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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録にみる、「愛国雇用」

2009年05月09日 | 浜矩子語録
朝日新聞によれば、妖艶なエコノミスト・浜矩子が3日の憲法記念日、「九条の会・おおさか」という護憲集会に招かれ、「外国人より日本人の雇用を優先する「愛国雇用」の兆候があると指摘し、「差別や排除から平和が脅かされる」と危機感を示し、また、戦争を体験した母親が日ごろ、「二度と戦争してはいけない」と話していたことを紹介し、「戦争放棄を前面に出した平和憲法は何物にも代え難い」と語ったという。

小欄は、如何に浜矩子を尊崇しても譲れない改憲論者であり、まずは集団的自衛権問題を含めて憲法九条は改正しなければならず、そのためには憲法審査会の機能回復を急ぐべきであり、最終的に我が国は「自主的な憲法を制定すべき」と考えているが、本編では、憲法論議は他日に譲ることとする。

さて、浜矩子の上述「愛国雇用」発言はネットで批判的に騒がれた。
朝日新聞記事の脈絡から、「愛国雇用」発言と「護憲集会」との脈絡を切ることには無理があるとの非難を受けることは承知で、浜矩子の「愛国雇用」発言の真意を探ってみた。

(54) 君の内需は私の外需
浜矩子は、4月26日付毎日新聞・時代の風欄に 
~・~・~ グローバル時代の今日において、各国が外需の落ち込みを内需転換で補えると思うのは愚かだ。しかもその内需をお互いに開放し合わず抱え込むというようなことで、なんとかなるはずはない。みんなの内需がみんなの外需なのである。~・~・~
と書いた浜矩子は、5月3日付同紙同欄に、(57) オバマさんの百尽しを寄稿し、
~・~・~ それにつけても気掛かりなことが一つある・それはこのところの地球経済がちょっとした百鬼夜行状態となっていることだ。彼らを総称すれば保護主義という名の鬼でもある。その姿形は百様だ。
あからさまな輸入規制もあれば、愛国消費の奨励による事実上の輸入品締め出し行動もある。公的資本の注入を受けた金融機関は、国内の借り手を優先する愛国金融に傾斜していく。そして愛国雇用が、外国人労働者を肩身の狭い立場に追い込んでいく。~・~・~

浜矩子は、現下の世界恐慌を乗り切るには、世界が「自分さえよければ病」から脱却するしかないとも言い、特に保護主義の台頭を危ぶんでいる。
前述「九条の会・おおさか」における「愛国雇用」という言葉だけでなく、「愛国消費」「愛国金融」という言葉にも注意を払えば、浜矩子の「愛国雇用」発言が、批判に当たらないことが理解できる。

●「日本も中国もアジアの内需」
8日付産経新聞に、日本生産性本部会長・牛尾治朗氏のインビュー記事が掲載された。
牛尾氏は次のようにインタビューを締めくくった。
~・~・~ 日本はアジアに対する外需を大事にし、日本の市場をアジアの内需として開放する。つまり「日本も中国もアジアの内需である」ということです。~・~・~
このように、百年に一度の経済危機を迎えた昨今、有識者の間で「愛国消費」「愛国雇用」「愛国金融」という独り善がりが通用しない事態であるとの認識が高まってきたことは、浜矩子の功労と言っても過言でない。

●マザー・テレサに似た道
さて浜矩子は、エコノミストではなく「コミュニストか?」「伝道師か?」と疑われるような発言をすることがある。
それは、世界各国が保護主義に見られる「愛国消費」「愛国雇用」という考え方に埋没すれば、世界経済がデススパイラルに陥ることへの危惧から生じた警鐘である。

7日付日本経済新聞の春秋欄の文末に、新型インフルの各国の対応について「疫病は人の心の垣根を高くする。姿が見えない敵におびえるあまり、外国から来た隣人を避ける“副作用”が怖い」とあった。
香港当局は、新型インフル防疫という言い訳でメキシコ人を送還し、日本人も一週間ホテルに隔離されたが、この動きは「愛国防疫」以外のなにものでもない。

浜矩子の言う「愛国」は日本という一国家を指すのではなく、米・英・仏・独・伊・中・露などG8であり、G20であり、世界の国々である。
浜矩子の「愛国雇用」発言は、このような世界の為政者たちに対して「恐慌という敵に、垣根を高くするな」との動機で発せられたものである。

であるから、浜矩子が、例えばWTOなど国際会議などで「愛国雇用」「愛国消費」を非難したなら、大喝采を浴びたに違いない。

それにしても、世界の「愛国」を排除することは至難の業だ。
浜矩子は、難しい道を歩み始めた。マザー・テレサのような道だ。

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1 コメント

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証券化とは、まやかしの手管 (安藤伊代)
2009-05-11 00:55:50
証券化とは、まやかしの手管か?

真実を覆い隠す詐欺的手法かもしれない

続く
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