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永田(ながた)のひょっとこ踊り

2010年12月02日 01時09分55秒 | 民俗芸能
永田(ながた)のひょっとこ踊り

 

市町村名
 日向市大字塩見永田

 日向市無形民俗文化財

 元祖ひょっとこ踊り


滑稽な所作が面白く、宮崎県内でもおなじみのひょっとこ踊りであるが、
実はその元祖は日向市塩見の永田地区である。
ひょっとこ面(ヒョウスケ)・おかめ面・狐面を着けた踊り手が登場するが、
言い伝えには次のような話がある。昔、オカメという村の若者が憧れる美女がおり、
その婿になったのがヒョウスケであった。

しかし、二人は子宝に恵まれず、毎朝、村のお稲荷様に祈願していた。
ある朝、二人が供えた赤飯に空腹だった神主が手を出してしまい、
これを見たお稲荷さんが怒って姿を現したが、美しいオカメに心を奪われてしまう。
止めに入ったヒョウスケや若者たちを交えての大騒ぎの様子を踊りにしたという。

また、この言い伝えを元に明治時代に眼科医の橘公行が付近の青年たちに教えたのが始まりとも伝える。

狐・おかめが各一名、ひょっとこ(ヒョースケ)に笑い面と年寄り面を合わせて一二名前後、
そしてほうき踊り一名、この順序で登場して来る。

また伴奏は鉦と太鼓と笛がそれぞれ一名で、唄は付かない。
これが永田地区の古くからの踊り手の構成である。

狐は白長袖下着に赤い法被を羽織り白帯を結ぶ。
白手袋、白いステテコと白足袋を着け尻尾を下げる。
おかめは赤留め袖に太鼓帯を結び、白足袋に手拭いを被る。
伴奏の鉦打ち・太鼓打ち・笛吹きは、赤着物に白帯姿、黒足袋、手拭いを被り褌を着ける。
この中の一人は、神官姿の白い着物に青い袴という装束で、頭に烏帽子を被る。

演技の基本は手と腰と足である。
差し出す手は腰から肩までの間で行われる。
視線を差し出した手に向け、首を回してから手先へ戻す。中腰で肩幅より少し広く足を開く。
出した足は爪先で立ち、踵を浮かす。ステップを踏んだ時に、体を後ろに引いて大きく見せる。
狐は拳を握り、ぐるりと回しながら踊り、おかめは立ち姿で優しい所作をする。
ほうき踊りはほうきを手にし、飛び跳ねながら楽しそうに踊る。
初めはゆるやかに踊り、次第に調子が早まり、高揚し最後のほうき踊りは実に躍動的である。

ひょっとこ踊りは、大衆化に伴い、見物客に媚を売る卑猥さが、強調されるようになったため、
「元踊り」の良さを認識してもらう目的で、「日向橘ひょっとこ踊り保存会」が結成され、
発祥地の「元踊り」の普及を図っている。


毎年二月の初午の日に山ノロ稲荷神社に奉納されていたが、現在は、永田地区集落センターで行なわれている。昭和五十八年から始まった、八月初旬の「ひょっとこ夏祭り」や「日向十五夜祭り」の他、各種の観光イベントの場で、不定期に上演されている。近年古くからのこの地区の踊りを模したひょっとこ踊りが増え、紛らわしくなってきたことから「永田のひょっとこ踊り」と呼ぶようになった。


参考文献
『宮崎県の民俗芸能』宮崎県

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