NARAYA CAFE のできるまで

歴史あるリゾート、箱根宮ノ下駅前で、古い建物を利用したカフェ&ゲストハウスをオープンするため、改装にはげむ日々を綴る

オープンまで半年 〜過去も未来も交流の場でありたい

2017-04-08 10:45:13 | 2017シーズン
やはり宮ノ下の魅力というのはこの広重の絵に集約されているように思います。

向かいに見える山々、見下ろすと渓谷(これはNARAYA CAFEの場合、屋根に登ってかなり見下ろさないと見えませんが)、谷の向こうにうっすらと相模湾という風景。
そして、おのおのの湯宿の開放的な窓辺で涼む浴衣の女性たち。

広重が箱根七湯(湯本・塔ノ沢・宮ノ下・堂ヶ島・底倉・木賀・芦の湯の七つ)の図を描いたのは嘉永5年(1852)とのことです。
この頃の宮ノ下の様子はどんなだったのでしょう、、、
それを知ることの出来る資料のひとつに、10年前のオープンプレイベント「NARAYA展」でも触れましたが、フランスの貴族ボーヴォワールによる旅行記「ジャポン一八六七」(有隣新書)があります。
(これは現在、箱ピタという箱根の温泉旅館組合が運営するウェブサイトでも見ることが出来ます →こちら

この中で(恐らく)西洋人湯治客第1号であったボーヴォワール氏は男女混浴での入浴と(日本人)湯治客との宴会を経験し、しまいには「野球拳」と思われる芸者遊びも目にしています。
江戸幕府も後半になるとその力も弱まって、本来の東海道のルートでない、箱根七湯をめぐるルートを旅行者が通ることを認めるようになりました。
この象徴的な出来事が「一夜湯治論争」で、幕府の公式な宿駅だった小田原宿と箱根湯本温泉との間で争われた論争は結局箱根に軍配が上がり、「一夜かぎりでも療養目的の湯治である」という理論が認められるようになり、伊勢詣での帰りなどの遊興客がどっと押し寄せるようになりました。(これも上記サイトに記述があります →こちら


つまり、この広重の絵の頃の宮ノ下では、江戸の庶民たちが、おそらく一生に一度の大旅行である伊勢詣でを終え、江戸を目前にして開放感に浸りながら、毎晩のように宴会を繰り広げていたのでしょう。
一方で、地方から東海道を経て江戸を目指す場合でも、「せっかくだからこっちを回っていこう、湯治ということにして、、、」という人も居たことでしょう。
当時、江戸と例えば薩摩といったら外国のようなものだから、宴会の席では日々国際(?)交流が行われていたことと思われます。
ここに幕末からは外国人も加わるようになります。
彼らも「一夜湯治論」に習って、湯治目的ということで本来は(横浜の)居留地から10里(40km)以上は離れてはいけないという「外国人遊歩規定」を超えてやってきました。
いずれにしても「禁をやぶって遊ぶ」ということはワクワクしますよね。



さて再び広重の宮ノ下

この当時の雰囲気を再現することは難しいでしょうが、、、(野球拳なんてやってたら風俗営業店になっちゃいますし)、窓辺から風がそよぐ開放感とか、国内外の人達が交流する楽しさ、そして何より温泉の気持ち良さがここに描かれた宮ノ下の魅力だと思います。
温泉で暖まって、雄大な景色を眺めながら窓辺で涼む、そこには同宿の旅人達との交流もあって、隣りの旅館の窓辺に見える湯上がり美人にドキドキしてみたり、、、、

混浴はさすがに足湯だけで我慢して貰うとしても、全身でお湯に浸かる「お風呂」の気持ち良さは何よりも大事な要素だと思っています。
今年9月にブックカフェをオープンしますが、やはり「お風呂」もそれに合わせて作りたいと強く思っています。
現在、足湯に掛け流している温泉は足湯の湯を抜いた夜〜翌朝にかけては利用されていません。
それどころか冬場は配管が凍るといけないし、基本、真夏以外はタンクのお湯が冷めないようにチョロチョロと夜通し排水し続けています。
これをドラム缶にでも何でも溜めれば、少なくとも足湯の営業に影響しない夜間は(全身の)お風呂に入ることができるのです。

これまでも現terrace棟にお風呂があったときは(それがシロアリの温床になってしまっていましたが)、仕事の前後に一風呂浴びたりしていたのですが、このお風呂があるかないかというのは働くモチベーションにも大きく影響します。この冬、肌荒れがひどかったのも温泉に浸かっていないせいではないかと自分としては思っています。
洗い場などしっかりと完備されていないワイルドなお風呂でも、まずはスタッフだけでも、NARAYAの最大の強みとも言える温泉を全身で味わえるようにしたいものです。


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さて、今月のギャラリーはアート書道家、矢野華風さんによる書の展示です。

漢字というのはそもそも象形文字です。
絵柄がどんどん抽象化されて偏(へん)や旁(つくり)になったりして現在の形になりました。
だから字それ自体に何らかの図柄が込められています。
それを、イマジネーションを膨らませて絵にもどしてあげることもできるのではないか。
それを実践しているのが矢野さん、、、と僕は解釈しています。



写真は「翔」(はばたく)という字
「翔」の字からは美しい青い鳥が飛び出してきて、はばたきはじめました。



こちらは「鶴」
2羽の鶴が飛び立とうとしています。

これらは展示会にも出展して作品なので非売品となっています。





その他に購入もできる小さめの作品も展示しています。

卒業旅行シーズンも落ち着いて、少し静かになった箱根。
これから鳥が鳴き、山桜が咲き、新緑が生い茂ってくる4月の箱根を散策がてら、カフェ・ギャラリーへもお越しください。

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<おまけ>

足湯デッキから改装中のテラス棟をのぞいてみると、、、、







店が暇になったので、ブックカフェの蔵書整理、少しずつはじめています。

本を整理し出すと、その本を読んでいた頃をいろいろと思い出します。
ページをめくりはじめたりするとさらに進みません、、、



新しい書棚に並べてみると「あっ、これはこれの隣かな」というふうに何となく場所が定まってきます。
ちょうど新学期だし、クラスの席替えをしている気分です。



並べてみると「アジアまちあるき」とか「近代リゾート」とか、妙に蔵書の量が多いところが見つかり、自分の趣味の偏りを自覚します。
ときどき複数の分野をまたぐ「つなぐ本」が見つかったりするのも面白いです。
そういうのは端っこにおいてみたりして、、、あっという間に時間が過ぎていきます。
主にえみの集めた蔵書もあるので、そっちも整理してもらって、そこに「つなぐ本」が出現してくると、いよいよ全体の配置が定まってくるかもしれません。




外を見ると、空には虹が架かっていました。
手を動かすことで、少し希望が見えてきたのかな、、、、



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