シンガポールの刑罰 其の弐

2005-12-12 08:39:04 | アジア編
■米国では、「残酷だ!」「少年は反省しているのだから、情状を酌量しろ!」と大規模な市民運動が盛り上がり、大統領もシンガポール政府に正式に申し入れを繰り返しました。軍事的にも経済的にも深いつながりの有る米国政府からも声を無視してシンガポール政府は判決通りの刑を執行したはずです。司法の秩序の方が外交よりも優先するのです。米国は特殊部隊を派遣して少年を救助……したりはしないで、執行条件の交渉に入りました。「鞭打ちの刑」は遊びではないので、筋骨隆々のプロフェッショナルな執行人が本皮仕立てのごつい鞭を振るって、きっちり打ち据えるのだそうです。

■執行現場には医者が立ち会っていて、一撃ごとにダメージを観察して連打を禁じる事が出来るのだそうです。つまり、「ドクター・ストップ」が有るのです。でも、「ドクター特赦」は認められていないので、効果抜群だった場合は牢屋に運び込まれて治療を施して回復を待ちます。医者が次の打撃に耐えられると判定すると、刑場に引き出されて鞭打ちが再開されるのだそうです。これを繰り返して、どんなに日数がかかろうとも、必ず所定の回数の鞭打ちが執行されるとの話です。米国人の悪戯小僧も、治療されながら所定の鞭を受けたようです。泣き叫んだとか、神の名を呼んだとか、同情を引くような話が報道されていたようですが、外交問題には発展しないで全ては終りました。

■同じ頃、変な表紙の写真週刊誌が発行されました。どう見ても、「男の尻」の写真なのですが、特殊な性癖を持っている人達のための雑誌ではありません。その週刊誌は、シンガポール国内の刑罰の実態を特集記事にしていたのです。別に魅力的でもない男の尻をじっくり見る人もいないでしょうが、この写真は凝視しないと分からない貴重な証拠なのでした。目を凝らして見ると、浅黒い男の尻にうっすらと横一線に、巾五センチほどの変色している部分が有るのです。これは何年も前に執行された「棒打ちの刑」の痕跡との事で、本人がその恐怖体験を語る特集記事が、その週の売り物なのでした。勿論、残虐な刑罰を告発する目的ではありません。犯罪抑止を目的とした政府に協力する記事でした。

■「鞭打ちの刑」は背中に執行されますが、「棒打ちの刑」は凄まじい破壊力が有るので、背中を叩くと肋骨や脊椎が破損しますから、残酷な死刑と変わらなくなってしまうらしく、打撃は尻の肉に向けられるそうです。痩せて貧弱な尻を持っている人は大変でしょう。骨盤や股関節が破壊されるかも知れません。掲載されていた写真は、中肉の尻でしたから、お肉が打撃に耐えたようですが、体験者の告白は十分な抑止力を持つ、恐るべきものでした。空き巣や窃盗を繰り返した男が受けた刑は、「棒打ち10回」だったと思いますが記憶は定かでは有りません。「鞭打ち」担当の執行人が兼務しているのかどうかは知りませんが、この刑を担当するも有能な人のようです。

■連打は死の危険が有るそうで、やはり「ドクター・ストップ」と治療期間を挟んで、一発ずつ分割執行されるのだそうです。お尻を一撃されると、声も出ないそうで、衝撃で開いた口から魂が飛び出して、3メートル前方の床に落下するような感じだそうです。歩行能力は一瞬で奪われ、監房まで運び込まれてもお尻が痛くて座れないし、横臥も出来ず、トイレは地獄の苦しみとのことです。やっとずきずきするお尻に耐えて横になれる頃には、次の一撃を受けるために刑場に引き出されるのだそうです。記事を読んでいるだけで自分のお尻が熱を帯びて来ました。何年も経過したのに、その男は、まだお尻に痛みが残っていると証言していました。

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