我が家の地球防衛艦隊

ヤマトマガジンで連載された宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部「アクエリアス・アルゴリズム」設定考証チームに参加しました。

ヤマトⅢの“護衛戦艦”を箱庭の中で妄想してみる③

2012-08-07 14:38:41 | 1/1000 宇宙戦艦ヤマトⅢ 護衛戦艦
さて、最終回である第三回はPOW編ですね。
アリゾナ編は感情(感傷?)過多でしたので、POW編は努めて冷静にいきますw
デザイン的な特徴が非常に多く、自分が勝手にイメージした艦としての基本コンセプトに、それらを無理やり(笑)コジ付けていく作業が楽しかったです。


(注:本記事内の画像は『大隈雑記帳』大隈様より御了承いただき、転載させていただいたものです。無断転載等は之を固く禁じます)

【プリンス・オブ・ウェールズ級護衛戦艦】



 英国が建造した『プリンス・オブ・ウェールズ級護衛戦艦(以下POW級護衛戦艦)』は、当時各国で競い合うように建造されていた『星系間護衛艦艇調達助成制度』適用艦の中でも、他とは大きく異なるコンセプトで建造されたことで知られている。
 他国の『護衛戦艦(第一種艦)』『護衛巡洋艦(第二種艦)』の大半が程度の差こそあれ、その国が建造し得る“最強の艦”として完成が目指されたのに対し、POW級はその対極ともいうべきコンセプトで以って完成が目指されたからである。


 本級が目指したものは、第一に経済性、第二に性能最適性の追究であったとされる。これをやや大げさに言い換えれば、『“護衛戦艦”に必要とされる最適性能(最低限度の性能)を明確化し、それを最も高い費用対効果で(安価に)達成し得る艦』となる。
 “安価”を示す一つの基準として、本級の乾重量は護衛戦艦(第一種艦)の最低基準として定められた四万トン丁度を目標とすることが計画開始当初から決められていた。
 また、“最適性能”についても、ガミラス戦役から直近のデザリアム戦役に至る全宇宙戦闘記録が徹底的に見直され、再評価されただけでなく、恒星間航路護衛任務の実体把握も急がれた。とはいえ、当時の恒星間航路は精々一〇光年内外の短距離航路ばかりであったから、一〇〇光年・一〇〇〇光年規模の長距離航路護衛については地球人類全体でも実績・経験共に皆無だった。その為、宇宙戦艦ヤマトのイスカンダル往復や太陽系外周第七艦隊のデザリアム帝国本星遠征時の記録を元に、現在基準の延長線上でシミュレーションを繰り返し、長距離護衛任務において発生するであろう問題点と課題を一つ一つ検証していくしかなかった。
 ひどく手間がかかる割に、効果と結果が見出しにくいその検討は“画餅”などとも一部で揶揄されたが、二三世紀のジョン・ブルたちは全く斟酌しなかった。
 当時は、“護衛戦艦”というカテゴリー(艦種)そのものが全く未知の存在であり、まずはその定義付けこそ必須であると彼らは確信していたからだ。その点、嘗て世界の七つの海に覇を唱えたロイアルネイヴィーの末裔たちは、どこまでも原理原則に忠実だった。そしてそれは、本制度の意図を理解せず(あるいは意図的に無視して)、無邪気に“最強戦艦”建造へと突き進んだ各国との“格”の違いを見せつけるものでもあった。
 将来、POW級として完成することになる護衛戦艦の基本設計案がまとまったのは、各国の中でも最も遅い時期だった。しかも、英国設計案は、既に公表されていた合衆国のアリゾナ級や独国のビスマルク級等と比べても特徴に乏しく、注目されることすら稀だった。某国の高官などは非公式の談話として『今が一八世紀か一九世紀なら、上には(自国政府には)絶対に欺瞞情報だと報告している』と失笑を交えて語ったほどだ。
 もちろん、こうした評価にも、少数ではあるが例外も存在した。一つは地球防衛艦隊の空間航路護衛部門、そしてもう一つは(やや意外なことに)日本国であった。英国が執拗とも取れる熱意で取り組んでいた遠距離航路護衛研究そのものに興味を抱いていた防衛艦隊航路護衛部門はともかく、日本国が英国建造艦に強い関心を抱いていたのには理由がある。
 実は、日本国建造艦もカテゴリーこそ違えど、英国艦に類似したコンセプトで以って計画と建造が進められていたからだ。日本国が建造していたのは、より小型の第二種艦(護衛巡洋艦)であり、英国艦以上に世界からの注目は薄かった。建造計画発表当時、日本はヤマトの存在があるが故に、第一種艦建造を手控えたのだと各国関係者から論評されたほどだった。
 しかし、実態はそれほど単純ではなかった。日本も英国とほぼ同じ思考プロセスを経て、中型護衛艦艇における経済性の追求と、最適性能の見極めを行おうとしていたからである(それ故か、日本建造艦の乾重量も第二種艦としては最低条件の二万トン厳守を目標としていた)。嘗て隆盛を誇った海洋帝国・海洋国家が偶然とはいえ、同様の建艦方針に辿り着いたのは、やはり歴史的経緯に起因する通商路喪失に対する根源的恐怖だったとも言われている。
 余談だが、後に日本国建造艦は『ユウバリ級護衛巡洋艦』として完成し、更に後年、地球防衛艦隊における標準艦艇の一つ、『アキヅキ級宇宙駆逐艦』の原型にもなっている。




 そうした外部からの評価はともかく、公表されたPOW級の性能に取り立てて特徴が無いのは事実だった。
 主戦装備は、ボロディノ級主力戦艦と同じ五〇口径一六インチショックカノンを連装形式で四基八門装備、決戦兵器もボロディノ級と同クラスの拡散波動砲一門を搭載しているだけだった。その他は、各種誘導弾やパルスレーザー砲をはじめとした近接防御兵装が精々で、多少目新しいところでも、亜空間攻撃が可能な波動爆雷専用VLSの装備くらいであった。
 これでは、他国がPOW級の戦闘能力をボロディノ級にすら劣ると評価したのも無理はなかった。特にショックカノン装備数に着目すれば、そうした判定も妥当と思われた。一部では、独国のビスマルク級と同様に発射速度で門数の不足を補っているのではないかという観測もあったが、実態は異なり、発射速度もボロディノ級のそれと大差なかった。
 しかし、当の英国人たちは大きな問題を感じていなかった。確かに、POW級の性能指標決定においてボロディノ級は非常に大きな位置を占めていたが、それは決して“凌駕すべき”対象としてではなかったからである。
 徹底的な過去の戦訓分析から、英国人たちはボロディノ級主力戦艦の戦闘能力は、“戦艦”として必要十分なものであると判定していた。より積極的に言えば、ボロディノ級は“戦艦”として充分に強力であり、それ以上の能力付加は、費用対効果に見合わない過剰能力になる可能性が高いという判断であった。
 もちろん、アンドロメダ級やヤマト級、アリゾナ級のような、より強大な戦闘能力を有していなければ打破できない戦術状況も確かに存在する。しかし、常識的に考えて、そのような状況が本級の建造目的である“航路護衛任務”において発生する確率が万に一つ以下にすぎないのもまた事実であった。
 英国は、POW級に“常識的”航路護衛任務に不要・過剰な装備を施す意図は全くなく、砲装備についてもボロディノ級に伍することができれば充分と判断していた。しかし、ならば尚の事、ボロディノ級と同様の三連装三基九門装備が必須ではないかという思考もあったが、今度はPOW級に課せられた現実がそれを許さなかった。POW級は四万トンという乾重量の中で五万トン級のボロディノ級に匹敵する戦闘能力と、ボロディノ級には存在しない長期・長距離航宙任務用の各種装備を搭載しなければならなかったからである。
 確かに、ボロディノ級主力戦艦は将来の発達改良を見越した冗長性と拡張性に秀でた設計で知られていたが、さすがに一万トンを超えるような余剰マージンまでは存在せず、加えて長期航宙用装備の重石まで抱えるとなれば、何らかの取捨選択は避けられなかった。
 その為に、主砲戦能力については、“艦首対敵姿勢における戦闘時に限り”ボロディノ級と同等とすることが指標とされた。当時は、ようやく戦艦級艦艇においても前方指向火力重視の姿勢が強まっており、POW級が掲げた、投入される戦術局面を限定した能力設定は、当時最新の空間打撃戦思想を可能な限り反映した結果と評せなくもなかった。
 その結果、POW級は連装砲塔四基の装備ながら、前部甲板に三基六門、後部甲板に一基二門装備という(かつての水上艦艇設計思想からすれば)やや変則的な砲塔配置が行われることになる。しかし、本配置を採用することで、少なくとも前方指向火力はボロディノ級と同等となり、若干ではあったが艦体重量の低減(三連装三基九門搭載時に比べて)にも成功している。
 尚、前方指向火力をボロディノ級と同等とする為に前部甲板主砲塔を三連装砲塔二基とする案も当然ながら検討されていた。だが、砲一門あたりの砲塔重量効率では有利と分っていても、連装砲塔採用時より艦幅を増す必要があったこと、また本級独自の波動砲搭載形式の決定により、前部上甲板のレイアウトが(特に全長方向に)余裕が得られることが判明した為、三連装砲塔案は不採用とされている。


 艦体設計についても本級は大きな特徴を有していた。特異な建造経緯を持つソヴィエト連邦のノーウィックを除き、各国の護衛戦艦が軒並みボロディノ級やアンドロメダ級と同様の直胴箱型艦体を採用していたのに対し、POW級は巡洋艦クラス以下の艦艇で多用されていた紡錘型艦体を部分的に採用していた。
 その理由は、本級の目指した速力性能にある。英国人たちは速力性能に関しては一切の妥協を見せず、各国護衛戦艦中最速の三二宇宙ノットを最大戦術速力として計画していた。
 彼らが想定する航路護衛任務において、戦略・戦術共に優れた速力性能は必須であった。航路上の要救援船(艦)の下へ急行するにも、直衛中の護衛対象に害を為さんとする敵性勢力の阻止・妨害にも速力性能は極めて重要であり、本級の“護衛戦艦としての価値”をコストやカタログスペック以上に高めてくれるものと判断されていた。
 世界で初めて『巡洋戦艦』『高速戦艦』というカテゴリーを創造した英国人らしく、彼らは“速力”というファクターが他では代替の利かない戦術・戦略要素であることを知り尽くしていた(過度に重視し場合の危険性も含めて)。故に、艦体設計においても、速力性能達成を重視した特異な形状が採用されることになった。




 スマートな箱型の艦体主要部に、巡洋艦のそれを思わせる巨大な紡錘型機関部を接続するというPOW級の外観形状は、こうして決定された(艦首側上方から俯瞰した際の特異な形状故に、就役後の本級には“万年筆〈fountain pen〉”という愛称が奉られることになる)。
 之は、求められた高い速力性能を達成するには、波動機関をできるだけ大型化する必要があり、主要部からそのまま延長した箱型の艦尾構造では到底納まり切らなかった為だ。
 もちろん、より大直径化した箱型機関部を艦尾に接続するという選択肢もあり、“戦艦”として考えるのであれば、防御要件上は寧ろその方が望ましかった。しかし、大型の機関部まで一六インチショックカノン対応防御の箱型構造としてしまえば、防御装甲も含めて著しい重量増加は避けられず、最終的にはやや軽防御(一〇インチショックカノン対応防御)の紡錘型が採用されている。
 その結果、紡錘型の艦後部(機関部)は本級の防御上のウィークポイントとされ、その点を以って本級を悪しき意味での『巡洋戦艦』と評する声もある。しかし、本級は大規模宇宙会戦における本格的な殴り合いを想定した艦ではなく、また、その戦闘能力についても艦首対敵姿勢での戦闘 (敵艦に対して艦尾は晒さない) を前提としていた為、投入すべき戦術局面を攻守に渡り極めて明確にした(割り切った)艦と言えなくもなかった。
 実際のところ、本級は護衛戦艦として長期に渡り運用が続けられることになるが、防御上の欠点を指摘する用兵側の声は殆どなく、寧ろ、発生するあらゆる局面に“間に合う”健脚こそが高く評価されている。




 これに対し、機関部を除く艦の主要部は一六インチショックカノン対応防御が施された六角形箱型構造が採用されており、その“上部”と“下部”でも大きく様相が異なる。より目を惹くのは下部構造で、波動砲口と星間物質(タキオン粒子)収集口が一体形状で設置されていた。二つの機能を一体化させることでの重量軽減はもちろん、省スペース化によって各種長期航宙用機材の搭載空間を確保することも目的としていた。
 また、波動砲口が艦首先端部に存在しないのも、地球艦としては初めての試みであり、本級最大の特徴とされている。
 之には二つの理由がある。一つは純粋な建造コスト削減、そしてもう一つは、“護衛戦艦”として本級が搭載を義務付けられていた各種設備の搭載スペース確保の為であった。
 建造コスト的には、コスモナイト合金をはじめとする高価な希少金属を大量に要するエネルギーパイパスの距離(機関部から波動砲口への伝導管総距離)は短いほど望ましい。しかし、従来の地球艦艇においては“波動砲口は艦首に存在する”のが常識であり、この距離を縮めるということは、艦中央から艦首にかけての長さ(空間)を短縮することと同義であった。しかし、それでは本級が搭載しなければならない長期航行用装備の搭載スペースまで著しく圧迫してしまうことにもなり、相反する二つの要因を抱え込むことになった船殻設計部門は大いに頭を悩ますことになった。
 最終的に設計部門が弾き出した結論は、艦体の上部と下部で目的を明確に二分するという方法であった。上部は、各種装備の設置を目的として、できるだけ(艦としてのバランスを崩さない範囲で)延長する。これに対し、下部は星間物質収集機能と波動砲関連設備に特化し、砲口までの距離が最短となるよう設計する。
 言うまでもなく、過去に例をみない大胆且つ野心的な設計であり、しかしそれだけに、解決すべき課題も多かった。最大の問題は、投射の際に波動砲の射線“の上”に位置することになる上部艦首下面側の防護措置であった。波動砲の放つエネルギー流は、実用化初期の頃には“宇宙規模”とまで評されたほどの凄まじいものであり、それに直近で“舐められる”ことになる上部艦首の下面には厳重な防護対策が必要であった。
 最も直接的な解決方法は、伝導管などにも用いられている特殊素材の使用であったが、それでは砲口位置を移動したことによるコストメリットが完全に失われてしまう(寧ろコスト増となる)為、当初から案として取り上げられることはなかった。
 設計陣が採用したのは、アリゾナ級の波動砲口に採用されたものと同じデザリアム帝国の遺産――超重力技術であった。アリゾナ級が砲口部に超重力フィールドを展開したのに対し、POW級では波動砲発射時にエネルギー流に炙られる艦首部下面側にフィールドを展開することで影響を回避していた。
 実際、波動砲口の移動というコロンブスの卵的発想は、建造コスト低減にかなりの効果があった。伝導管総距離はボロディノ級に比べて三〇パーセント以上も短縮され、それがほぼストレートに高価な希少素材費や高い精度を要求される精密加工費の低減に繋がったからである。しかし、大きなコストダウンを達成した本級の波動砲設置形式が、それ以降の地球艦艇に採用されることは遂になかった。
 理由は幾つかある。
 最大の問題は、超重力フィールドが波動砲に及ぼす影響であった。フィールドは確かに、艦体に及ぼす様々な悪影響を無効化していたが、それと同時に、投射された波動砲エネルギー流にも影響を与えていることが明らかになったからである。影響は、非常に僅かながらも射線の振れや、拡散点(爆散点)のずれとなって表れた。
 同じ技術を用いたアリゾナ級は、波動砲口全周にフィールドを展開するという方式であった為、その中心を貫く格好になるエネルギー流への干渉も均一で、こうした悪影響は発生しなかった。しかしPOW級の場合、エネルギーへの干渉が艦首下面一方からのみである為、射線への影響が避けられなかったのだ。
 それは、単艦戦闘レベルであれば全く問題のない程度の影響であったが、艦隊規模の統制波動砲戦を金科玉条の決戦戦術とする地球防衛艦隊にとっては違った。戦術構成上、看過し得ない重大な問題として認識されてしまったのである。
 しかし現実問題として、本級の搭載形式に起因する波動砲への影響が実際的な不利や不便を生じさせるかと言えば、その評価には疑問を覚えざるを得ない。判明時点ですら、その影響は極めて僅かであったし、フィールド出力を最小に抑えるといった技術的努力や、影響そのものを照準計算に織り込むといった運用上の工夫が継続して行われたことで、長い現役期間の中でも、本級の実運用者側から不満が述べられることはなかったからだ。
 ある意味、地球防衛艦隊に深く根強いた、半ば病的なまでの“波動砲絶対(潔癖)主義”の壁が、本級の画期的な波動砲搭載形式の普及や発展を妨げてしまったと評するべきなのかもしれない。
 しかし、本級の波動砲搭載形式に対する懸念は他にあり、波動砲発射時に超重力フィールド発生に何らかの問題が生じてしまえば、実質的に波動砲が使用不可能となってしまうという指摘等は、地味ながらも現実的な問題点として認識されていた(もっとも、それはアリゾナ級も同様であったが)。
 結果的に、コスト削減には大きな成功を収めつつも、本級の波動砲搭載形式は以後の艦に採用されることはなかった。その事実を以って、波動砲搭載形式が本級の数少ない欠点とする指摘もあったが、英国政府及び軍は一度としてそれを公式に認めていない。
 やはり――彼らは“ジョン・ブル”であった。




 もちろん、英国人たちがコストと重量の低減に注いだ努力はそれだけではなかった。戦艦級艦艇としては非常に簡素にも見える艦橋構造物もその一つである。事実、その艦橋内容積は後のアムステルダム級戦闘“巡洋艦”よりも小さかった。
 これは、従来の艦橋機能と配置人員の多くを、ヴァイタルパート内部の戦闘指揮所(CIC)に移した為であり、機能そのものを艦から削減した訳ではない。艦橋は、ヤマト以降の艦艇設計において、最も重防御が要求される部位として認識されており、重量軽減に血道を上げるPOW級にとって、その小型化は避けて通れない道であった。
 元々、CICはヴァイタルパート最深部に設置されており、これを従来より大型化するのは、空間確保はともかく、大きな重量増には繋がらなかった。また防御面では、艦の頭脳ともいうべき重要部が最も重防御で守られることにもなり、機能を分散した艦橋にしても、被弾面積が確実に減少することから、発想としても合理的だった。
 但し、従来艦の設計では、艦橋とCICに重要機能が分化されることで、被害極限や代替機能が確保されていたのも事実であり、ダメージコントロールの専門家の中でも本級の設計思想については意見が分かれている。
 また、艦橋サイズ上、どうしても小型化が避けられなかった艦橋トップの主レーダーシステムについては、艦体各部に設置されたフェイズドアレイ式レーダーで補うものとされた。


 英国艦としての本級の建造は、ネームシップとなった『プリンス・オブ・ウェールズ』と『キング・ジョージⅤ』の二隻であった。二隻同時の建造開始であり、英国政府は、より安価な建造費で完成した艦をネームシップとして採用すると通達、建造を担当する工廠間の競争すら煽った(もちろん、不正防止の為に、各種検査作業は厳重且つ厳密に実施された)。
 その結果、プリンス・オブ・ウェールズが建造コストのみならず建造期間でも優越し、晴れてネームシップの栄冠を勝ち得ている。
 尚、建造艦をあえて“英国艦”と限定したのは、本級が他国からの発注によって多数追加建造されたからだ。
 やはり旧来からの繋がりの強い旧英連邦諸国が多く、インド、カナダ、オーストラリア、マレーシア、南アフリカが各一隻を購入、しかしそれ以外でもブラジル、オランダ、インドネシア、サウジアラビア、アルジェリアが各一隻を発注している。自国艦も合せれば、実に一二隻もの大量建造であり、本級が“ベストセラー”と称される所以である。
 本級がベストセラー化した最大の要因は、やはり建造単価にあった。本級の最終的な建造コストは、各国護衛戦艦中最大最強と称されたアリゾナ級の四分の一(乾重量は二分の一弱)に過ぎず、英国が本級のコスト低減に投じた努力の大きさを窺い知ることができる(もちろんそこには、結果として多数艦建造となったことによる量産効果も含まれる)。
 但し、それほどの努力を払っても尚、建造当初から目標とされた乾重量四万トン丁度を達成することだけは遂に叶わなかった。
 2208年度版ジェーン宙軍年鑑に記された本級の乾重量は、『四万四千トン(公称)』であった。


 その特徴的な艦容から『ジョン・ブルの万年筆』とも称されたPOW級護衛戦艦は、同級艦多数が就役していたこともあって運用コストも良好で、恒星間航路の護衛・保安戦力の中核として長きに渡り運用された。アリゾナ級のような輝かしい戦果・戦歴にこそ無縁であったものの、遭遇した戦闘局面はかなりの数に上る。
 その中には、ボラー連邦正規軍との偶発的戦闘をはじめ、半ば宙賊化していたデザリアム帝国残党やディンギル帝国残党との交戦もあった。しかし本級が戦闘能力の点で敵性勢力に遅れを取ることは一度としてなく、戦没艦も発生しなかった。


 本級に投ぜられた数々の新機軸は、決して奇をてらったものではない。求められたスペックを達成する為に、時に必然として、時に苦難の末に生み出された技術や発想ばかりだった。それが画期的であったのは、単なる結果論にすぎない。
 残念ながら、それらの技術全てが後年において正当に評価されたとは言い難かったが、それら全てを一つにパッケージングしてみると、本級が極めて正統的且つ健全な“護衛戦艦”であったという事実が明らかになる。それは、地球連邦よりも遥かに経済・予算規模が限られるが故に、費用対効果に対してよりシビアな各国宇宙軍に本級が多数採用されたことでも間接的に証明されている。
 そしてそれは、時に頑迷とまで評される英国人たちこそが、“護衛戦艦”というカテゴリーについて、最も正しく(制度を創設した地球連邦よりも)理解していたことの何よりの証左であったのかもしれない。


―――おわり。

やっぱりアリゾナほどには文章量が伸びませんでしたーーー。
てか、アリゾナが伸びすぎなんだよー(^_^;)
それにしても、“ジョン・ブルの万年筆”とか勝手に名づけてしまって、画像をお借りした大隈さん、もしお気を悪くされておられましたら、本当に申し訳ありませんm(__;)m
そういう異名があった方が、より“らしい”かなぁーとか思ってしまって悪ノリしました (汗)
それと、大隈さんのブログでの御説明を拝読する限り、ボロディノ級が五万トンクラスでPOW級が四万四千トンって模型サイズ的には合致していない気もしています(むしろPOWの方が重量ありそうかも?)。
しかも、アリゾナの半分とかまで言ってるし・・・・・・(;´Д`A ```
ま、でも、そこは・・・・・・妄想上の“過剰演出”ってことで、目をつぶってやって下さいましm(__;)m

今回の妄想を通じての私のPOW評は『清く正しい護衛戦艦』『金持ちども(連邦とかアンクル・サム)にはコイツのすごさが分らんのです』ですw
『さすがはロイアルネイヴィー!!』という極めて妥当な(必要十分な)性能設定と、それを実現する為に取り入れられた数々の革新設計。残念ながら地球防衛艦隊の保守性や時勢によってメジャー化しそびれて・・・・・・そんなイメージでしょうか。
その点、『殴り合い上等!!目指すはとにかく最強戦艦!!』として妄想したアリゾナとは、上手く差別化できたんじゃないかなぁ・・・・・・と自画自賛してみたり(^_^;)
うん、フネとヒコーキの違いはありますし、深い考えがあっての意見でもありませんが、ラプターとタイフーンの関係みたいな感じもありますかね?(違っ)
私、タイフーン好きですよ、空自がFXで採用したら、欧州機運用の大変さはもちろんあるでしょうけど、すぐに調達できる状態で、それなりの数を調達できる価格で、必要最低限の性能もしっかりと持っている、しかも、交渉によってはライセンス生産もOK・・・・・・一体、どこに文句があるというのだ?w
ま、結局この国では“有事”という言葉は存在しても、基本的には絵空事、『明日起きるかもしれない』という緊張感が皆無なので、いつちゃんと売ってくれるのかも分らないモノを気長に待てるのかも。
等とグチってはみたものの、どうだろうなー。欧州機運用の大変さって、実際にやってみないと本当のところは分からないですし、でも、もしF-35がちゃんと実用化されたとしても、かつてのF-15みたいな抑止力になるのかなぁ・・・・・・うーん、難しい問題だなぁ。

すんません、激しく脱線しました(汗)
POW妄想の唯一の心残りは、艦底部の前後に長く走ったフィン(?)の目的と理屈がどうしても思いつけなかったことですかね。
軽量化するのなら真っ先に削除されそうなので、何ら重要な目的や理由がきっとある筈・・・・・・うーん、何かオプション装備がブラ下げられるレールとか?え?惑星破壊ミサイル?いやいやいやw

でも、本当に書いてて楽しかったですね、今回の護衛戦艦ネタ。
このブログを始めた頃は、『護衛戦艦』なんて“取ってつけたような(失礼)”カテゴリーは無かったことにして、何やらもっと特殊そうでカッコ良さげ艦種名称をデッチ上げるつもりだったのですが・・・・・・今やすっかり無視できなくなりましたよ、護衛戦艦w
あれこれと思いを馳せていると、“ビスマルク”までカッコ良く見えてくるんだから、この世は不思議です(爆)
それと、護衛戦艦の妄想を通じて、これまであまり妄想の対象にしてこなかった (1/700模型もないし)完結編艦艇の妄想に使えそうな材料を幾つか思いつくことができたことも収穫でしたね。

さて、三回に渡った長文に、最後までお付き合いいただきました皆様、本当にありがとうございましたm(__)m
細かいことですが、第一回記事のタイトルに使用した“総論”が、ちょっと大げさ過ぎて恥ずかしくなってきたので、“小論”に変更しました(^_^;)
そして大隈さん、大隈さんのブログでアリゾナとPOWを拝見してなければ、この護衛戦艦妄想が文章になることはなかったと思います。
改めてお礼申し上げますと共に、今後とも宜しくお願いしますm(__)m
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55 コメント

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かべ|ω・`)3回に渡る護衛戦艦論お疲れ様でしたー。 (大隈)
2012-08-08 17:38:57
で、一箇所思ったこと。

>艦底部のフィン
これ、大気圏内航行用の安定翼じゃないでしょーか、と。
飛行機にもありますが、垂直尾翼だけでは方向安定性が足りない場合に追加するドーサルフィン(著名な例だと九九艦爆やSBDドーントレス)の艦艇版ではなかろうかと。

ヤマトでは水平式の安定翼を持っていましたし、アンドロメダも艦首両舷に小型の安定翼らしき部分があります。
プリンス・オブ・ウェールズは外部に安定翼の代用となるようなフィンの類が後部艦底に1個あるきりですし、大気圏内での方向安定性確保というのは多少強引な解釈ではありますが有り得なくはないかなー、と……。
> 大隈さま (MJ)
2012-08-08 21:37:12
こんばんは(^_^)
この度は大変お世話になりました!!m(__)m

> 安定翼

なるほど、それは思いつかなかったですw
言われてみると、アリゾナとかアンドロに比べると、POWはアンテナなどの突起物も少ないですね。
あ、もしやそれもコストダウン・・・・・・(笑)

そいえば、1/500を二隻同時建造されているとかって凄い噂を・・・・・・(-_☆)キラーン!!
いやー!並べたらすごいことになるでしょうね、迫力はもちろん・・・・・・置き場所も(^^;)
でも、完成と公開がすっごく楽しみです!!
> MJさま (monolice)
2012-08-09 22:20:24
今晩は。お久しぶりです。monoliceです。
護衛戦艦論、拝読させていただきました。いつもながら多岐にわたる分野からの考察と文章に感服しました。

折角ですので、私も参加させていただきたく存じます。


>POWの艦底部のフィン

これは、『オマハ級』と同様の艦底部アンテナの基部ではないでしょうか。

建造目的上、護衛対象の船団に対して「脅威を近づけない」ことが求められます。
MJ様のPOWは、必要十分なレベルに戦闘力を抑えることでコストダウンを実現しました。

その一方で、索敵能力を向上させて「船団を回避させる」ことも一種の防御となります(護身術と同じ発想です)。レーダーの実用化によって枢軸国に対し優位に立った英国ならば当然このことは認識していると思います。
また、戦艦である以上は護衛「艦隊」編成時に旗艦の任を負うことは明白であり、非武装艦どころか民間船も含めて指揮能力を発揮するためには高い通信能力が必要となります。
ですが、コストの問題から索敵能力及び通信能力もまたボロディノ級程度とせざるおえませんでした。

このため、強化拡張を見越して艦底部に追加アンテナの基部を設けていたと考えられます。
もともと、MJ様のPOWは艦体各部にレーダーが設置されていることから、艦内の配線や装備の配置及び強度計算にも十分反映できます。
フィンが艦底部の前後に長く走っているのも、予想されるデータ量や消費エネルギー量が大きいため、基部も大型化されているからと考えられます。


如何でしょうか。
MJ様のふんどしで相撲を取ってしまい、非常にみっとも無いですね(苦笑)。ご気分を悪くされたら申し訳ありません。
ですが、参考になればと思い、投稿させていただきます。


長文失礼いたしました。
> monoliceさま (MJ)
2012-08-10 10:42:31
おはようございます(^_^)
毎度、コメントありがとうございますm(__)m

> 強化拡張を見越して艦底部に追加アンテナの基部

これは面白いですねぇ~♪
正に外付けオプション用のハードポイントの発想ですね。
設置するのは大型レーダーアンテナ(システム)でもいいですし、無人艦制御用のシステムとそのアンテナとかでも良いかもしれませんね。

いやー、先日の大隈さんの安定翼といい、monoliceさんの拡張装備用のハードポイントといい、やっぱり人が沢山集まると、面白いアイデアが一杯出てきますね。
これだから妄想はやめられないですw

はじめまして (う)
2015-01-16 23:13:03
ヤマトのイスカンダル遠征を「第一次遣イスカンダル作戦」と呼ぶことを提案します!

宇宙戦艦ヤマトは「国連宇宙海軍遣イスカンダル艦隊旗艦・宇宙戦艦ヤマト」でどうでしょう。

むろん「艦隊」と言ってもヤマト一隻の孤独な艦隊です。それがまた、地球側の絶望的な状況を演出するのです!
Unknown (MJ)
2015-01-17 22:59:16
こんばんは~♪

> 国連宇宙海軍遣イスカンダル艦隊

確かに旧海軍風に言うなら“遺イ艦隊”ですねw
できればイスカンダルの『イ』の漢字の当て字が欲しいところです(^_^)
Unknown (ぐらっと)
2015-07-13 22:05:13
お久しぶりです。
この間、憧れであった護衛戦艦アリゾナのガレージキットを遂に入手することができました。
以前から好きな艦でありましたが、MJ様のアリゾナに関する妄想設定を読んで以来、それが更に悪化(?)してしまい、どうにか入手できないかと探し回ってようやくのことです。MJ様のアリゾナに負けぬくらいの艦に・・・なればいいなぁ(´・ω・`)
Unknown (MJ)
2015-07-15 22:05:44
こんばんは~♪

パソコンが唐突に壊れてしまって、慣れないスマホからレスです(^^;)
そうですか~♪ アリゾナをゲットされましたか(^-^)
ウチのアリゾナは大隈さんに譲っていただきましたが、ここまでの完成度のものはネットでも殆ど見かけません。
是非、参考になさって下さいませ(*^O^*)

実は私も最近、新たな護衛戦艦を二隻ゲットしました♪
オリジナル要素の設定も少し混ぜて、ちょっと変わった仕様にしたいなぁと思っています。
Unknown (ぐらっと)
2015-07-15 22:34:34
MJ様のアリゾナは岡山のプラ板使いさんのキットでしたね。私はキティホークという別メーカーさんのアリゾナですが、是非に参考にさせていただきます。だって、カッチョええんですもん(*´ω`*)
残念なことに、側面のショックカノンが副砲?と思えるくらい小ぶりなので、これをいかに大きくするかが課題ですね・・・。主砲3副砲2より主砲5のが断然良い。大きいのはいいことです(゜∀゜)

そちらも新型護衛戦艦二隻を新たに建造されますか・・・アリゾナにPOWときたら、あとはビスマルクとノーウィックでしょうか?(笑)
どういう仕様にされるのかはわかりませんが、良い艦になるといいですね^^
Unknown (MJ)
2015-07-16 12:45:19
こんにちは~♪

キティーホークさんのキットでしたか(^-^)
舷側主砲については、シルエットを損ねてしまうからか、小型の副砲と解釈されるサークルさんも多いみたいですね。
確かDO楽DOさんの1/500のアリゾナもそうだったかと思います。

造形される方の苦悩も分かるのですが、でもやっぱりアリゾナの舷側砲は主砲にして、ハリネズミ感を満喫したいですよね(笑)

最近私が入手したのはPOWとビスですが、今は特にPOWの方で設定をいじくり回したいと思ってます(^^ゞ

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