小指ほどの鉛筆

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10 それはお前さんが馬鹿だったって事だろうな。(幼少クルル)

2007年10月09日 18時14分32秒 | ☆小説倉庫(↓達)
薄暗い部屋の中に、まだ10歳と少しほどの少年がたたずんでいた。
ドアには鍵がかけられ、壁の一部はタイル張りになっている。
長いソファーと小さなテーブルがあるだけの、実にシンプルな・・・というよりは殺風景な部屋だった。
多少困惑した様子から見て、ここが少年の部屋でもないことが分かる。
「チッ・・・ほどけない・・・」
少年の両手はネクタイと思われる紐で縛られていた。
思いのほか固く結ばれていて、ほどく事が出来ない。
「よぅクルル~~」
クルルと呼ばれた少年が、突然に開いたドアに目を向ける。
中に入ってきたのは、クルルよりも年上であろう別の少年たち。手には鍵を握っている。
「大人しくしてたみたいじゃねぇか。」
先ほどの抵抗も知らず、数人の少年たちは薄笑いを浮かべて歩み寄ってきた。
短くなってゆく距離に、クルルは内心で舌打ちする。
ナゼこんなことになっているのだろう?

時間はしばらく前へと戻る。

クルルはいつも通り、両親の狂った愛情を見て溜息をついていた。
気を晴らそうとして外へ出たのが間違いだった。
父にはあまり外出しないようによく注意を受けていたのだが、理由も分かっていながらあえて散歩へと向かったのだ。
人目につかない裏道に入ったとたん後ろから目隠しをされ、つけていたネクタイで手を縛られた。
よってここが何所だか分からない。
目隠しをはずされてから周りの音や風景で何とか場所だけでも特定しようと試みたのだが、残念なことにサッパリ分からない。
しばらく待っているように言われ、ドアに鍵をかけられてからは1時間ほどそうしていた。
そして今に至る。

「おい、お前さぁ~~あの有名教授の息子なんだろ?」
「面白そうな薬とか機械があるんだよな~。」
「やっぱ、実験の手伝いとかするんだろ?使い方も分かるよな?」
クルルは、この少年たちが何を言いたいのかがはっきりと分かった。
要するに自分に、父が作った『面白そうなもの』を持って来いと言っているのだ。
「持ってきてくれるよな~~~?」
「・・・まぁ確かに父さんは『ヤバイ教授』で有名だし、『面白そうに』ヤバイ薬も作る。俺も『実験台になったことがある』し・・・別に不可能じゃないけど。」
イロイロと引っかかる言葉を含みながらクルルは、肯定と見られるような返事をした。
「マジで!?」
「でも持ってこれない。」
「は?」
少年たちの顔がとたんに恐ろしくなる。
「僕が扱えるような代物じゃない。もちろん君たちにも―」
そこまで言ったところで、少年の一人がクルルに掴みかかった。
「お前なんかすげームカつくんだけど・・・。」
「・・・年上相手にタメ口だしな。」
「じゃあ扱えるようなもん持ってくりゃいいだろ?」
「・・・それに常に父さんの監視下に置かれてるんだ。」
「お前アイツの息子だろ?ちょっと借りるくらい良いじゃねぇか。」
「息子??」
クルルが不愉快な顔をする。
「アイツの息子だなんて、考えただけでも吐き気がする。」
「はぁ~~???」
「何言ってんだお前?」
襟を掴んでいる少年の手を振り払うように回転して、クルルは抵抗した。
「あの科学者の息子だから僕を誘拐したんなら・・・放してくれない?僕はアイツと関わりたくないんだ。」
少年たちはぽかんとしていた。
「でもこのままあそこに帰らなくて良いのなら、それも良いんだけどね。」
「家出してきたのかよ?」
「それも良いかもって事。」
「お前親父が嫌いなのか?」
「他人だと思いたいね。」
「けど俺たち顔見られちゃってるしなぁ~~」
家に帰る気が無いのだと思った少年たちは、骨を鳴らしてクルルを見下ろした。
思い通りに出来ないのなら、せめて口封じのために痛い目を見せてやるつもりなのだ。
「何?4対1?しかも僕縛られてるのに。」
どうしても解けなかった両腕のネクタイを揺らす。
年上だからといって謙遜する気は無いし、暴力で口を閉じるつもりも無い。例え死んだからって恨むわけでもない。
けれども、それでもどこか卑怯な少年たちに何か言ってやりたかったのだ。
「文句あんのかよ。」
大有りだという前に、クルルはネクタイで縛られた手を引っ張られ、前につんのめった。
「自分の置かれてる状況分かってんのか?」
重々承知のつもりだ。
「調子乗ってんじゃねぇぞ!?」
まずは足を蹴られ、頭を殴られた。
これで彼らは何の得をするのだろうか??
クルルには理解が出来ない。
痛みなんてどうでもよかった。
ただ彼らの思考が理解できず、それをずっと考えていた。

どれくらい暴行を受けただろう。
クルルはもう立ち上がる気力が無かった。
少年たちもこれ以上はまずいと思ったのだろう、上から見下ろすだけだ。
「次にこうされたくなかったら、明日なんか持って来い。」
「1:00とか良くね?」
「んじゃ、1:00に来いよ~。」
出て行こうとする少年たちに、クルルは一言放った。
「無理。」
動きがぴたりと止まり、視線がクルルに集まる。
「こんなんじゃ動けないし、帰れない。それにここ何所?ついでに言えば、最初の話聞いてた?僕は帰るつもりが無くなった。」
「殺されたいのかよてめぇ。」
「殺すんならがんばれば?」
「!!!!」
少年たちの怒りはピークに達した。
クルルが自嘲気味にニヤリと笑ったそのとき、扉が勢いよく開く音がした。
「・・・何やってるんだお前。SMか?」
入ってきたのは、この少年たちよりもクルルが今一番会いたくなかった人だった。
少年たちがあからさまに動揺しているのが見て取れる。
クルルは力を振り絞り、どうにかひざ立ちまで体制を整えることが出来た。
「何でここに居るんだよ。」
「お前には発信機がついているからな。ところで・・・SMか?」
「それは冗談のつもり??」
「本気だが。」
「死にかけてるんだよ。」
イライラしていたのでそれだけ言うと、父は部屋を見渡して少年たちで視線を止めた。
「集団リンチってヤツだな。」
「あ、あの・・・俺たちは別に・・・」
「たまたまここに、」
口々に言い訳をする少年たち。一通り言い分を聞いてから、父は静かにクルルへと歩み寄った。
「・・・ずいぶんと固く縛ったもんだな。縛り方は完璧なんだが・・・。」
なにやらブツブツと呟きながら、どうにかクルルのネクタイを解いた。
自由になった手を振りながら、クルルは父を睨む。
「・・・」
「何か文句があるか?こいつ等を殴った方が良いのか??」
少年たちはビクッとして立ちすくむ。
「別に。」
むすっとした様子の息子を見て父は首をひねった。
しょうがない事だ。
クルルの父親は人を愛することも、何かを守ることも知らない。
学ぼうともしなかったのだから。
「・・・ここ何所??」
「さぁな。発信機の通りに来たから・・・ここは何所だ?」
単純に場所を聞く姿は、息子が暴行を加えられたことに対する怒りも感じられなかった。
「○×△デパートの隣にあるアパートです・・・。」
「・・・何所だそれは?住所を言ってくれ。」
クルルはだんだん疲れてきた。
クルルにとっての馬鹿が5人もそろってしまったのだから。
普通はデパートの隣といえばすぐに分かるものだ。
しかし父はそれを知らない。
買い物はネットショッピングだし、移動は大抵自動だからだった。
―それはお前が馬鹿だったって事だろうな。
クルルは思った。
「○×区1000番地です。」
「あぁ・・・分かった。」
番地や区域を聞けば分かるなんて、常識ではありえない。
普通逆だろ、とクルルは内心苦々しく思うのだった。
「立てるか?」
「立てるわけ無い。」
「そうか・・・」
父は少し困ったような顔をしたが、思い立ったようにポケットからカプセルを取り出し、クルルの口を無理やりこじ開けて飲ませた。
「んぐ!!~~~~~~~っ(ゴクッ)」
抵抗むなしく薬は喉を通った。
「あとは・・・」
父は未だにぽかんとして動けずにいた少年たちに近づき、少年たちが買ってきた漫画で全員をテンポよく叩いた。
「!」
無表情が逆に怖い。
クルルはなぜか薄れ行く意識の中で、その行為を理解した。
「息子が世話になった。怪我をしているようだからな、とりあえず叩いておくぞ。」
父にとってのせめてもの復讐。
「ナゼだかこうしなくちゃいけないような気がするんでな。」
「す、すみませんでした!!!!」
少年たちはそれでやっと走り去っていった。
「僕・・・睡眠・・・せた・・・」
回らない舌で精一杯抗議してみるが、飲まされた睡眠薬の効果は絶大だった。
「・・・ずいぶんと長く帰ってこなかったからな。」
自分の体が浮くような感覚がした。
「公園にいれば問題なかったんだが・・・知らないところとは。」
もうクルルに意識は無かった。
父に身を任せて寝息を立てている。
「・・・心配・・・か。」
彼女が言っていた心配とはいったい何なのか、今の自分の感情がそれなのか。
守ろうという気持ちも無かった。
けれども、なぜかあの少年たちを叩きたくなった。
父はそこまで考えて、思考を止めた。
クルルがくしゃみをしたのを聞いたからだ。
「帰るか。」
ほとんど暗くなっている外に出て、夜空を見上げた。
「治癒の機械、久々に取り出してみるか・・・」
ついつい癖で白衣に手を入れたくなったが、それではクルルが落ちてしまうことに気づいて思いとどまった。
家に帰ったら今夜はカレーがあったはずだと思い、少しだけスピードを上げて帰る父の頭の中には、もう先ほどの少年たちの姿は無い。
(クルル、寒そうだな。)
今は早く帰ることが最優先と、さらにスピードを上げる。

何が楽しいのか自分でも分からないが、自然に出てくる微笑に少しだけ感情が滲み出ていた。

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疲れた。
なんか疲れた。
痛いのを書くのは苦手ですよ~~~。

父さんを少しでもいい人にしたいと思っているのですが・・・それじゃあ話が成り立たなく・・・でもやっぱり・・・。



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