意味のあるもの

最近イラストを彩色だけしていましたが、
今回、新しく絵を描くことにしました。
お題はロック、とだけあるので、どんなのにしようかと
ひたすら考えて考えて……
まったく描けないことに気づいて愕然としました。

どうして描けないんだろうと自分に問いかけて、
答えのようなものをようやく見つけました。

それは――『意味がないから』、でした。

そこに思いついたら、
わたしが他のものでだめなものも
意外とそこにたどり着くことに気づいたのです。

たとえば逆に、できること――『意味のあること』。
　・お話に沿って、お話のシーンを絵に描く。
　・flashに必要だから、焼きいものリアカーを引く絵を描く。
こういうのは、どういう構図にするかを悩むだけで、
描くことはできます。

一方、今回みたいなこと、
たとえば
　・ロックで絵を描く
　・だれかの『何か』のために、『何か』の絵を描く
こんなわけのわからないことはできません。

……と描いているうちにも見えてきましたが、
たぶんそれは、そこに『目的』がないからみたいです。
たとえばキャラが笑っているだけの絵なんて
よく描けません。なぜなら、そこには描く意味がないからです。
そこに、笑う状況がないからだと思います。

わたしが絵を描くのは、『絵にしたいなにか』があるから。
絵はその『なにか』をあらわすための手段。
でもロックのための絵を描くのは、
『絵を描くこと』が目的であって、
『ロックの絵にしたいなにかをあらわす』という目的が
ないのが問題なのでした。

わたしが前回、ミクの公式サイトにいながら
ずっとひっかかっていたのはそこにあるみたいです。
つまり、『なんの目的のために、そこで生成物を出すのか』です。


そう思うと、昔からなぜやけに死にたくなるときがあるのかも
すごくよくわかりました。

・なぜ進学しなくちゃいけないのでしょう？
　→『いい仕事』につきやすくするため
・なぜ『いい仕事』につかなくてはいけないのでしょう？
　→お金を稼ぎやすくなるため
・なぜお金を稼がなくてはいけないのでしょう？
　→生きていく、食べていくためには必要だから
・なぜ、食べて、生きていかなくてはいけないのでしょう？
　→　？

　食べていくことも、生きていくことも、意味はないのに。


むしろ、死ねばすべてが解決です。
なのに世の人を見ると、死ぬなとされる説得を聞くと、
わたしの実体験でいくと、
『生きるために生きろ』というような話で終わります。

わたしはきっと、人生は『手段（過程）』だと、
思うでもなく思っていたのでしょう。
だから、『目的』のない『手段（過程）』、
『目的である手段』である人生を思うと、
すごく意味がなくて投げ出したくなったのだと思うのです。

人生の目標、なんて言葉を聞いたら軽く笑ってしまいそうですが、
よく考えたら実は意外と重要でびっくりです。

……でも、です。

なら、なぜわたしは何かをしたいんだろうと思いました。
特に、なぜわたしは『書く』のでしょう？
今は一応、人生で何かをしたという自己満足を得るために、
ショートショートの数だけを増やすという目標で書いていますが、
その前だって別に目標はなく、書いていました。

なぜ、わたしは書いていたのでしょうか？

そんなの考えるまでもなく、『好き』だからです。
書くのが好きだから書くものを探し、それを書きます。
そこまで思いついたら、『好き』ってすごいことだと
しみじみしました。
理由だとかなんだとか、こむずかしい考えも超越して、
ただそこにあるのです。
わたしが書くことの究極因は、『好き』だったからでした。

そこに思い至って、なんだか知りませんが感動しました。
好きだから書いて、好きだからがんばるって、
ちょっとすてきです。

……となると、わたしが意味のない絵を描けないのは、
絵を描くのがそれほど好きじゃないからですね、きっと。
絵を描くのが好きだから、絵を描きたくて
絵にするものを貪欲に探すくらいだったらいいのに。

それよりも。わたしが生きることにあまりこだわらないのは、
生きることがたいして好きじゃないからなのでしょうねえ。
生きるのが好きだから、生きたくて、
生きるためのものを探すような人生……
そんな風に生きられたら、なんてすてきなのでしょうか。

きっとそれは、『どうしたら』とか、『なぜ』とか。
そんな考えよりもずっと自然で高い場所にあって。
ポリアンナやその他の人々は、きっと生きることが
理由もなく、『好き』なのでしょう。

それはわたしには、とてもうらやましく思えるのです。


そんなことをふと考えていた、無職の春の日のわたし。