国際情勢について考えよう

日常生活に関係ないようで、実はかなり関係ある国際政治・経済の動きについて考えます。

オザワれない苦しみ

2006-10-23 | 日本と世界

いまの若い人(!?)は、「オザワる」という言葉の意味を知っているでしょうか。そのむかし、いまの民主党代表、小沢一郎さんが40歳代前半で自民党の幹事長として活躍していた頃、選挙の総責任者として、企業から巨額の政治献金を一気に集め、衆院選で大勝利を収めたことがありました。

 

その後も、竹下登氏(元首相・故人)の後ろ盾を得て、大先輩の宮澤喜一氏(元首相)が自民党総裁選に出たときに、事実上の面接試験を行うなど、かつて小沢さんは、党内だけでなく、政界全体で大変な権勢を誇っていたときがありました。「オザワる」という言葉は、こうした1980年代後半から90年代前半にかけて、小沢さんが自民党の実力者として、のちに新進党のリーダーとして政界を仕切っていたときに流行った言葉で、豪腕をふるって場を仕切る意味で使われた言葉です。

 

 

その小沢さんも、今は苦労しています。もともと、縦横無尽にオザワっていた小沢さんですが、今はすべてがこの人に対して敵対しているように見えます。選挙も、自民党も、民主党の党内問題も、自分の体調も・・・。「オザワる」という言葉の通り、小沢さんは昔から、既存のルールや敵対勢力を、気合や気力でブルドーザーのようにブチ壊して前進していくところがありました。

 

しかし、小沢さんが抱える狭心症という病気は、精神的に頑張ることが、最も症状を悪化させるそうです。そもそも、狭心症というのは、まじめ一徹で、気合の入ったタイプの人がかかりやすいそうです。ですから、小沢さんとしては、気合を入れて現状を打開したい気持ちは山々だと思いますが、それが一番病気に触るというジレンマに立たされています。これまでも、自分の代表就任式や安倍さんの首相就任時のタイミングで発作が出たのは、偶然ではないのでしょう。

 

 

民主党というのは、考えてみればすごく不思議な政党です。あまり右派、左派という分類分けは好きではないのですが、民主党は、政界の右派(旧自由党系)と左派(旧社会党・民社党系)の議員が幅広く参集していて、中道(元自民党系)の人が相対的に少なく、政策における所属議員の右から左へ至る分布を図で示すと、緩やかな凹型をした政党と言えるのではないかと思います。右派が小沢さんや前原さんとすると、中道は鳩山さんや岡田さん、左派は菅さんや江田さんといった感じでしょうか。このことから、民主党の代表というのは、まず党内をまとめることに、ものすごい時間とエネルギーを割かれるような感じがします。また、ついでに言うと、こういう政党が政権を握った場合、一貫性が要求される外交政策も、右に左に大きくぶれる可能性もあります。

 

一方、自民党も、派閥のような「党内党」がたくさんあって、まとめにくいところがありますが、中道保守が一番多く、政策における議員の分布というのは、凸型をした政党と言えるのではないかと思います。だから党の代表(総裁、幹事長)は、真ん中を押さえておけば、大体リーダーシップを取ることができるので、民主党ほどの苦労はないものと思われます。

 

そして、この党の構造の違いは、党をまとめやすい、まとめにくい、といった内部的な問題を超えて、党の命を左右する選挙にも如実に表れてくるのではないかと思います。日本という国は、自民党が常勝している現実からして、国民の最大多数は、意識しているか無意識かに関わらず、やはり中道保守を志向する人が多いように思います。変化よりも安定、現状革新よりも現状維持を志向する人が多いということです。こういう有権者の中で選挙をやれば、民主党のような構造をした政党が苦戦するのは、ある意味では当然のような気がします。私の見方は間違っているかも知れませんが、個人的にはかなり前から、いつまでたっても民主党が伸びないのは、こうした構造的なことが原因にあるのではないかと感じています。

 

小沢さんの悩みは尽きません。小沢さんの顔を見ていると、こちらも苦しくなってきます。しかし、それでも自民党の常勝体制が固定化して、政界に競争原理が働かないのは健全ではありません。私としては個人的に、岡田さんのようなバランスが取れて、なおかつ闘争心のある人にカムバックしてもらって、小沢さんには知恵袋のような役回りをしてもらうのが、小沢さん、民主党、日本の政界全体にとって、よいのではないかという気がしています。これは、小沢さんはダメだという意味で言っているのではありません。ただ、小沢さんのあまりに苦しそうな顔を見て、そんなことを感じました。

 

 


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