「 甲冑拳法 柳生心眼流 」
島津兼治 著 (日東書院)
柳生心眼流は技術体系的に
前に紹介した立身流(たつみりゅう)と通じるところがある。
立身流は、向(むこう)・圓(まるい)という2つの形(かた)が
基本にあり、
立身流の居合・剣術の全ての形がこの2つの形の応用として
体系づけられている。
柳生心眼流も素振りという基本の独演形があり、
相対形(あいたいかた)は、この素振りの動作をそのまま使って
行われる。
また、武器の形も、この素振りの形を武器を所持した状態で
行うように体系化されている。
中国拳法の場合だと、套路と呼ばれる独演形と相対形との間に
やや飛躍がある。
そのため、
套路の「用法」ということを別途口伝で習う必要があったりして、
独演形をそのまま対人技法として使えば良いというようには
なっていないらしい。
空手の場合も、独演形を対人技法として使うには
空手型の解釈や意味づけが必要で、
その解釈・意味づけについて色々と説があったりする。
これら中国拳法・空手に比べると
柳生心眼流の独演形から相対形への体系は
極めて分かりやすくできている。
柳生心眼流の場合、素手の体術だけではなく、
鎧組打ち、太刀、十手、棒、半棒、火縄銃などの技法も含んだ
膨大な体系であるため、
汎用性の高い形を基本として、全ての技法はその応用という体系
にすることが最も妥当・適切であったためかもしれない。
技術の体系化という点で
柳生心眼流と立身流は日本武道・武術の双璧であると思われる。