ブログ de なんで屋 @東京

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10月21日なんでや劇場レポート①「倍数体2n自体が変異実現体である」~多細胞生物への道のり

2007-10-27 16:58:22 | テレビの共認支配を暴く!

先回の劇場では、「倍数体2nは減数分裂前の1次生産品で最終成果品は減数分裂後のn」という認識を提起したが、この間の追及の結果、新認識に置き換えたほうがベター。
⇒倍数体2n自体が変異実現体である。

議長のこの提起からはじまった今回のなんでや劇場。生物素人の私にとってフリーズ寸前の逆境に立たされました。

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さて本題です。

まずは下記の図解をご覧下さい。

これは、普段、1倍体(n)単細胞状態で動き回っている生物(代表的なのがクラミドモナス)の分裂の様子です。

環境が安定状態にある場合、この生物は単純分裂によって子孫を残し(≒数を増やし)ています。
この図解にある左側の状態で、遺伝子の組み換えは行わず、有糸分裂という正確な分裂機能により安定的に同種の子孫を残していきます。環境が安定的である以上変異を可能な限り抑えることが命題です。

ところが環境変化は常に起こります。その逆境に適応するためとられた戦略が「接合」です。(上図①の段階です。)

「接合」といえば機能的な感じを受けますが、はじめは同類同士の激しい食い合いもあったかも知れません。
生命にとっての逆境とは飢餓状態です。上図にある半数体A(ブルー君)B(ピンク君)の争いを続ける中、「接合」というまったく新しい状態2nを実現していったのです。

そしてこの状態で、一種の冬眠状態に入り、エネルギーの消耗を押さえ環境回復を待ちます。
その後再び周囲の栄養状態が良くなると、「減数分裂」により、4匹の1倍体単細胞生物に戻って、動き始めます。
この減数分裂時に遺伝子の組み換えが発生するので、元の2匹と全く同じものは誕生しません。4匹とも全て変異体です。
これは、環境の変化に対して、必ず変異体を作り出す仕組みを獲得したことを意味します。
環境が好転したとはいえ、以前の環境とまったく同じことはありません。冬眠してじっとたえるだけでなく、遺伝子の組み換えという、変異をシステム的に組み込むことで新環境への適応力も獲得したのです。

さてここまでの分裂・増殖過程をみていくと、「倍数体2nは減数分裂前の1次生産品で最終成果品は減数分裂後のn」という意味がわかると思います。


その後、2倍体(2n)の状態で動き回る単細胞生物が発生します。現存するものでは太陽虫などが当たります。この生物の分裂・増殖過程が下図です。

この2倍体単細胞生物は、通常状態では単純分裂によって子孫を残し(≒増殖し)ます。(図解の左側の状態です。)
しかし、これだけだと遺伝子の組み換えを行わない単純分裂のため、安定的に変異体を作り出すことができません。そこで、減数分裂により遺伝子を組み替え1倍体細胞(=変異体)を作り出します。
この①~⑤までのプロセスは、1倍体(n)単細胞状態で動き回っている生物とまったく同じです。

ではその違いはどこか?。一番右側に注目してください。

1倍体(n)単細胞状態で動き回っている生物がその後、1倍体(n)のまま単純分裂して増殖していくのに対して、2倍体単細胞生物は、「別の2倍体」の半数体(n)と接合するしか次に進めない状態になっています。
つまり2倍体単細胞生物にとっての半数体(n)は、その状態では生きていけない(それ以上分裂できない)「カタワ」の細胞でありながら、変異をつかさどる極めて重要な細胞になったのです。

ここで生物にとっての至上命題である「安定と変異をともに種として実現する」の完成形が出来上がります。
1倍体(n)単細胞状態で動き回っている生物が安定時期と変異時期を時期をずらして両立させているのに対して、
2倍体単細胞生物は同時継続的に「安定と変異」を実現させました。
つまり、2倍体の単純分裂を繰り返す過程と、減数分裂から組み替えをへて2倍体にもどる過程を種として同時に行うことで、「安定と変異をともに実現する」変異実現体(完成品)となったのです。

このように適応した状態とは、常に少しづつのゆらぎ(少しの変異)を含んだ状態であり、現代人がとらえる適応状態=変化を排除する硬直状態とはまったく異なります。
仕事ができる人、成長していく組織がもっている強みは、常に外部環境の変化に対してそれを受け入れ、現在もっている機能を組み替えることで対応していってます。「こうあるべき」とか「過去の方法論」にこだわって硬直した思考に陥ることは環境の変化に適応できません。

自然の摂理を学ぶ意義は、こんなところにあると気づかされました。

さてこの完成品から多細胞生物は生まれていきます。
そのヒントは2倍体生物がもつ、役割分化(図解の左側の分裂と右側の分裂の分化)にあったのです。

 

★レポート作成にあたっての気づき

このレポートは「生物史から、自然の摂理を読み解く」2007年10月24日記事
http://www.biological-journal.net/blog/
を下敷きにしながら作成しました。
しかしこの下敷きをもとに新たに文章を作成することはかなりの難課題だったのです。
ある理論を正確にトレースして誰かに伝えることの難しさ、これは細胞が正確に同類をつくっていく困難さと近いのではないでしょうか?。細胞はミスコピーに対応する修復酵素をもっています。
人類の場合誰かの発信に対するみんなのレスがこの修復酵素に該当するのかもしれません。
認識が広がっていく過程もこのような協同作業なんですね。

nomura


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2倍体単細胞生物 (yama)
2007-10-27 22:00:33
>同時継続的に「安定と変異」を実現

なるほど納得です。劇場では1倍体単細胞生物との違いがもう1つ理解できていませんでしたが、スッキリしました。ありがとうございます!

※図解が見づらいのが残念!
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Unknown (m!sh!)
2007-10-28 23:15:31
「安定と変異をともに実現する」ということを一義的課題としたときに、2倍体というのは、そのバランスがちょうどいいのですね。

「レポート作成にあたっての気づき」は私もホントにそう思います。自然の摂理を学ぶ意義ばっちり伝わりましたよ!
返信する
Unknown (中田ナイスP!)
2007-10-28 23:56:33
>「こうあるべき」とか「過去の方法論」にこだわって硬直した思考に陥ることは環境の変化に適応できません。

「なんでや劇場」生物史シリーズは、毎回、現代の仕事、組織論を考える上でヒントになることが必ずありのでやめられませんね。
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Unknown (今年こそ日本一!)
2007-10-28 23:58:15
>yamaさん
>※図解が見づらいのが残念!

図はクリックすると拡大されますよ。
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Unknown (一文字)
2007-10-29 11:04:51
疑問が一つあります。
倍数体2nが何で単純分裂を始めたのでしょうか?
そこに多細胞化の原点があるように思うのですが・・・
ご存知の方は教えてください。
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細胞に教えられましたな (垂心)
2007-10-29 11:19:06
>現代人がとらえる適応状態=変化を排除する硬直状態

これって、単なる自己中?
変化=外圧を捨象して、自分の思い込みに閉塞する「自己中」

現代人は、単細胞の進化過程で獲得した機能さえも失っている。

細胞に教えられました。
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Unknown (echo)
2007-10-29 13:16:46
>人類の場合誰かの発信に対するみんなのレスがこの修復酵素に該当するのかもしれません。<

なるほどっ!
初めはたとえ誤っても修復しながら完成に向かっていく。
細胞から学ぶことってたくさんありますね。
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Unknown (iwai)
2007-10-29 16:25:00
力作レポートですね!
なんでや劇場も「復習」はとても大事だと思います。

続編も期待!
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安定≠硬直 (ニシヒデ)
2007-10-30 02:17:27
> このように適応した状態とは、常に少しづつのゆらぎ(少しの変異)を含んだ状態であり、現代人がとらえる適応状態=変化を排除する硬直状態とはまったく異なります。。(nomuraさん)

安定≠硬直であることを理解しておくのは重要ですね。
個体ではなく、“種として”外部環境に適応していくことを考えると、

『安定』=『不変』+『変異』

なんですね。

ちなみにるいネットのこの投稿が参考になります↓
<生物史から学ぶ『安定』と『硬直』の違い>
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=161317
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Unknown (Unknown)
2007-10-31 21:58:47
> 倍数体2nが何で単純分裂を始めたのでしょうか?

生物はその進化の過程に於いて、適応のためのあらゆる可能性を試してきた、としかいいようがないと思います。

細胞が分裂する(生殖の原点でもある)ことは生命の摂理であるし、単純分裂機構は、倍数体登場以前に獲得されているので、それほど突飛なことでもないと思いますが、どうなんでしょう?
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