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中国人の離婚事件

2007-07-26 00:18:20 | 離婚
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1 最近は国際結婚が多くなったが、それにつれて離婚も多くなりました。
  弁護士のところでも、国際結婚の離婚を扱うことが増えています。

2 私の事務所では、韓国人の離婚は古くから扱っていましたが、韓国民法は、早 くから翻訳され、また解説本も日本語で手に入ったので、あまり特殊性はありま せんでした。

  ただ、子供の親権者については以前の韓国民法によると、封建的色彩が強かっ たため、必ず父親とされていたことで、問題となることはありましたが、その他 は、ほぼ日本民法と同じように取り扱えば済みました。今はこの点の問題はなく なり、あまり違和感なく、取り扱うことができます。

  但し、離婚判決や調停調書をもらった後の、韓国における戸籍への記載をどの ようにするかが、やや特殊です。しかし、日本にある大韓民国居留民団で手続き をすることができるので、そのことを知っていさえすれば大丈夫です。

3 最近、取り扱ったケースでは、中国人同士の離婚事件がありました。以前何件 か、日本人と中国人との離婚事件は裁判をしたことはありましたが、中国人同士 の離婚事件は初めてでした。

4 まず、日本国内の裁判所で調停や裁判ができるかが問題になりますが、結論を 言えば可能です。
  次の問題はどこの法律を適用するかですが、これは中国婚姻法になります。こ こでは離婚原因が日本と異なりますので注意が必要です。
  本件は、暴力や生活費を渡さない、夫が家を出てしまったという事情があった ので、離婚原因は中国婚姻法によってもありました。
  裁判所へ訴状を提出した際、夫は日本語を読むことができないため、中国語の 翻訳文を要求されることがあるため、これを用意しましたが、夫が中国に居住し ていないことから、最終的には中国語の翻訳文は提出しませんでした。

5 次に、日本民法によれば、このような裁判では、慰謝料請求と親権者の定め、 養育費の請求をします。
  しかし、日本の判決は中国国内では効力がなく、夫の中国国内での財産に対し て強制執行することができないことから、財産請求はしませんでした。
  また親権者という制度も、中国では用語が異なるため、裁判所では疑問がある としましたが、結局は判決で認めてくれました。

6 証人尋問、書証の提出は通常の事件と同じです。判決もこちらの期待通り出さ れました。
  
  しかし、この判決に基づき中国の離婚登記機関へ届け出するのには苦労しまし た。日本の中国大使館か領事館で受理してくれますが、判決に中国語の翻訳文を 付け、さらに判決正本の認証された部分の、裁判所の公印が確かに本物であるこ とを、日本の外務省で認証してもらわなければなりません。これもなかなか大変 でした。