デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

2006年3月最優秀

2006-03-21 14:18:45 | Weblog
【最優秀/3月1日】
★子らの声空押し上げて卒業す/志賀たいじ
卒業のシーンもいろいろである。卒業する子らが、校庭に出て、エールを交換したり、胴上げしたり、未来へ羽ばたく勢いこそが若さである。「空押し上げて」という力と明るさに励まされる。(正子評)

【最優秀/3月2日】
★春光も水も弾きて鳥発ちぬ/かわなますみ
水にいる鳥が発つとき、羽ばたきに、弾け散るものは、春の光りと水。一瞬の春の光りは、輝き、あざやかな躍動となる。(正子評)

【最優秀/3月3日】
★夜べの雨からりと晴れて桃の花/野田ゆたか
夕べからの雨がからりとあがって、桃の花があかるく咲いてくれる。桃の花は、雨上がりに、翳りなく咲いて、あどけない少女のよう。(正子評)

【最優秀/3月4日】
★春禽の音階たかく青空に/志賀たいじ
「音階たかく」は、わざとらしくなく、そうだと頷かされる。春の鳥が、青空の高みに、声高く歌って、楽しい春がやってきたことを強く思う。(正子評)

【最優秀/3月5日】
★土筆野や少年野球始りぬ/安丸てつじ
土筆の生える野原で少年たちが野球を始めた。昔も今もかわらぬ光景に、元気であかるい少年たちが見える。 おおらかで、のどかな俳句。(正子評)

【最優秀/3月6日】
★初蝶に遇いたる午後の明るさよ/岩本康子
いい知らせの予兆のような初蝶に、たまたま遇った日の午後、明るさが目に眩しいほど。季節も初蝶を生んで、日差しは、春の初々しさに満ちている。思索的奥行きのある句。(正子評)

【最優秀/3月7日】
★梅明かり花菜明かりに峡をゆく/おおにしひろし
こちらの段畑には梅の花が、道沿いには花菜が咲いているな、と思いながら峡をゆく作者が見える。梅明かりも、花菜あかりも峡となればさびしさが感じられる。(正子評)

【最優秀/3月8日】
★初蝶の花の高さを離れざり/ふるたけいじ
初蝶が、花にまとわって、生まれてきたことの幸せに、ずっと飛んでいる姿が鮮やかに詠まれている。(正子評)

【最優秀/3月9日】
★ふきのとう流れはいつも清冽に/多田有花
ふきのとうに触れんばかりの流れ。ふきのとうのある辺りの流れは、清冽。「いつも」が生きている。(正子評)

【最優秀/3月10日】
★クロッカスきりりと光放ちおり/除門喜柊
クロッカスに「きりりと」は、不似合いなようだが、そうではない。土から出て、花を開くとき、汚れなく光をきりりと放ち、毅然としている。光りそのもののようなクロッカスの花が詠まれた。(正子評)

【最優秀/3月11日】
★花なづな白き花さき日々高し/碇 英一
なずなの白い花が目立つようになった。見つけてから日毎見ていると、なずなの丈がずんずんと伸びている。春たけなわのときも間もなく。清楚な句だが、「日々高し」に張りがある。(正子評)

【最優秀/3月12日】
★全山に花揺れやまず匂いけり/尾 弦
全山が花の山。その花が風を受けて、揺れ止まない。大きく揺れるときも、小さく揺れるときも、そこから花の匂いが漂ってくる。この季節の風の具合が全山の花をゆたかに動きのあるものにしている。(正子評)

■□3月13日~3月31日は、春休みです。