ネット上では解散前の方がいいとあるけど、私は前のを観てないからわからへん。12月に見た舞台は私には十分良かった。
彼の持ってた解散前の公演のDVDをちらっと見たら、随分演出が変わってた。
こんなにも変えたんや、とびっくりした。
原作をより一層深めて表現してる、と思う。
原作よりもマリコは魅力的に描かれてるし、マリコと吉岡が映画を見るシーンとかはミュージカルの醍醐味やね。
映画のカサブランカをダンスで表現してて、イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガードを表現したダンスが凄い。
カサブランカの映画を観た人にはあの切なさがわかるやろうし、お遍路さんが歩いていくシーンも砂の器の映画を知ってる人には、ぱっとイメージ広がるんやろな。
私が一番凄いと思ったんは、竹やぶで患者の人たちが月の光で病気が治って自由に踊るシーン。
もちろん、現実にはないイメージの世界やねんけど、あのシーンは神の存在やら、精神性の自由さやら、夢や希望や全部を表現してて、一方では逃れられない現実の悲しみとか、とにかく凄い。
ベン・ハーの映画でキリストがゴルゴダの丘で天に召されて、雨が降る。
その雨に打たれたベン・ハーの母親と妹のハンセン氏病が治るシーンも思い出した。
きっと見る人の経験や感性で全く違って見えるんやと思う。それだけの余地も深さもある。
そこが凄いねん。
ああ、本物やな、と思った。
弟が中学の時に悪性リンパ肉腫で余命半年と言われて入院してた、森ノ宮の小児病棟を思い出した。
死を待つ子供たちと面会に通う家族たち。
あのころ、普通に暮らしてる高校のクラスメートたちが不思議に見えた。
いつも私の隣には死がいた。だから、死と関係無く暮らしてる人たちが逆に不思議に見えた。
その弟は26歳の夏、結局事故で脳死になった。
脳死になっても人工呼吸機によって心臓は動き続ける。
そんな弟の姿も私は見た。
人は身近に死を見ないと、命の貴さに気づかないけど、にんげんの命は実はかなりあっけないもんや。
そして心もあっけなく簡単に壊れる。
そんなこと全部含めて、あのシーンは凄いなと思った。
他にも素晴らしいシーンはいっぱいあった。
歌も曲も凄い。
特に演奏が凄すぎる。
これは音楽やってきたもんにしかわからへんかもしれへんけど、演奏は超一流や。
舞台に合わせて、あれだけの幅広いジャンルの曲を限られた楽器で表現しつくしてるのは凄い。
まさに音楽や。
ジャズ、ラテン、環境音楽から、クラシック、ロック、ラップまであらゆるジャンルを駆使して舞台を表現してて、楽曲も素晴らしい。
全部丸々、オリジナルやで。
しかも幕が下りるまでずっと演奏しっぱなしで舞台の俳優たちと息を合わしてる。
そんじょそこらのミュージシャンにはできへん。
超一流やねん。
舞台装置も凄い。さすが朝倉せつさんや。
とにかく一人でも多くの人に観て欲しいな、と思った。
ほんまもんは凄いで。
引き継いで行く若手が育つといいなと思う。
でもいいものを作るには資金もかかる
難しいな。
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