香菜里屋を知っていますか。
東急田園都市線の三軒茶屋駅。駅から地上に上がり、世田谷通りを環状7号線に向かって歩くこと200メートルほどのところを左折して、あといくつかの路地を右へ左へ進むと、やがて小さな路地裏に、ぽってりと淡い光をたたえた等身大の提灯が見えてきます。それが目印なんです。アルコール度数の違う4種類のビールを常備していて、最も度数の高いものはロックスタイルで供されると聞きました。カウンターにはヨークシャーテリアの精緻な刺繍を施したワインレッドのエプロンを身につけたマスターが、いつも人懐こい笑顔を浮かべているそうで。「今日は**の良いものが手に入りましたが」と彼が語りかけると、ほとんどの客がそれを注文し、幸福なひと時に酔いしれるのです。
『香菜里屋を知っていますか』 北森鴻著 講談社刊 P.140より
rose_kanpaiさまご推薦の香菜里屋シリーズ『花の下にて春死なむ』『桜宵』『蛍坂』の完結編です。こんな行きつけのお店があったらいいですよね。一応はミステリーなんですが、人情話・・・かな・・・。しかし、この完結編を読んで「へぇ~そうだったのか・・・」とちょっと以外な展開というか・・・ネタばれになりますが・・・好きだった女性がいつか見つけてくれるだろう、と15年待った男のお話です。昔のブログに「わたしは待つ女ではない」と書きましたが、案外男性の方が待つのかもしれませんね。
やはり男性の目線で描かれているので、女性の心理がイマイチ「えっ」って思うところが多々ありますが(ソウ思ウノハオマエダケ、ト相方ニヨク言ワレマスガ・・・)、話の展開が面白く4冊あっという間に読むことができます。普段自分のチョイスでしか読まない小説も、お友達の推薦する本を読むことで視野が拡がりますね。今度はあの本を読んでみようかな・・・。