ブログ de なんで屋 @東京

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10月21日なんでや劇場レポート③「多細胞化の必要」

2007-11-01 18:02:36 | なんでや劇場

かなり遅くなってしまいましたが、劇レポ最終回をお送りします

劇レポ②の「多細胞生物って何?」の記事、サリオ君は生物史初心者だったみたいですが、頑張って書いてくれました

みなさんも、だいぶ生物史に慣れてきた頃だと想われますが、いかがですか

最終回となる今回は、劇場中に展開されたものの、前記事までで触れられていない点を設問形式で押さえていきましょう~

その前に、いつものやつをお願いします。
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それでは、さっそくいてみましょう~

前記事で、単細胞と多細胞の違いはわかりましたが、多細胞生物って、ほとんどが倍数体(2n)なのです。
まずは、ここのなんで?に切り込みます

設問
●なんでn体のまま多細胞にならないの?

2n体の方が、n体より有利だったことは推測できるのですが、このなんで?については、劇場中で次のような展開がありました。

劇レポ①の記事にあったように、倍数体(2n)は、2つのn細胞が合体してできた成果品です。
ということは、染色体の数も2倍になるし、体積も大きくなります。

しかし、染色体が2倍になったからといって、細胞内のたんぱく質が同じように使われるわけではないのです

その結果、2n体はn体に比べて、

① 余剰RNA、余剰たんぱく質が豊か。

② ①により、細胞間連絡、情報伝達がn体より優れる。

⇒2n体は体細胞間を繋ぐ指揮系統を確立することで、別々の細胞を1つの組織にまとめ上げる事に成功しました

しかし、単に基礎能力が高いから2n体という答えだけでは、不十分では?という疑問も残ります。

そこで、決定打として提示されたのが、

③ 『減数分裂』システムの獲得。

です。

というのも、n体は減数分裂ができない細胞なのです・・・

つまり、
『単純分裂もできる、減数分裂もできるということが、多細胞化の絶対命題』
になってくるわけです。

まとめると、単細胞時代に作り出した2n体というメリットを有効に拡大させていったというわけですねっ。
だから、多細胞化が可能になった

多細胞生物が2n体である理由がわかりましたね

しかし劇場では、さらに突っ込んだ質問がありました

2n体がn体より有利なのはわかったけど、

設問
●3n、4n、5n・・・8n・・・16n・・・にならないのはなんで?
という質問です。

確かに、ごく自然に沸いてくる疑問ですよね。この質問に対する展開は次のようになりました。

答えは、染色体の数が多いと、③の減数分裂システムがやっかいだからです。

正確には、多数の染色体を組み替えることで、適応してきた種も存在します。(植物や一部の動物)

しかし、多細胞生物の進化史上、大多数の多細胞生物(動物)が2n体であることを鑑みると、2n体であることが安定した動物の基本戦略と捉えて良いと考えられます

植物の場合は、種の保存に対しての適応戦略が動物と異なるのと、(後述しますが)動物とは外圧構造が異なるので、多数の染色体の組み換えが実現可能だと考えられます。

余談ですが、奇数体(n、3n、5n・・・)ではきれいに分割できないので、うまく減数分裂を行うことができません

どうですか、みなさん減数分裂って、かなり精密なシステムなんですよ~


続いて、これまでの単細胞→多細胞化の総まとめとして、以下の設問でみなさん、完璧に肉体化しちゃいましょう

設問
●多細胞化が必要になったのはなんで?

劇レポ②の記事でも触れられていましたが、生物の最大の課題は種の保存です。そして、種を保存していくには『生殖』、さらには生存していく為の『摂食』が最大の課題となります


生殖摂食、この2つの課題をバランスよくこなしていくことが生物に求められるのです

刻々と変化していく外圧環境を前にして、主要には摂食機能の高度化が必要になってきます。
(∵生殖機能は単細胞時代にほぼ実現されている)

単細胞のままでは適応できない厳しい外圧を前に突破口を切り開いたのが、多細胞化というシステムなのです

多細胞化することで、生殖と摂食の役割分化→役割特化が実現できたのです。

具体的には、

保存だけを担う細胞=生殖細胞を作り出すことによって、生殖負担がなくなった仕事細胞(体細胞)という専門細胞を作り出し、生命体の体機能の高度化、つまり摂食機能の高度化を担っていくことが可能になった。                                                     

こうしてみると、単細胞から多細胞へ変化していく過程とは、体細胞を担う仕事細胞と生殖器官を担う保存細胞の(役割)分化史と見て取れそうです。

さらに、目から鱗だったのは、多細胞化というシステムを獲得した結果、仕事細胞(→体細胞)はどんどん進化していきますが、保存細胞(→生殖細胞)は下等動物から高等動物まで、ほとんど進化していないという事実なのです。

生物史は、実に奥が深いっ

最後に、劇場の終盤近くで展開されたのですが、今後の生物史シリーズにおいて、重要なポイントとなる点を押さえておきます

設問
●動物と植物の適応戦略が異なるのはなんで?

多細胞化が進むにつれて、大きく動物が歩んできた戦略と、植物(一部の昆虫)が歩んできた戦略とが異なっていきます

動物・・・生殖様式の限定化、体細胞の複雑化・高度化
植物(一部の昆虫)・・・生殖様式の多様化


一体、何が違うのか

それは、外圧構造の違いにあります

みなさんもよ~く考えてみて下さい動物は動いてエサをとるしかないですよね。
食い合いやエサの取り合いから、摂食機能を進化させる圧力が強く働き、その進化がさらに種間圧力を強化し、身体機能の高度化(=体細胞系列の高度な機能分化)を促進させるという外圧(循環)構造にあったと考えられます。

言い換えると、動物は、最も負担の大きい生殖過程を分離することによって初めて、体細胞系列を高度に機能分化させていくことが可能になったとも捉えることができます

それに対して、植物は基本的には動かない。
光合成により自立的に栄養分をつくり出せるし、生存するために摂取する物質は、水や二酸化炭素等々、自然界に潤沢に存在しています。(植物などに寄生する昆虫もそれに準ずる)

つまり植物は、動物ほど外圧環境(種間圧力)は高くないのです
→体細胞系列を高度に機能分化する必要がなかった。
→生殖様式が多様化している。


最後は、一気に突っ走ってしまいましたが、以上が劇場で扱われた内容です


次回の劇場では、いよいよ生物史シリーズの目玉テーマである、オス・メス分化についての展開が成されると想われます

こうして、3回の劇レポを俯瞰してみると、多細胞の分化史&生存闘争の上昇が、オス・メス分化根本を成しているような予感がします

次回以降の劇場、ホントが離せませんね
楽しみですっみなさんも、参加必須ですよ

ちと長くなりましたが、以上、やっさんがお送りしました
コメントょろたむ~


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4 コメント

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ちっちゃい? (クリリン)
2007-11-04 23:43:52
>生殖様式の限定化、体細胞の複雑化・高度化

確かに、知る限り殆どの動物が精子と卵子が受精する生殖方式。しかも、生殖を担う部位として比較的小さい気もします・・・・・変な意味じゃなくて、植物は全身に花をつけて(満開ってやつ?)花粉を撒き散らす。

この辺も以降の劇場で勉強できるのでしょうか?
楽しみです!!
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塗り重ね (ニシヒデ)
2007-11-05 01:42:06
>食い合いやエサの取り合いから、摂食機能を進化させる圧力が強く働き、その進化がさらに種間圧力を強化し、身体機能の高度化(=体細胞系列の高度な機能分化)を促進させるという外圧(循環)構造にあったと考えられます。<

外圧への適応が、また新たな外圧を生み出すんですね。
生物の歴史は塗り重ね構造なのだとつくづく感じさせられます。

しっかり塗り重ねてバトンを渡していかないと。。。
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Unknown (iwai)
2007-11-07 17:45:28
次回のなんでや劇場は、11/23(金・祝)ですね!
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かなり、分かりやすいです!! (やが)
2007-12-03 21:00:31
ところで、

植物は“生殖様式の多様化”に力を入れてきた、ということですが、その原因は、摂食機能を発達させる必要性が低かった、ということのほかに、もう1つあるんじゃないでしょうか

それは、植物は(動物と違って)ほとんど動けないので、精子と卵子を出会わせるために(あるいは、同じ株で精子と卵子が交わるのでなく、他の株と交わるために)、さまざまな工夫を凝らす必要があった、ということです。タンポポの種が、ふわ~りと飛んでいくのを見ると、よく考えられてるな~、と感心します
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