――アゲハ蝶は自分に恋をした蝶っていう気がするよ。
水無月がそんなことを言ったのがいつのことだったか、どうしても思い出せない。
その休日の夜、枕の上で私は頭を悩ませる。
4つか5つの頃だった気もするし、中学校に通っていたような気もする。
水無月はどの瞬間もずっと"水無月"だった。
変わらず、ずっとそのまま。
初めて理解できた気がする。
さすがに怯む。
「これまでもずっと元気だったから」
口にして一層その痛ましさが響く。
ずっと生きていたんだね。
ずっと羽を伸ばしたかったんだね。
もう寝よう。
振り切るように私は目を閉じる。
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