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東京目黒から山梨へ育児のためにお引越し。40代高齢出産ママの雑記帳です。

斑鳩王の慟哭(黒岩重吾)

2008年08月27日 | 本のこと
斑鳩王の慟哭 (中公文庫)斑鳩王の慟哭 (中公文庫)
黒岩 重吾

中央公論社 1998-09
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斑鳩王というのは、厩戸王子(聖徳太子)のことです。

聖徳太子は、ご存じの通り、推古天皇の皇太子として蘇我馬子と一緒に外交をはじめとする政務に当たった人物で、遣隋使の派遣や官位十二階を定め天皇の中央集権を高めることに尽力したことで有名です。

本書では、聖徳太子の晩年と、太子没後の上宮王家の滅亡までが描かれています。仏教に造詣が深く、博識で、一度に10人の話を聞くことができたなど人間離れした伝説が有名な聖徳太子ですが、本書の中では、博愛主義で理想家で悩み多い凡夫(仏教用語で普通の人の意味)として描かれています。理想的な人間像・国家観を持ちつつも現実はそうは行かないことから厭世感を募らせ、政治から距離を置くようになるまでの心境や、年老いて太子を頼り切る母親を疎ましく思いつつも突き放せないところや、息子の山背大兄王を天皇にするために蘇我馬子や推古天皇を相手に政治的な駆け引きを繰り広げるところは、歴史の教科書には絶対にない面白さです。

だいたい歴史の教科書では、推古天皇は中継天皇として聖徳太子を全面的に信頼して政治を任せていた云々とあったのに、本書の推古天皇はしっかりと権力を握り、複雑な血縁関係の中で自分の血統に執着する凄まじい人物として描かれていて、推古天皇の権力を改めて見直した作品ということらしいです。

この当時の血縁関係は本当に複雑で、表を手元に置きながら読み進めないとすぐにこんがらがっちゃうのですが、こういうときはマンガもけっこう頼りになります。

今回は、いっしょに「暁の回廊」を読んで何とか混乱を防ぎました。

暁の回廊 【コミックセット】長岡 良子B00007CEM4

古代ロマンシリーズで有名な長岡良子の作品で、聖徳太子や推古天皇没後の中大兄皇子の少年時代(葛城王子時代)の物語です。本筋からはずれたところで、聖徳太子の長男である山背大兄王子率いる上宮王家の滅亡に関する記述がありますが、上宮王家の評価や山背大兄王と舂米女王の関係に関する解釈は少し独特です。

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