虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

毒舌日本史(今東光/文春文庫)

2005年01月30日 | 
 今東光和尚様(1898~1977 この本の出た1972年当時中尊寺貫主)が博覧強記と雄弁で聞き手に池島信平を得て語りおろし、その速記録も今和尚自身が書き直したという。「悪名」原作者が迫力で語る日本史。

 年寄りのお話のひとつに講談ネタのような歴史のこぼれ話みたいなのがひょいひょい出てくるのは、今でもそうなんでしょうか?私が明治~大正生まれの親戚から聞いた話は、だいたい昔のチャンバラ時代劇の内容に一致するようなのとか、「道鏡、膝ではないか」(キャー、分かったらすいません)なんて話とか、けっこう庶民は言いたいこと言ってたんだなあ…など思っていたのでした。もちろん史実として教えてくれたのではなくて、笑い話のなかまみたいな感じで話してくれました。
 この本では、そういう中で聞いた話ががバンバン出てきて、おっかしかった。
「藤原家の先祖は不比等(鎌足じゃない)」
「後醍醐天皇はケチで暗君だった」
「義経と建礼門院のごにょごにょ…」
眉につばつけなくてはいけないかな~と思うものもございますけれど、仏教と日本の歴史の関わり方への見識など、なるほど、さすが、と思うところ大。
 それに人物や事件に対する見方もはっきりしていて、武士の台頭は奥州藤原氏がメインで平将門はスルー。鎌倉幕府が倒れる必然は棚上げで、建武親政瓦解からそこの話が始まったりして。平安時代が日本で唯一のサロン文化の時代というのは大賛成。
 文章も調子がよくてぐいぐい進めるようになっているし、語句解説もご本人によるもので、いつも間にか今和尚の史観に納得させられそうになります。適当な脱線あり、池島氏の冷静で適切な突っ込みあり、面白すぎるので、「やっぱりこれだけじゃいかん」とかえってブレーキがかかります。

 昭和当時の和尚の毒舌、というものの位置づけが今ひとつぴんと来ないけれど、言いたいことをはっきり言っていることは分かります。時代の空気も捉え切れないので共産党と日教組へのワルクチもインパクトのほどが察し切れないのが残念。

 2チャンネルの歴史板なんかでも、歴史オタ様たちのディープな会話が飛び交っていますが、ちょっとそれを連想しました。

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