人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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アルファブロガーの池田信夫氏と、労働政策学者の濱口桂一郎氏との間でバトルが起こったが、そして短時間の間に沢山の人がコメントをつけているが、ウェブの上で雇用・労働問題がこれほどホットなテーマになっているということに、強い印象を受けている。今後の社会を形づくっていく上での最重要テーマなのだ。

<池田信夫氏ブログと、その中の本件関連エントリ>
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo
<濱口桂一郎氏ブログと、その中の本件関連エントリ>
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/

注 (2007/10/13): トップページへのリンク以外は削除しました。いつまでも必要ないため。

これからの雇用や労働に関する議論を実り豊かなものにするためにも、思考のロジックについては意識しておきたい、という見地から、メモ書きとして本エントリをアップしている次第である。


濱口桂一郎氏の論説の後味の悪さは何なのだろうかと思う。官僚エリートらしい人格の発露は読み飛ばすとして、ロジックに大きな違和感を感じるのである。これは何だろう?知識は持っているようだが、その発想が根本的にワークしないように思える。「社会は設計できる」と考えているように思えるのである。ある条件の元では企業や労働者はどのような行動を選好し、その結果どうなる、という思考の順序ではなく、実現したい結果があってそれに誘導する、という発想である。例えば、次のような問題設定がそれにあたる。

社会の中でどうしても必要になるデッドエンド型就業を誰が担うべきかを検討していくことが現実的な対応でしょう。 もう一度、かつての主婦パートや学生アルバイトのように、一定の社会集団に、社会的排除を伴わずに、デッドエンド型就業を割り当てるとしたら、ありうるのは高齢者しかないのではなかろうかと思われます。(http://homepage3.nifty.com/hamachan/aomori.html

あるいは、次がそれにあたる。これも、ある社会集団から別の社会集団に人を誘導しようという発想だ。

今の正規労働者の保護を緩和してその分を今の非正規労働者に回していくという、辛気くさい作業を黙々とやり続ける以外に、「最終的解決」などありはしないのです。

これが官僚の発想というものだろうか?この違和感、そしておそらくは誤りを、今ここですぐにはっきりと説明することは難しいのだが、おそらく、上記のような思考方法はムダである。まさにそれは、辛気くさい、コストのかかる、不毛なものだろう。うまく説明できる方はいますか?

あるべき思考方法としては、なぜ人材能力発揮上/企業の人材活用上も不合理な世代的な偏り(就職氷河期世代の受難)が生じて、その不合理が時間がたっても解消しないのか、その非効率の原因を取り除いていく、ということになるだろう。

  • 年齢差別の撤廃
  • 企業間/企業内の人材流動が促されるような人事/組織運営慣行の導入
  • ・・・


なお、以前日経BPオンラインに、濱口氏がホワイトカラー・エグゼンプション制度について解説した記事があって、読んだ時に違和感を感じたのだが、あらためて読んでみたところ、あらためて意味不明の記事であると認識せざるをえなかった。氏は、ホワイトカラー・エグゼンプション制度は、

あくまで時間外手当の適用除外であって、無制限の長時間労働を容認するような労働時間規制の撤廃ではないのです。 (http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070201/118220/

と総括しているのだが、「労働時間の規制」と、「時間外労働を命ずるにあたって支払うべき手当についての規定」という、制度運用上表裏一体にならざるをえないものを、切り離して総括されても、ストーリーが完結に向かわない。思考のループが切り離されて拡散させられてしまったような違和感が残る。ここにも、「労働時間の適正化は、それはそれで規制すればできる」という、同根の発想があるように思う。


(追記)
労務屋さんが紹介されている、奥田碩経団連会長(当時)の講演の最後のパラグラフ(「おわりに-定年延長問題」)、特に次の部分が、官僚の発想と現実との間の齟齬をうまく言い表しているように思う。この奥田氏の指摘に尽きるのではないか。

 たしかに、現状だけを見れば、高齢者失業と若年失業の抱える問題は異なるものであり、坂口厚労相としては、高齢者は高齢者、若年層は若年層ということで、別々に考えておられるのかもしれません。しかし、われわれ経営の現場にいる者が見れば、経済や市場というものはさまざまな要因が有機的に絡み合った、いわば生き物であり、高齢者雇用と若年雇用を別々に考えるということは、およそ非現実的であります。



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