杉並のアニメ産業の取材記事。「アニメ文化は日本の競争力を担う」と言われながら、アニメ産業の働き手の収入面の厳しさはよく聞くところである。また国際競争にもさらされつつあり、将来が非常に見えにくくなっているという。一人勝ちと言われるスタジオジブリなどの一部を除いて、産業として成功しているとは言い難いようだ。
何が足りなかったのか?それは、産業の「組織化」だと言えるだろう。テレビ局の制作会社への従属関係も一つの要因だったということだが、アニメ制作を組織として遂行するビジネス慣行が確立せず、職人の集まりのまま、イノベーションもマーケティングも行われず、今日に至ってしまった側面があるようだ。
本来は、アニメーター達は、目的を共有する人の集まり=組織として次を体系的に行うべきだったのだろう。
- アニメが切り開く市場の明確化
- 目指すべき品質やコストのレベル設定
- アニメ制作プロセスの標準化
- アニメ制作者の職務やキャリアパス明確化
それがなされていなかったことが、記事中の関係者の発言の端々から伝わってくる。
- 「しょせん、アニメは趣味の分野」
- 「好きな仕事を好きなようにやりなさい」
- 「丁寧な仕事だけでなく、手早い仕事をアニメーターたちに教えるべきだった」
- 「晩年は人材派遣業のようになり、寂しそうだった」
「職人の集まり」を超える付加価値を生み出せなかったことになる。
経済産業省はそこに梃入れをしようとし、人材育成制度を用意しつつあるようである。例えば、「動画マン」「原画マン」「作画監督」という役割及びキャリアパスを想定して人材育成プログラムに助成をしつつあるようである。
しかし、前提となる、「動画マン」「原画マン」「作画監督」それぞれの役割が発揮すべき付加価値や、必要なスキル、キャリアについて、業界内でコンセンサスがまだとれていないことが記事からはわかる。
「モノならぬソフト」を産業化してきたソフトウェア業界のノウハウが注入されていればずいぶん違ったのではないかと思う。今からでも遅くないのではないか。