坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

新世代への視点2011 社会と個の接点

2011年08月01日 | 展覧会
銀座、京橋界隈は1970年代頃から、若手のアーティストの作品発表の舞台として歴史を刻んできました。現在では、アートの発信基地は展示空間の拡大を求めて木場や新富町など倉庫群を活用したギャラリーも増え、地域も広がってきました。
今年で12回目となる〈新世代への視点〉は、前線のアートシーンを担ってきた銀座・京橋の11画廊が同時期にそれぞれ一押しのアーティストの個展を企画する試みで、今年で12回目を迎えました。
40歳以下を対象にした作品は、今日的な多様な表現でありながら、トレンド的な流れとは一線を画した自らの表現の手法や素材、表現媒体にこだわった作品で、混沌とした社会の中で個の存在を確かめようとする試みがみられます。
ギャラリーなつかでの堀藍さんの「JUZU」のインスタレーションの作品では、漠とした白い画面の空間に小さく人物がドローイング的に描かれ、空間には網目状の小さい半円形の袋がぶら下がり、漂流する人間像を思わせるようでした。
GALERIE SOLの角文平さんの「空中都市」は、家という社会の一単位をテーマに、高層化していく家を、いくつもの細い鉄棒の上に木の家のミニチュアを配し、今日的な現象を象徴化していました。
・掲載の三浦健さんの「幸福画報・富と豊かさの理性的認識を目指して・卒園」(ギャラリー58)は、横3m以上の大作で、子供たちの集団肖像画と言えるでしょう。社会的制度の中で決められる幸福感をテーマとして、その記念的一シーンを一人ひとりの表情を克明に描くことで、表現の強度を高めています。

◆新世代への視点2011/開催中~8月6日/主催・東京現代美術画廊会議 事務局、藍画廊