小指ほどの鉛筆

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5 殺されたくて、そういうことを言っているのか?(ゾルル→ゼロロ)

2007年10月08日 14時06分21秒 | ☆小説倉庫(↓達)
アサシンになることは目標じゃなかった。
それは確定していた未来だったから・・・。
トップに近づいてきても、嬉しくも無い。
だからと言って恐怖も無い。
目標を持って戦えと言われた時、俺に思いつくことといえばただ死なないようにすることくらいだった。
生きて会いたい人もいなかったが、それくらいしか存在意義が見つからなかった。


存在することに疑問を持つのに、時などあるだろうか??


「ゾルル。」
「ゼロロ、お、まえ・・・・」
任務の途中で自爆しようとしたとき、俺の腕を掴んだのはゼロロだった。
目の前の敵はすでに息をしていない。
「倒せる相手だ。そんな目立つ行為をする必要など無い。」
「・・・」
自害する機会を一つ逃してしまった。
だが俺はアサシン。
いつだって死ぬことが出来る。
ただの自殺ではプライドが傷つく。だから敵を倒しつつ、そっと自分も死ぬつもりだった。
けれどもいつの間にか時は過ぎ、アサシントップ競争まで生き延びてしまったのだ。
ここで自分がトップになってしまったら・・・そう思うだけで、舌を噛んで死んでしまえばどんなに楽かと考えた。
「・・・よろしくね。」
脱落者がどんどん出る中、残ったのは自分とゼロロだけ。
俺の始めの自殺を止めた、あの憎たらしいヤツだ。
・・・コイツとの因縁は深い。
幼年期の頃、ちょっとした関わりがあった。
しかしどうもコイツは・・・その辺の記憶が残っていないようなのだ。
「あぁ。」
二人が最後まで残ってしまったため、最終的な決戦は一騎打ちとなった。
『本気でやってくれたまえ。だが相手は殺すな。』
「了解。」
「了、解。」
そこで決戦は始まった。
途中ゾルルは何度も、自分から危ない攻撃をした。
それをゼロロが見逃すはずが無い。
必ず自分が負けるだろうと思っていた。
事故に見せかけて死んでしまおうと・・・。
「・・・」
しかし何度隙を与えても、ゼロロはスルーしてしまう。
気づいていないのか?いや、違う。こいつは本気で勝負をしていない俺を倒す気が無いのだ。
気づいたときには、もうゼロロの瞳は誰も映していなかった。
「・・・ゼロロ。」
問いかけてみるが返答が無い。
「ナゼ・・・勝負、をつけ・・・ない。」


「殺されたくて、そういうことを言っているのかな?」


ようやく発した言葉の主、その目は冷ややかな青だった。
思わず言葉を失う。
誰が今この瞬間に「そうだ」などといえるだろう。
死にたいと思った、のに・・・
今言葉を発したら殺されるという恐怖感が頭を支配した。
「・・・」
「答えられない?」
「・・・お前、に・・・殺されるくらい、なら・・・」
ナゼだか口が動いた。
凍りつくほどの殺気の中で、その言葉だけが発せられた。
「・・・僕に殺されるくらいなら?」
「・・・・・・・・倒す。」
まずはコイツを倒してからでも遅くは無い。
トップになる前に死ねばいいことだ。
コイツを倒し、トップとして全員に認められる前に死のう。
もうプライドなんて関係ない。
自分で舌を噛み切ろう。
「それでこそだよ。」
ゼロロが再び俺の姿を映し、攻撃態勢に入った。
本気の俺たちの戦いは実に2時間にわたった。
「・・・」
「・・・倒せなかったね。」
結果、あろうことか負けたのは俺のほうだった。
何が違うというのだ。
トップになりたかったわけではない。
けれどもゼロロにそれを譲るのも・・・どうも納得いかなかった。
「クソッ・・・。」
「・・・君、死にたいんでしょ?」
「!」
「自分の存在意義が分からないんでしょ?」
「貴、様」
読心鬼属を使ったのかと思った。
「心をよまなくったって、それくらいは分かる。」
倒れて動けない俺の隣に腰を下ろし、ゼロロは言った。
「ダメだよ・・・ここまで来たからには生きててもらう。死ぬなんてそんなの、卑怯だ。」
「なんだ、と?」
「僕を倒すまで、ゾルルには生きていてもらいたいんだよ。」
「何を・・・?」
何を言うのかとおもったら、意味不明のことを言い出した。
俺に生きていてもらいたい?
ナゼだ?
お前を倒すまで?どういうことだ??
「僕は必死に生きる。君は必死に僕を殺そうとでもすればいい。僕を殺してトップになったら・・・生きるも死ぬも君しだいだよ。」
「・・・・・・分かっ・・・た。」
コイツも同じなのか。
コイツも死にたかったのか。
だがそれが出来ない何らかの理由があるのだろう。
次のトップはコイツだ。
それなら俺は、どっちみちコイツに従うしかないのだ。
「付き、合ってやろう・・・。」
そう微笑んだ俺を見て、ゼロロもようやく微笑んだ。
「じゃあ・・・」
立ち上がるゼロロ。
俺はほとんど動くことができなかったが、ゼロロに支えてもらってようやく立ち上がった。
「上官、勝負はつきました。」
「・・・良いのか?」
ゾルルに向かってそう問う。
「あぁ。」
今コイツにナイフを刺したって、多分死にはしないだろう。
「そうか・・・一騎打ちで片方が死ななかったのなんて、どれくらいぶりなんだろうな。」
パソコンをカタカタと打ち、なにやら驚いてから再び俺たちを見た。
「・・・アサシンは一つの族みたいなものだ。ゼロロ、皆を上手くまとめるんだぞ。」
「はい。」
「ゾルル。」
「?」
「お前は今までで一番運のいいヤツかもしれない。」
「・・・」
嬉しくも無い言葉だ。
「だが、二人とも・・・トップ2の任務は厳しいぞ。」
「承知しております。」
「死ぬなよ。」
それは惜しむような、貴重なものを扱うような声音だった。
俺は死なない。
ゼロロを倒すまで、俺は死ねない。
だがコイツを倒すことなんて・・・俺には出来そうに無かった。

俺にもせめて大切なものがあったら、そうであればよかったのに。


そして時は過ぎ、俺には守るものが出来た。
その話は・・・まぁ、いずれするとしよう。
アイツはのほほんと生き、俺はふわふわと生きている。
いつかアイツが絶望して、俺に何か不満を述べてきたとしたら、こう言ってやろう。

「殺されたくて、そういうことを言っているのか?」

と。

たとえそれにうなづいたとしても、殺してやらないがな。


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