社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

春秋 日本経済新聞

2014-12-28 07:27:52 | 日記
 NHK紅白歌合戦の第1回は1951年に開かれた。ホームページなどではそう解説している。しかし実はその6年前、終戦を迎えたその年の大みそかに、「第0回」にあたる生放送番組があったのだという。題名は「紅白音楽試合」。もちろんテレビなどない時代だ。
 社会学者の太田省一さんが昨年出版した「紅白歌合戦と日本人」で経緯を解説している。2人の若手局員が新しい時代にふさわしい音楽番組を考えろと命じられた。1人は素人のど自慢を企画し、今も続く。もう1人はプロ歌手の男女対抗歌合戦を思いついたが、GHQ(連合国軍総司令部)に企画書を却下されてしまう。
 合戦(battle)は軍国主義的だから、という理由だったそうだ。題を「試合」に変えようやく実現にこぎ着けた。優勝旗や選手宣誓など、からっとしたスポーツ番組のような演出は「歌合戦」時代も目立つ。そこには時代の希望があった。男女対等の戦いも米国式民主主義を伝える役割を果たしたと太田さんはみる。
 ヒット曲が減り、紅白の視聴率もかつてほどではない。作詞家のなかにし礼さんは近著で、戦争中のように全国民が知る歌などというものがある方がおかしく、今の方が健全だと説く。ただし「同時にそれは作品に力がないことも示す」とも。今年の紅白はテーマに全員参加で歌おうと掲げた。今の時代の希望を描けるか。

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