橘玲・著『新版 お金持ちになれる黄金の羽の拾い方 ~知的人生設計のすすめ~』を読んだことは以前書いたが、いろいろ勉強になっている。
今回は、マイホームの購入について。
橘氏は「マイホームの購入は、不動産投資のひとつであり、株式の購入などと変わらない」としている。
橘氏は「家を買うことは、日本人の人生設計において特権的な地位を占め」ており、「そこに『家族の絆』のような特別な意味を見出すひとも」いるが、実際に「同じ家を所有しようが賃借しようが、使用価値に変わり」はなく、「家を所有すればそれだけで幸福度が増すというのは、かなり特殊な思想」だとしている。
経済合理性にとことんこだわる橘氏だが、「住宅ローンを組んで家を買うのは、地価が右肩上がりのときにのみ有効な戦略」で、「地価のさらなる下落を予想するのなら、賃貸のまま底値を待った方が有利に決まっている」と説明しており、それはその通りだと思った。
よく「その土地に住み続けどうせ家賃を払うなら、買ってしまった方がよい」と言うのを耳にするが、橘氏も指摘している通り、最終的に賃貸と持家のどちらが得かは、現時点では誰にもわからない。
マイホーム購入にあたっては、ほとんどの人が住宅ローンを組むが、土地・建物の物件価格以外にも、住宅ローンの金利や手数料、登記費用などを含む諸費用がかかったり、取得後も諸々の税金、修繕費用がかかってくる。
中でも、私が一番気になるのは「その土地を動けなくなる」点で、「いざという時は、不在の間貸せばいい」とか「売却してしまえばいい」と簡単に考える人がいるが、「家余り」が取りざたされている今、「賃貸」で借り手を見つけるというのはなかなか大変なことだし、住宅ローン返済中の「売却」においては、たとえばローンの残債が2500万円あった場合に土地と建物が2200万円でしか売れなければ、300万円は貯金を切り崩すなどして工面する必要が出てきてしまう。
不動産がリスク商品であることを強く実感する場面かもしれない。
長期の住宅ローンの支払いを無事払い終えることができれば、土地と古い家は残る。
その時の価格が、たとえ購入時の価格を大幅に下回ったとしても、それはリスクをとったからこそ獲得できた「資産」といえる。
橘氏はそれを「自由の代償」と表現しており、言いえて妙だと思った。
橘氏は「家を買うか買わないかは、経済的な選択ではなく、『自由』に対する考え方の違い」としているのだが、まったくもってその通りだと思う。
これからは、ますます生き方も多様化していくだろうから、『自由』を重んじる人も増えてきて、“一生賃貸”というのも普通のことになっていくだろうと想像する。
「賃貸」も、毎月の家賃に契約時の費用、更新料などがかかってくるが、その時々の生活や価値観に合わせた“場所、家賃、間取り”を自由に選ぶことができる。
また、修繕費用も基本的にはオーナーに負担してもらえるので気楽だ。
なにかが気に入らなければ、引越しをすればよい。
橘氏は、経済合理性と投資的観点からモノを考えているので、「使用価値」の内容にはせまらないが、あえて賃貸で「どうにかならないかな~」と私が思っていることがあるとすれば、「壁にクギが打てない」ということだ。
たいていの賃貸の家は、画鋲はOKだがクギはNGなど、いわゆるDIYができない。
しかし、DIYをして家を自分好みにできるかどうかは、生活の質を高め日々を楽しむ上でとても重要なことだ。ここがクリアできれば、「賃貸」は、さらに魅力的なものとなる。
たとえば、不動産検索サイト「アットホーム」によれば、「東京23区内」にあるワンルームは「35,962件」あれど、DIYができる部屋は「7件」しかない。0.001%だ。(2017/9/20時点)
このあたりの状況が変わってくれば、面白いのになぁと思う