映画プロデューサー日記

映画人34年、日本映画の活性化をめざして映画アナリストに挑む!

「映画は志が大切だ」と角川春樹プロデューサーが映画作りを講義した!

2005-10-31 18:28:56 | 映画ビジネス
第18回東京国際映画祭関連企画
国際エンタティンメントビジネスセミナー・特別プログラム(主催:日本エンタティメント研究所、後援:経産省)
2日目(2005年10月30日)に参加してきましたので要点を箇条書きにて報告します・

Ⅰ、「世界の中心で、愛をさけぶ」「いま、会いにゆきます」の
市川プロデューサーが語るプロデューサー術と大ヒット作誕生秘話(市川 南氏・東宝映画調整部室長)

〇「春の雪」製作費5,5億、宣伝3億、プリント1億、興収予測15~20億。興収で20億いけば劇場だけでペイする。三島原作を妻夫木と竹内の恋愛に脚本も本編も宣伝も絞った。通常は1週ごとに70%に落ちていくが「電車男」「世中」「いま」は落ちることがなかった。
〇「電車男」はとがった作りにしないで不偏的な恋愛(ボーイズミーツガール)になるオーソドックスなロマンチック・ラブストリーにした。
〇「世界の中心で、愛をさけぶ」は高校生物では300館~400館は行かないので大人にも見られるように大沢+柴咲を入れた。動員600万人、興収85億。
〇「いま、会いにいきます」はファンジーが前面に出ないように心がけた。(黄泉がえりもSF色を出来るだけ排除した。失敗は天国の本屋)
◎ヒットの理由
*企画性の高いもの。
*普遍的なもの。(泣けたり、感動したり)(はっきりと感動の伝わるもの)
*時代性のあるもの。(売れている小説、音楽、旬の俳優)
*皆が見なければならない状況を作る。
◎東宝は300館にはかかる映画を求める。(シネコンで2800スクリーンの環境の変化があるのですから)
◎脚本チェクと編集チェクが大切であり、それがプロデューサーの仕事である。

Ⅱ、ハリウッドのトップ・エンタティンメントロイヤーによる講義(LAX,ジョイス・ジュン弁護士)

〇「ポケモン」やリメーク作品を中心に弁護士、スタジオ、エージェントのなかで仕事をしている。
〇日本ではクリエイティブとリーガルが分かれているがハリウッドでは一緒になっている。
〇スクリプトのミーティングからエンタロイヤーは参加する。
〇ハリウッドは日本の原作、アニメ、ゲームに注目している。ゲームの映画化は増えていく。
〇エージェントはクライアント(脚本、監督、俳優)の仕事を営業したりパッケイジセールスもする・
5%の手数料が相場である。
〇映画会社のエグゼクティブは60%~70%が弁護士出身。
◎アメリカではDVDの落ち込みがある。ネット配信やブロードバンドチャンネルが伸びている。
AOLは早すぎて失敗したがYHOOがTVシリーズや映画製作に乗り出している。
日本映画の海外のポジションはストーリーが面白いか。権利が明確になっているかが大切である。
アメリカは映画に一番お金をかけるので別のアイテムの動き(権利の分散)を歓迎しない。(リメークの場合フリーズされることがある)

Ⅲ、伝説のカリスマ・プロデューサー「角川春樹」氏講義(角川春樹氏)

〇「男たちの大和」の成立過程(20年前から)の説明。(海軍の衣装で登場された)
〇戦略論でなく“どういうスタンスで作るのか、自分で作る以上は危険負担を背負う。(製作資金の1部は自己負担、戦艦の製作費も負担している。(大和に乗った俳優やヘキストラだけが人が変わっていくが分かる)
今はほとんどが責任のない会社プロデューサーだ、東映だって駄目だ。プロデューサーも監督も映画会社も志がない。戦略とは志である!
〇戦術は素人に徹している。プロだと落とし穴が用意されている。20年前に角川が作ったメデアミックスを誰も超えていない!その真似ばかりである。
〇TVで出来ないのが映画である、TVがヒットしたからと言って映画化は安易である。
〇脚本も音楽もポスターもすべて自分がクリエイターと徹底的に闘う。
◎ネットと連携をして宣伝していく(YHOOと)。今後はネットで映画祭をやっていく計画。
◎「ホラー」他をネットで配信予定。
◎日本の映画会社を変えていく!
◎角川春樹みらいファンド(100億、現在は50億か?村上氏か掘衛門も参加か?)
*角川春樹氏いまだ衰えず健在なり。「大和」も興収70億は見えてきた、何とか100億にしたいとのこと。

Ⅳ、コンテンツファイナンスの理想と現実(トーマツ・伊藤雅之公認会計士)

◎コンテンツファイナンスの理想形はまだ見つかっていない。
〇コンテンツファイナンスを取り巻く環境。
都心部の不動産への資金の流入、地方の中核都市への投資の増大や株式市場の正常化と企業の収益率の増大。また銀行の不良債権の減少と財務の健全化で“新たな貸出先の開拓とフィービジネスとファイナンス手法の模索が行われている。投資家は新たなお金の運用先を求めている。
〇信託法の改正、匿名組合のみなし有価証券化(投資家の保護)、LLP制度の創設。
LLP(有限責任事業組合)は構成員課税、LLC(有限責任会社つまり合同会社)は法人課税。
知的財産を活用した共同事業に適している。
〇最近の映画ファンド(角川、松竹、三井住友、JDC,JDC+シネカノン)からコンテンツ企業の育成や地方の活性化と新しいスキームの構築の為、中小企業整備基盤機構出資のコンテンツファンドや東京都出資のアニメファンド、大阪府出資のデジタルファンドが出来た。
〇税務と会計の重要な視点として、コンテンツ製作費や買い付け費の減価償却の違いがある。
そのことが投資家の利益と会社側との差がある。
〇コンテンツ企業の価値の向上は知的財産権の価値のがマーケットバリューに反映していない。(放送事業者も同じことである)
◎ マーケットバリューを高めるためには、新たなコンテンツを生み出す仕組みとノウハウの確立と古いコンテンツの流動化が必要である。

Ⅴ、「世界の中心で、愛をさけぶ」「いま、会いにゆきます」の春名プロデューサーが語る大ヒット邦画企画術(博報堂・春名慶氏)

〇「世中」の目利きとはこのままでは映画にならないと思った。脚本家へは1ページの全体の構成案を提示する。3~4ヶ月間は徹底して本作りに参加する。
〇「世中」はカセット、「いま」は絵本、「電車」は定期、「春」はカルタをアイデアした。
〇「春の雪」はロミオとジュリエットにしようと思った。
◎ノイズを作る、お祭りを作る。そうして全方位でターゲットを囲い込んでいく。スピードアップも必要   
だ。口コミより携帯(即日開票)のほうが早い!洋画大作で10億の宣伝費を使ってもこけるのがある。
◎若い人は見て味わって終るのでなく発言しようと思っている。モバイルコミュニティー(メール、ブログ)。
◎著述エンタと映画エンタは違う。
小説を時空列に並べて映画に必要なものと不必要なものとに選別する。そうして裏に隠れている原作者のテーマを読み取る。
観客に未来を見せてあげる思いやりが、感動に結びつく。
「県庁の星」はポップでヒューマンをテレビのテンポで見せるためのTVのディレクター西谷氏にした。
*春名氏は「皆さんほどは映画を見てないし、小説も読んでいない。しかし自分が見たい、彼女に勧められる映画を作りたい」と言う。

Ⅵ、ミシェル・マナカの「ハリウッド流」映画脚本教室(ミシェル・マナカ氏)
メルギブソンの事務所でシナリオ(カバレージ)分析をしてきた。

〇一般からのシナリオ持ち込みは丁重に送り返すのがその後の著作やアイデアの問題回避となる。
〇脚本の10の基本、①構成ストラクチャー②キャラクター③商業価値④ストーリー⑤ドラマ性⑥コンセプト⑦シーン⑧緊張感⑨セリフ⑩セリフとアクションのバランス
〇ビートシートとは脚本の中でストリーを動かす行動エレメント。
〇脚本化には第1稿で数ヶ月、それから10~20回書き直す。1年はざらで2年も数年もかかることがある。
◎ハリウッド映画はどんなスタイルの映画でも三つのアクトに分析できる。日本は起承転結の四部構成である。
アクトⅠ  30ページ エスタブリシュ (背定を作りこむ、主人公はどんな障害や悩み     
を抱えているのか。登場人物はすべて出す)
アクトⅡ  60ページ ビルド       (作りこんだものを人と展開させて進行させる)
アクトⅢ  30ページ リゾルブ     (すべてをいっきに解決する)
〇アクトのファンクションには敏感であるり、ポテンシャルがあるかも見る。
◎主人公の性格を明確にして何を求めているかを明確にする。WONT
    アジア映画はWONTがぼやけてどうしたいのかわからない。無駄なシーンが多い。
◎主人公の求めているものがワンフレーズで語られるか。
主人公にオリジナリティーがあるのか、我々が共感できる悩みを持っているのか。
◎SHOW,NOT TELL(言葉で伝えるのでなく映像で伝える)
*もちろん日本映画のよさもあるから新しいシナリオメソッドを作りたいとの発言。

Ⅶ、新しいエンタティンメント・マーケティングの世界~流通編(ネオプレックス社長・前田章紘氏)
〇「DEEPLAVE」を30万枚売った方法。
メイジャーのTSTAYAやタワー等の販売網でなく秋葉原(石丸電気他)やコンビニを販売ツールにした。
顧客の立場で流通経路と売り場発想をした。(コンビニごとのパッケージ)
聖火リレー戦略(聖地をスタートして順次販路を拡大する)



以上。

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