露花便り

福山市の庭師のブログです。庭師の仕事や日々の生活の中からやさしさに包まれる出来事や気付きを綴っていきます。

「松」

2012-01-25 13:40:22 | 庭仕事
先日仕事で京都に言った際、急きょ予約が取れたので、桂離宮を参観しました。
ほんとうに、素晴らしい庭でした。
いろんな思いを感じ取りましたので、次回改めてブログで紹介したいと思います。

京都の松は美しかったです~~~

何の樹が一番好きですかと聞かれたら、迷わず「松」と答えます。
松は美しいです。
本当に美しい松は少なくなりましたが、後世に残すべき財産です。
ある方がロシア人のお金持ちが大金をかけて日本庭園をロシアに造らせたと
言ってました。松でも何でもお金で買えるということが言いたかったようですが、
その話を聞いたとき、すごく不快でした。
美しい松は何百年と生き続け、その間庭師が何代も何代も命を繋いで手入れをしてきたわけです。
ロシアの環境、土質に合わなければ絵に描いた餅。
素晴らしい庭師がこの先何代も続かなければ、松であっても松ではなくなってしまうのです。

私はその大きな歴史の流れの中のひとつの歯車になるために、庭師を志しました。
きっかけは、岡山県で千年生き続けている醍醐桜に出会ったことです。
醍醐桜は崖の上に堂々と立つ一本桜です。
この桜に合ったとき、ガーーンという衝撃を受け、同時に昔から現代まで生活する人々が走馬灯のように見えました。

それまで7年間園芸の世界でガーデナーとして生きてきましたが、日本に生まれ、
日本に育ったことを誇りに思いながらも、日本の文化や庭師の想いを何も感じ取れずに
仕事をしていたことを恥ずかしく思いました。
そこから造園専門校に行って庭師になり、今に至ります。
仕事として植物と関わりつづけて16年になりますが、これからも一生続けて行きたいと思います。

さっきテレビで由紀さおりさんが出られてて、「ご自分で何歌手だと思われますか?」との質問に、
「日本語を歌う歌手、言葉を歌う歌手です。」と答えられてました。
「日本語という母国語を歌っていきたい。先人が残した素晴らしい歌を歌って後世に紐解いていきたい。」そうです。

素晴らしいです。
英語の歌は歌わないとか、日本庭園しか造らないということではなくて、
ルーツを忘れず、大切にしていきたいという思いです。
根っこは「庭師」として生きたいです。


先日剪定した松。


何年も庭師が手を入れていないため、足が長く間延びしていました。
全ての芽に鋏を入れられてきたようですが、古い松は中芽を嫌います。
余分な体力を使いたくないので、下枝や細い枝、影になった枝に中芽を入れられると自分で枯らします。
先だけを摘む剪定では限界があるので、更新していくことが重要です。


剪定後


途中雨が激しくなり中断しましたが、一日と半で無事終了しました。
海風が強くなくてよかった



去年は100本ぐらいの松を剪定で触らせて頂きました。
松は全て性格が違います。
沼隈、福山の庭に植えられているのはほとんどが黒松ですが、
赤松の性を多く引き継いだやわらかい松もあります。
特に150年を超えた古い松は見惚れるほど美しい!
親方が鋏を入れた後、全神経を集中させて松と向き合います。

それぞれの性格もありますが、今の環境の中で必死に生きようとがんばっています。
松の個性を尊重しつつ、次の代に引き継いでもらえるよう力になりたいと思います。

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