた)/飯島治蝶

●10月6日(金)
★白樺に霧の触れ合う響きかな/小口泰與
白樺林に霧がたちこめ、霧をまとった梢が小さく揺れて、それが、霧が触れ合う音に聞こえるのでしょう。幻想的な風景です。

★露の置く葉にゆるぎなき蝉の殻/あみもとひろこ
★秋晴れにリュックサックの軽き朝/中村光声

●10月5日(木)
★教室の青いバケツに花すすき/飯島治蝶
野外学習にでもでかけたのでしょうか。折りとってきたすすきを、青いプラスチック製のバケツにいれておいた。それはそれで、教室の花にふさわしいものになっている。教室にも秋晴れの野が持ち込まれたようだ。

★秋深しアメリカ国旗の揺れるバー/野仁志水音
★青蜜柑みどり黄みどり溢れくる /あみもとひろこ

●10月4日(水)
★秋蝶の風に包まれ青空へ/野仁志水音
儚げな秋の蝶。風がそっと救って包んで、青空へ連れてゆきました。「風に包まれ」に優しさがあり、透明感のある句です。

★水涸れし橋までつづく曼珠沙華/中村光声
★摘み来たる露けき草の匂い濃き/かわなますみ

●10月3日(火)
★秋澄みて残すひまわり高くあり/甲斐ひさこ (添削)
種を採るために残すひまわりは、一本ということが多い。残されたひまわりは、澄んだ秋空を背景に、その高さが印象付けられる。

★稲刈って川明らかにほとばしる/おおにしひろし
★降りしきる雨に打たれし蕎麦の花/飯島治蝶

●10月2日(月)
★宮の灯に祭り用意の影動く/吉田晃
お宮の灯をあかあかと灯して、近づく祭りの用意がされている。だれとも知れぬ人の動く影、祭の道具の影など、祭を楽しみにしている影が生き生きとしている。

★列車走る野の響くさへ秋の音/おおにしひろし
★秋耕の土の匂いの遠くより/多田有花

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